「マスターズ」制覇を狙える5人のルーキー ティレル・ハットン編
2017年 マスターズ
期間:04/06〜04/09 場所:オーガスタナショナルGC(ジョージア州)
タイガー・ウッズの伝説的勝利から20年 1997年の当事者たち
“親友”マーク・オメーラの後押しと皮肉
マスターズ初日の木曜日、12番でチップインを決めたウッズは、続く13番(パー5)でバーディを奪って1オーバーに戻した。14番をパーとしたウッズが15番(パー5)に到着すると、ティでは何組かが詰まっており、すぐ前の組ではオメーラが順番待ちをしていた。
ツアーにおいてタイガーと最も強い絆で結ばれているのは、タイガーが「マルコ」と呼ぶこのフロリダの隣人、オメーラだった。その妻のアリシアは、かつて夫に「あの子はかわいそう。家でひとりぼっちなのよ。夕飯に呼んであげましょうよ」と言ったことがあった。オメーラは「タイガーは、もう何年も洗車されていない、イカした車を持っていたんだ。だから、彼に電話して『その汚いやつをこっちへ持ってこいよ。これから自分の車を洗うから、ついでに洗ってワックスをかけてやるぞ』って呼んだんだ。それが僕らの友情の始まりだった」と話している。
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「マルコは僕の兄になったんだ」とウッズ。「彼はコース外の色々なことを教えようとしてくれた。例えば、メディアにどう対応するかといったこと。すべて彼から言われた通りにしているわけではないけれど、彼の助けがなければ、あんなに早い段階で成功を収めるのは不可能だったよ」
タイガーが待ち時間をやり過ごすべく、15番ティにある小さい木製のベンチに腰掛けると、オメーラはその隣に座った。1分ほど会話のない時間が過ぎた。その前週、タイガーは「59」を叩き出したことでマークから65ドル勝っていたこともあり、いつも通りの口調で彼のことをからかった。「マーク、あのときいくつ叩いたんだっけ?『87』だったかな?」。するとオメーラは、怒った振りをして、後から待機の列に加わった友人に対し、「なんでオレと対決するときみたいにプレーしないんだ? オレはまだ、お前が調子を崩すのを待っているんだぞ」と言い返した。
タイガーは15番でイーグルを奪い、ついにアンダーパーとした。17番もバーディ。前半「40」、後半「30」。タイガーは首位に立ったジョン・ヒューストンに3打差に迫ったのである。一緒に回ったファルドは「1995年にタイガーと練習ラウンドを少し回ったことはあったけれど、今、ようやく、あのときの興奮が何だったのか理解できた。彼はとにかくすごかった」と話している。
「ニックと僕は、みんなが思うよりもコースで会話を交わしているんだ」とタイガー。「彼は他の人のときより、僕とプレーするときの方が多くの会話をしているみたいだね。僕らは会話が尽きないんだ(ただし、その週ファルドは「75」、「81」で予選落ちしている)。気楽な会話ばかりでね。彼は一緒にプレーしやすい人だよ」
金曜日、タイガーはファルドではなく、これまた噂でしかタイガーを知らなかったポール・エイジンガーと同組でプレーした。「それまで彼のショットは実際に見たことがなかった」と語ったエイジンガーは、出だし1番でダブルボギーを叩いて後退すると、続く2番(パー5)で、タイガーの本気のショットを目の当たりにした。
「別世界のような衝撃だった」とエイジンガー。「彼の放った弾丸は、あり得ない軌道を描いて、左側の高い木と低い木の間を抜けて行った。ボールはとにかくもの凄い速度で、ぐんぐん上昇し続けた。ボールは永遠に空中に留まり、ようやく、誰も到達したことないと思われる丘の向こうに消えていったんだ」。エイジンガーはキャディと顔を見合わせ、とにかく笑うしかなかった。
タイガーはその日、「66」をマークした(ポールは「73」だった)。13番でタイガーが再びイーグルを奪った際、歴史感覚に鋭いテレビ実況のジム・ナンツは、同じくCBSの放送席にいたケン・ベンチュリに、「ケニー、ここで記録が生まれました。4月11日金曜日、午後5時半を少し回ったところでタイガーが初めて『マスターズ』で首位に立ちました」と言った。