<優勝の祝福も節度を保って・・・“場外”の負傷は絶対に避けたい>
【WORLD】B.ワトソンは正真正銘のスターになれるか?
Golf World(2012年4月23日号)texted by Jamie Diaz
今後ワトソンが勝利を重ねていく為には、パットの精度を上げる必要がある。PGAツアーに参戦している選手の中でもパットの成績は下位で、スコアに対するパットの貢献度を示す"Strokes Gained Putting"というカテゴリーでは、82位以上にランキングされたことは2006年以降、1度もない。今年のランキングでも161位としているが、マスターズでは合計120パットし、週を通したパット数で13ストロークの上乗せだけで済んだ。
また、パットが不安定ながらも、フィジカルの強さで距離を稼ぎ、信じられないくらいにボールを曲げるスタイルは、カプルスを連想させる。カプルスとワトソンは、共に“かんしゃく持ち”として知られているが、ワトソンが決して真似をするべきではない行為としては、1992年にマスターズ優勝、世界ランク1位となった後でフェードアウトしていった点だ。
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いかに冷静にプレーできるかがワトソンにとって最も克服すべき課題で、本人も些細なことで神経質になり、集中出来なくなってしまうと認めている。スロープレーで気が散ることもしばしばで、2008年にスティーブ・エルキントンに対し「ベテランの連中にはヘドが出る」と発言した映像は、YouTubeでも話題となった。こうした発言から見える問題点こそ、ワトソンが2010年「トラベラーズ選手権」までPGAツアーで優勝出来なかった原因の1つだ。3日目まで首位を走っていたとしても、最終日で崩れるというパターンの要因でもあった。
ピン社のツアーマネージャーでもあるマット・ロリンズによれば、「バッバのパットメカニズムは非常に優れている。問題なのはパットの際に神経質になってしまうことだ。重要な場面で感情をコントロールできるようになって、ネガティブなことを考えなくなれば、今よりも大分良くなるはず。最近ではプレッシャーのかかる場面でも改善されたと思うし、特にオーガスタで成長したと思う」とコメント。
ワトソンは過去に1度も注意欠陥障害(ADD)と診断されたことはないが、ADDの権威でもあるエドワード・ハロウェル医師の話では、ADD患者に見られる特性こそ、ワトソンにとって最大の長所でもあり、短所でもあるという。「バッバのショットに対するアプローチは独特なもので、自分なりの方法でコース対策を立てていることこそ、ADDの典型的な症状の1つです。しかしながら、注意力散漫、神経質、そして極めて短気な部分は治療が難しく、突然3つの症状すべてが襲ってきます。だからこそ、もし彼が自分の精神状態を抑える術を身に着けられたとしたら、間違いなく今よりも劇的に勝てる選手に成長するでしょう」。
ワトソンはプロからの指導を一切受けないことにしている。スイングにせよ、何にせよ、自らの力だけで問題を克服してきた。ロリンズは、「バッバはゴルフに関しては誰の言葉にも耳を貸さない。誰かに電話をかけて、自分が安心するようなことだけは絶対にしたくないんだろう」と語っている。当の本人は、マスターズでは外見上落ち着いているように見えたが、ひょっとしたらそれは最近父親になったことに気を良くしていたからかもしれない。最終日のファーストホールでこそ3パットとしたが、その後は崩れず、バック9では4連続バーディを奪って一気に波に乗ったのだ。
ワトソンが最終的に行き着くところは、彼自身が求めるところに落ち着いていくのだろう。練習ラウンドでウッズと回ることを欲するように、これからのワトソンは、「自分が何を求めるか」によるだろう。これまでは自分の野心を下回るようなことしか想像できていなかったが、マスターズ優勝で芽生えた自信、大会後に出た大言から考えると、新たなワトソンが誕生したのかもしれない。
もしそうだとしたら、ワトソンは真のスターへと成長したということだ。それこそゴルフ界にとってのギフトであり、彼自身にとっては最高に愉快な”You’re welcome”となるはずだ。
米国ゴルフダイジェスト社提携
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