<優勝の祝福も節度を保って・・・“場外”の負傷は絶対に避けたい>
【WORLD】B.ワトソンは正真正銘のスターになれるか?
Golf World(2012年4月23日号)texted by Jamie Diaz
彼は単にマスターズで優勝しただけではない。実力と実績でトーナメントを盛り上げられる存在となった。けれども、ここ数年で信じられない力を発揮した男の力は、マスターズが終わった今でも正当に評価されていない。
フロリダ州バクダッド出身のバッバ・ワトソンは、グリーンジャケットを手に入れ、世界ランク4位に浮上した。これまでは「エリート選手だが奇抜な存在」という評価が先行していたが、最近は改めて総合評価を高めている。
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パー5をものともしないパワーを持ち、正確性では難があるが、PGAツアーでのここ6年間、ドライビングディスタンスで2位を下回ったことはない。
ワトソンが最もファンを魅了するポイントと言えば、その独特なスイングにある。動きが遅く不格好にも見えるスイングは、レッスンなどを受けず完全に独学で身に着けたもの。身長191cmの痩せ型であるワトソンにとっては体に負担がかかり過ぎる、と分析している常識にとらわれた評論家がいるものの、すさまじいヘッドスピードによりボールに強烈なスピンをかけることが出来るのだ。
その姿は、ソフトシャフト、パーシモンヘッド、そしてバラタボールが使用されていた時代を思い起こさせる(威勢の良さと、散漫な注意力による創造性を除くが)。バッバの能力を最も端的に示したのは、マスターズ優勝をかけたプレーオフで披露したギャップウェッジによるフックショットで、まるで幻覚を見ているかのような曲がりを見せた。彼と同じように独学でゴルフを習得し、1968年の全米オープンを優勝したリー・トレビノのスタイルと同様、その能力は一握りの人間にしか知られていなかったが、いよいよ優れた技術と認識されるようになった。
多くの点から言っても、バッバはトレビノに近い存在だと言える。マスターズでは上下白のウェアに、ピンクのドライバーという姿が注目を集めたが、同じように彼が参加している2つのチャリティ団体も広く知られるようになった。長髪、そして決してスタイリッシュとは言えないシャツの1番上のボタンを閉めるスタイルはどうかと思われているが、独特なのはこれだけではない。
バッバが参加している“Golf Boys”のビデオでは、素肌にオーバーオールを着用。マッスルカーの購入などなど、ワトソンの行動はツイッターのネタとして知ったかぶりをする連中を含むアメリカ中の人間にイジられるものばかり。彼のフォロワー数は54万3000人を超えている。
多くの人間に知られる存在となったワトソンだが、その行動や振る舞いからは、相反する2つの性質が見て取れる。ゴルフを純粋に楽しむプロとしての顔、そして口が過ぎるという2面性だ。マスターズ前までは、才能に自信が持てず、成績不振から終始守りに入る発言が目立ち、自ら「優勝なんかできない」と弱気な面を見せていた。しかし、ルイ・ウーストハイゼンとのプレーオフを制してから1週間が経ち、メディアへの対応で目まぐるしい毎日を送っていた時には、既に相当な自信を持つまでに変化していた。その姿は、まるでゴルフ史上に残る偉大な選手になれるというほどまでに…。