ピークとどん底を学んだマキロイ、オーガスタへ
2013年 マスターズ
期間:04/11〜04/14 場所:オーガスタナショナルGC(ジョージア州)
【WORLD】R.マキロイにあふれる魅力/マスターズプレビュー
Golf World(2013年4月8日号)texted by Curt Sampson
「シェル・ヒューストンオープン」木曜日のこと、564ヤードの8番ホール(レッドストーンGC)でロリー・マキロイは世界1位でも、そして2位とも呼べないような状態だった。ドライバーショットを左のフェアウェイバンカーに入れると、続いて5番ウッドで右のハザードに池ポチャ。結果、7打を要してダブルボギーを叩いた。翌金曜日の同ホールでマキロイはレーザービームのようなショットで左のフリンジに。2パットでバーディとし、辛くも予選を通過した。
その姿に全く安定感は感じられず、昨年のオーガスタが何年も前のことのように感じた。キアワアイランドという難コースで行われた2012年の「全米プロゴルフ選手権」最終日はボギー無しで終え、「66」をマークして優勝。1958年以降ストロークプレーで優勝を争うようになってからは、2位と大会史上最多差となる8打をつけての完勝だった。しかし完全にキャリアのピークを迎えたかに思われていた矢先に起きた2013年の不調。マキロイにとっては、優勝が風に舞う羽を掴むが如く難しいものになってしまった。
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マキロイの世界ランクは1位から2位へと後退したが、シェルでの2ラウンド目までを見る限り、世界2位のプレーとは言い難かった。同じ組で回ったキーガン・ブラッドリー、ダスティン・ジョンソンらの方が実力に値する成績(マキロイよりもロースコア)を残していたと言えるだろう。左、右、左、右へとショットがぶれる様は、まるで空港への道順のようでもあった。
最終的に通算4アンダーの45位タイでフィニッシュしたマキロイは、UNICEFと共に大地震の起こったハイチを訪問する予定だったがキャンセル。初めて同地を訪問した2011年6月には「自分自身を変えてくれた」と語った思い出深い場所だったが、試合勘を戻す為にサンアントニオでの大会出場を決断したからだった。謙虚な気持ちを忘れず、テキサスでコンディションを取り戻す。それが彼にとっての現実だ。
ヒューストン近郊でプレーする前には、出席するのが義務となっている大会前の記者会見に現れ、辛抱強く耐え抜いた。いくつかマキロイの動向を探った記者たちは、回りくどい言い方をせず問題の根幹をついた。「世界1位の座に安定し続け、タイガー・ウッズの後継者という称号に安泰したのか?」という質問に対し、彼は正直に思うことを打ち明け、大半の質問には思慮深く答えていたように見えた。しかし、以前ミニスランプから抜け出し全米プロ優勝を果たした際についての質問に対する答えは、鋭さと挑戦的な態度が欠けていた。暗に精神的負担を抱えていると認めるような言い回しだった。
「そういう問題に対しては、ここ数年で対応に慣れてきたと思う。それはそれで構わない。誰だって出来るだけ普通の人生を生きたいと思うだろうから。現代はソーシャルメディアを含めて全てが瞬間的に起こってしまう。それが世界の風潮。ただ、僕らは機械ではなく、人間だから。良い時もあれば悪い時も経験する。これは単にスポーツであり、ゴルフの問題だからだ」。
会見は続き、大半はマキロイに気を使うような質問ばかりだったが、ある記者が突然ど真ん中の直球を放り込む。「世界1位から陥落して気が楽になった面はありますか?」。
その手の質問には何度も答えてきた。しかし実のところ、その質問を受けてマキロイは気が楽になったのかもしれない。慎重に言葉を選びながら、「時にはそう感じるかもしれない。今までのプレーを取り戻せるところまで取り戻そうとしているから」、「時には自分の仕事に専念できるのも悪くはない。世界1位から陥落して周りは自分のことを気にもしないわけだから。それでゴルフ界で大きな話題とならないのであれば、良いことかもしれない」。