【WORLD】A.スコット 愛しのグリーンジャケット/マスターズレビュー
2013年 マスターズ
期間:04/11〜04/14 場所:オーガスタナショナルGC(ジョージア州)
ルールトラブル 閉ざされたドアの裏に隠されたもの/マスターズレビュー
Golf World(2013年4月22日号)texted by Geoff Shackelford
マスターズでタイガー・ウッズに科せられた2打のペナルティは、ルール規制の異様さを強調する結果になった。そしてゴルフ界の権力者の間でもアンカリング禁止に対するテンションはピンと張りつめている。
マスターズ中継をテレビで見ていた視聴者から、タイガー・ウッズのドロップ位置が間違っているのではという指摘を受け、電話口の主は現代ゴルフでスタンダードとなっているビデオレビューを要求した。このことを知らなかった通算4度のマスターズ王者ウッズはそのままホールアウトし、スコアカードを提出。この時は誰もドロップについて疑問を投げかけなかった。マスターズ委員のフレッド・リドレーは当初OKと判断したが、ウッズがルールで認められていない場所でドロップしたと認めたことで、最終的に委員が失格処分を取り下げる決断を下すことになった。
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言い換えれば、電話の主は意図的ではなかったにせよ、他のケースとは異なり、オーガスタナショナルとウッズを救ったことになるのだ。
ゴルフ規則、そして曖昧な解釈が再びゴルフ界で問題となっている。アンカーリング禁止という背景、そして欧州ツアーオフィシャルのジョン・パーマーが、14歳にしてマスターズに出場したグァン・ティンランに対して科したスロープレーによる1打のペナルティという珍しいケースの翌日にウッズルールが適用されたことで、周囲からは不満の声が挙がった。裏では政治的な絡みがあるとも噂される判定が、コース上での問題に適用されたこと、そしてまたしてもアンカリング(クラブを固定)パターを使う選手がメジャー優勝を遂げたことで、以前から怒りの声が挙がっているゴルフ界のルール問題が再燃したと言えるだろう。
マスターズウィーク前、オーガスタナショナル会長のビリー・ペインは、声高々に子供達を対象としたプログラムを実施すると発表。このプログラムはNFLが実施した“パント、パス&キック・ユースプログラム”からアイデアを参考にしたもので、子供達に来年のマスターズトーナメント開催前日(開催前週の日曜日)にオーガスタナショナルの練習場、そして18番ホールのグリーンで自分達の技術を試す機会が与えられるというもの。内部の人間によれば、オーガスタナショナルとUSGA、更にPGAが連携を取って同プログラムを実施する背景には、緊張した空気をほぐそうという意思が見て取れたという。
少なくともレポーターの1人が冗談を交えて“ドライブ、チップ&パット”に出場する子供達からアンカーリングを使えば出場資格を剥奪するのかと問うまではそうだったようだ。
「(アンカーリング問題は)USGA委員のもとに来る以前の段階で決定が止まっている問題なので、今の時点で私見を述べることは適切ではない」と、USGA代表のグレン・ネイガーが頑固なまでに壇上でコメント。傍らにはペイン、そしてPGA・オブ・アメリカのテッド・ビショップ会長も座っていた。
「グレンと私は、出来ることならアンカーリングについての議論をこの1週間は忘れておきたいと思っている」と、ビショップもジョーク抜きで神妙な面持ちで語った。彼らのおかしなリアクションが、USGAとR&Aから提案として出された案を拒否しているPGA・オブ・アメリカ側との関係が修復されていないことを示唆していることは確か。そうこうしている内にも、最短で4月23日にはアンカーリング禁止が発表されてしまう可能性もあったのにも関わらず、である。
実際には、上記のようなにらみ合いはオーガスタナショナルのオークツリーの下で行われる噂話程度のことだった。ビショップはR&Aチーフエグゼプティブであるピーター・ドーソンとフレンドリーな会話を試み、お互いの立場が“個人間の問題ではない”と強調したかったようだが、ドーソンはR&Aにとって「極めて個人間の問題」と主張。アンカーリング禁止に反発したPGA・オブ・アメリカとの間に生まれた溝は修復不可能とまで言い放ち、ビショップは返答せずにその場を立ち去った。