<優勝の祝福も節度を保って・・・“場外”の負傷は絶対に避けたい>
【WORLD】B.ワトソンは正真正銘のスターになれるか?
Golf World(2012年4月23日号)texted by Jamie Diaz
このまま順調なキャリアを送れば、きっとワトソンはかつてロングヒッターとして名を馳せた2人の名選手(サム・スニード、ジョン・デーリー)に追いつき、彼らが成し遂げられなかった道を歩むようになるかもしれない。1930年代中盤に台頭したスニードは、プロモーターだったフレッド・コーコランの指導を受け、知名度を上げる為に地方の大会に数多く出場した。しかし、そのキャリアの長さが仇となり、スターダムに乗ることはなかった。
ワトソンは周囲のゴルファーよりも飛距離が出るものの、1991年にデーリーが全米プロゴルフ選手権を優勝した当時は、それ以上に周りの選手をドライバーで圧倒した。輝かしいキャリアが約束されているかと思われたが、アルコール依存症やプライベートでの問題が相次ぎ、その才能は失われていった。
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デーリーと比べ、ワトソンは絶対禁酒主義者として知られている。2008年にはジョージア大に復学し、学士も取得した。33歳ながらも大きな子供のように振る舞う姿を見る限り、スニードやデーリーよりも突然のスターダムにも対応できるように思える。片田舎出身らしく振る舞うこともできれば、マイクの前、そしてソーシャルネットワークを駆使してウィットに富んだ発言をすることもできるのだ。
もちろん、ワトソンが今後どういう選手として名を残すかは、そのプレーにかかっている。戦績はまだまだ乏しい。だが誰よりも遠くに飛ばす能力、ティからグリーンまでアーティスティックなプレーを披露できる技術を併せ持つ選手は一握りしかないため、選手からは嫉妬されていることだろう。ベン・ホーガン、バイロン・ネルソン、ジャック・ニクラス、グレッグ・ノーマン、アーニー・エルス、フィル・ミケルソンも偉大な選手だが、ワトソンの持つ能力の何かに欠けている。おそらくゴルフ史上で考えてみても、スニード、セベ・バレステロス、フレッド・カプルス、タイガー・ウッズの全盛期しかワトソンと張り合うことはできなかったのではないだろうか。
通算4勝の男を持ち上げるのは早過ぎるかもしれないが、“スタイル”と“能力”という点で言えば、ワトソンは上記の選手達と同格。優勝を争うライバル達には絶対に打てないようなショットを今後も成功させていくだろう。だからこそウッズは、ここ数年間ワトソンを練習ラウンドのパートナーに指名していたのだ。
ワトソンのプレーを全て見てきたというインストラクターのジョン・ジェイコブスは、彼のプレーに衝撃を受けた1人だと証言している。
「もしゴルフがボールを飛ばす競技だとすれば、バッバは私が見た選手の中でもベストの1人だと思う」、「自分がボールに対してどういう力を加えているかを理解している。それは偉大な選手が見せる兆候でもある。たしかに彼のスイングは変則的だが、もし私が指導するとしても、プレーが崩れるまではスイングには何も手を加えない。見た目からは想像もできないほどに優れた選手だ。信じてもらいたいが、彼は真の天才だよ」と、英国に住む87歳の指導者は語っている。