【WORLD】L.ウーストハイゼンのリベンジ/マスターズプレビュー
2013年 マスターズ
期間:04/11〜04/14 場所:オーガスタナショナルGC(ジョージア州)
ピークとどん底を学んだマキロイ、オーガスタへ
By Brian Wacker, PGATOUR.COM
昨シーズン、彗星の如く現れたロリー・マキロイにとって、取り巻く環境の変化はあまりに大きく、急すぎる出来事だった。問題は、彼がそれを克服し、前進することができるかだ。
歴史は教えてくれる。マキロイが今、注力すべきことは、例えいくつかの障害があろうとも、これから始まる今季初のメジャー大会に臨むにあたり、自分自身を鏡に映して見つめ直すことができるか、ということだ。
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おそらくこれは、彼が直面する初めての障害ではないはずだ。そしてそれは、彼のゴルフ人生における最後の障害でもない。しかしたくさんの困難の中で、彼はとても早く様々なことを学び、状況に対応できる男だ。
証言A:2011年のマスターズ最終日、マキロイは「80」というスコアを叩いてしまい失速した。しかしわずか2カ月後の全米オープンでは、彼は2位に8打差をつけ、自身初のメジャータイトルを獲得した。彼はタイガー・ウッズではないし、タイガーのように振る舞うべきでないことを学んだのだ。
証言B:昨夏のある時期、5試合中4試合で予選落ちをしたあと、彼は練習で自分がボールからの目切りが早いことに気づき、そのポイントを修正した彼は、残りの全米プロゴルフ選手権において素晴らしいゴルフを見せた。
証言C:彼は精神的に疲れていて、また歯の具合も悪かったことを理由に、ホンダクラッシックを途中棄権したあと、とても実直に振る舞った。彼はとてもオープンに接し、そして関係者に対して心からの謝罪を行った。
「僕は、自分自身が困難に直面した時、その状況にしばらく留まって、その問題を解決しなくてはならないことを学んだんだ。あれ(ホンダクラッシックを棄権したこと)は僕のミスだった。人は誰でもミスは犯す。だから僕は、そこから学べたんだ。人によっては(成長の糧となる)プライベートでのミスを歓迎する場合だってある。でも僕が犯すミスのほとんどは、公衆の目にさらされたものだけどね」。
金魚ばちの世界へ、ようこそ。(そう、あなたは金魚なのです)
23歳という若さで2つのメジャータイトルを獲得し、世界ランク1位となり(しかも首位の座を奪った相手はウッズだった)、ナイキとの大型契約を結んだことで、マキロイは一躍、時の人となった。
「最終的には、何かを“与え”なくてはならないんだよ」と、マキロイの親友であるグレーム・マクドウェルは語る。彼もまた、2010年の全米オープンで優勝し、似たような経験を持つ。「ナイキとの契約、一気にスターダムにのし上がったこと。世界ナンバーワンとなったこと。全てがプレッシャーだよ。そのための代償はどこかで払わなければならないんだ」。
「あるどこかの時期で、彼のあらゆる悩みやプレッシャーを一気に吐き出す大きなタンクが必要になると思う。僕が思うに、彼は今季の新たなスポンサーに対して、自分の価値や、自分に寄せられている期待に応えようと過度なプレッシャーを感じてしまったんだと思う。自分のあらゆることがお金に換算される訳だからね」。
それはマキロイに言えることだ。少なくとも、現在の彼にはピタリと当てはまる。
「誰の目も気にすることなく、ただ自分のゴルフに没頭できたら最高だね」と、マキロイは言う。「しかも誰もが話題にするゴルファー(つまり自分のこと)から卒業できたら、更にいいよね」。
北アイルランドの沿岸地域で育った若きマキロイは、タイガー・ウッズと比較されがちだ。しかし2年前のマスターズで、彼は“自分はウッズのような性格ではないし、そうなろうとも思わない”と悟ったのだ。
その後、幸いにも、彼は様々な道を見出した。
例えば、何年にも渡るナイキとの段階的な包括契約を結ぶウッズとは違い、マキロイは昨季末から今年はじめにかけて、シンプルに契約を締結した。彼は、本契約に付随する他の様々なインセンティブ(ボーナス特典)には興味はなかった。
それらおいしい話を断る勇気は、決して易しいことではなかった。しかし、タイガー・ウッズが他の誰よりも長く居続けた、世界ナンバーワンの座に留まり続けることもまた、容易ではない。後者の難しさは特に、「先週あなたは私のために何をしてくれましたか?」というねじまがった態度がないと、忘れ去られてしまう類のものだ。
本来これらの被害者は、短期間で素晴らしい成功を収めたマキロイであってはならない。しかもマキロイは、これから先、数十年に渡るゴルフ界の宝であり、彼はきっと何度かマスターズも制することだろう。そして彼は、それを成し得るに十分な賢さを持っている。
「僕はこの先のキャリアで、今回のようなミスは二度と繰り返さないだろう。それらはもう、過ぎ去ったこと。僕はただゴルフに集中するだけだ」と、マキロイは言い聞かせるように語った。
ゴルフこそが、彼を現在の社会的立場に誘った(いざなった)唯一のものだ。そして結果がどうあれマスターズは、彼がさらに成長するプロセスのひとつにすぎないのだ。
「僕が学んだことは、周囲で何が起きようとも、それにとらわれることなく、自分自分であり続けることが大切だということ。僕は自分の小さな世界に浸ることに専念しようと思う。そしてそれができれば、他のたいていの事はブロックできる気がするよ」と、マキロイは語った。
ロリーよ。全てをブロックすると言うけれど、どうかブロックし過ぎないようにね。
以前、君がなにもかもブロックしようとした時、君はバトラーキャビン(オーガスタで優勝者がインタビューを受ける特別な場所)ではなく、バークマンキャビン(惨めなスコア)に遭遇してしまっただろ。