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2013年 マスターズ
期間:04/11〜04/14 場所:オーガスタナショナルGC(ジョージア州)

<佐渡充高の選手名鑑 72>バッバ・ワトソン

■ 曲芸的勝利

昨年のバッバ・ワトソンの勝因は曲芸技とも言える最後のショットだった。ルイ・ウーストハイゼンとのプレーオフ2ホール目となった10番で、ティショットをワトソンが右の林に打ち込んだ瞬間に「勝機を逸した」と感じた人も多かったと思う。しかし、ワトソンはそこから“70度”のフックをかけて2オンに成功。パーで切り抜けて勝利を飾った。実はボールを曲げることにかけては天才的なテクニックを有するのがワトソンだ。彼がストレートボールで攻めるショットを見たことがない。障害物が無くても常に高、中、低弾道のフェード、スライス、ドロー、フックでピンを狙ってくるので、見ている方は面白くてたまらない。そこが他の選手と違う彼の魅力だと思っている。だから一見トラブルかと思っても、日頃から打球を曲げて狙う方が性に合っている選手なので、このようなショットは朝飯前なのだ。

■ 飛ばしと極太グリップ

そんなワトソンの曲芸的ショットに加えて魅力的なのは飛距離だ。これまで平均飛距離ランク1位になったことが過去5回。2006年からは3年連続1位だった。しばらく1位を他の選手に譲ったシーズンもあったが、昨年は再び1位を奪還し、その平均飛距離は315ヤード。実はPGAツアーに上がる前の下部ウェブドットコムツアーでも平均飛距離はナンバーワンだった。彼のラッキーカラーはピンクということもあり、デビューした2006年からはピンクのシャフトでプレーをしていた。昨年からはチャリティー活動もかねて、ショッキングピンクのヘッドでプレーを開始。まさに彼の魅力に色を添えたアイディアに多くのファンが注目し楽しんでいる。もう一つ彼のオンリーワンがある。それはドライバーのグリップが誰よりも極太という点だ。グリップの下半分はテープを8重巻に、上の部分は6重巻にして太くしている。彼のクラブ担当者の話では「これまでジョン・デーリーが6重巻にしていて一番太かったけど、今ではバッバのグリップがツアーで一番太い」と言い、理由を次のように説明した。ワトソンはスウィングでクラブローテーションを使うタイプ。グリップを太くするほどローテーションが抑えられるので、それで調整をしているのだそうだ。

タイガー・ウッズの旧邸を購入

最近のワトソンの変化はフロリダ州オーランド郊外アイルワースに合ったタイガー・ウッズの旧邸を購入したことだ。3月の「アーノルド・パーマーインビテーショナル」の際に引っ越しを終え、新たな生活を開始した。タイガーの家を購入した理由は2つある。ウッズのことは大学生時代から憧れ、プロに転向してからものその実績を尊重し、いつかウッズに追いつきたいと願っていた。そのウッズが引っ越したために一体ウッズがどんな家に住んでいたのか強い関心があったこと。もう一つは練習施設の充実だ。庭には練習グリーンや80ヤードほどのアプローチ練習場があり、思い立った時にすぐ練習できる。練習場のデザインでウッズがどのような点に焦点を置いて、どのような練習を重ねてきたかも想像できる。ワトソンにとって今後の自身のゴルフに相当参考になるヒントが集約されていることも大きい。さらに敷地内にはパーマー設計のチャンピオンコースがあり、そこには練習場も完備されている。新居に移ってから「マスターズ」は2度目の挑戦。気分が乗っているさなかの今季メジャー初挑戦となる。

佐渡充高(さどみつたか)
ゴルフジャーナリスト。1957年生まれ。上智大学卒。大学時代はゴルフ部に所属しキャプテンを務める。3、4年生の時に太平洋クラブマスターズで当時4年連続賞金王に輝いたトム・ワトソンのキャディーを務める。東京中日スポーツ新聞社を経て85年に渡米、ニューヨークを拠点に世界のゴルフを取材。米国ゴルフ記者協会会員、ゴルフマガジン「世界トップ100コース」選考委員会国際評議委員。元世界ゴルフ殿堂選考委員。91年からNHK米ゴルフツアー放送ゴルフ解説者。現在は日本を拠点に世界のゴルフを取材、講演などに飛び回る。

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