実力伯仲!? 日本勢にもチャンスがあるぞ!
ショートヒッターはお手上げか?今年のマスターズ
オーガスタ・ナショナルが全長で285ヤード延長されたということで、単純に考えればマスターズではこれまで以上にロングヒッターが恩恵を被るということにはなる。
長くなったホールは9ホールにもおよぶことから、ショートヒッターの勝てるチャンスがひどく小さくなったと騒いでいるツアープロたちは多いのだ。
日曜日に、手を挙げながら18番グリーンにあがってくるのは飛ばし屋だということを、彼らは繰り返し言っている。そして注目されるのはいつもの通りタイガー・ウッズ、フィル・ミケルソン、デビッド・デュバル、ビジェイ・シン(3月にオーガスタ・ナショナルを63で回った)、デービス・ラブlll、そしてセルヒオ・ガルシアということになって、彼らのオッズが調整されるということになる。グリーンが固く、そして速くなれば高さのあるアプローチが必要になることから、さらに評価は高まるというわけだ。
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たとえば18番ホールは60ヤード長くなって465ヤードである。ヘッドスピード次第というホールだろう。ウッズが昨秋の視察ラウンドをした際、アプローチは6番アイアンだった。4番ウッドを使った同伴のマーク・オメーラとは番手が5つ違うということになる。こういう長いパー4が7つあるのだ。
「ショートヒッターは勝負にならないでしょう。マスターズはいつでも長距離砲の飛ばし屋仕様なんです」
PGAツアーでのドライビング・ディスタンスが去年は96位だったポール・エージンガーはそう言った。
「ロングヒッターが勝つのは間違いないでしょう」
自身もそのひとりであろうマーク・カルカベッキアのコメントである。
「決定的にロングヒッターに有利です。ショートヒッターは苦しむでしょう。サイドヒルやダウンヒルのライからロングアイアンで狙わないといけないのですから」
2度のマスターズ・チャンピオン、去年のドライビング・ディスタンスは179位だったベルハルト・ランガーはそう語った。
ニック・プライスは、ドライバーで距離が出せなければ「おそらくは」望みが無いと言い、優勝候補は15人に絞られると付け加えた。しかし、異なる意見もある。コースを視察した者の言うところではティショットの落下地点の傾斜が従来とは違っていて、飛ばし屋のボールの転がりが少なくなるようになっているという。かつてのように前方に跳ねてどこまでも転がっていくようなことはなくなっているとのことだ。
逆にショートヒッターには有利になって、ボールが前方傾斜に落ちてかなり転がっていくという。
これも何人かのプロたちが言っていたことだが、オーガスタではあまり飛ばないプレイヤーが泣きを見るという通説は多分に誇張されたものらしい。ウッズ、ガルシア、グレッグ・ノーマンといった飛ばし屋に加えて、ジム・フューリック、ブラッド・ファクソン、ジェフ・スルーマン、ビリー・アンドレード、ビリー・メイフェア、そしてマーク・オメーラが、ドライバーの飛距離のでないプレイヤーが戦えないという結論を出すにはまだ早いと言っているのだ。彼らは飛距離がアドヴァンテージであることは認めるが、それが決定的であるとは考えていない。
オーガスタ・ナショナルが特大のティショットを放てるプレイヤーに適していたことは確かだ。6度優勝のジャック・ニクラスしかり、すでに2度勝ったタイガー・ウッズしかり。一方で、マスターズはしばしば「パター・トーナメント」とも称されてきた。
「毎年恒例、春のパッティング・チャンピオンシップ」と評したのはジョニー・ミラーだ。
「間違いなく飛ばし屋向きのコースだし、いまやさらにその特徴が強まっていますが、ショートヒッターに望みがないとは思わない。ピンにくっつけようとしたって、ロングヒッターが6番アイアンで打つホールで4番ウッドとか3番アイアンを使うのではつらいですけど、それでも最後はパッティングの勝負ですから。試合に勝つのは必ずパッティングの最もうまい者なのです」
去年のドライビング・ディスタンス部門で141位というビリー・メイフェアはそう言う。ガルシアは飛ばすプレイヤーの一人だが同じことを言っている。
「わかるでしょう? パッティングがすべてなんですよ。どのくらい飛ばすかは関係ないんです。オーガスタではパットがものにできなければ勝てないんです」
ニック・プライスはアイアンのよいショットもふつうのショットも結果は同じようにピンから10mくらいの位置につくようになっている、線路があるようなものだと言う。1999年にホセ・マリア・オラサバルはグリーンをはずした28回のうち21回をパーにして勝利をつかんだ。マスターズとはスクランブラー(窮地からの脱出に長けた者)のための試合だと言えるのではないかとしている。
ブラッド・ファクソンは去年、ドライビング・ディスタンスでは147位だったが、これまでに3度、パッティング部門のナンバーワンになっている。ファクソンは言う。
「毎年、マスターズではそれほど飛ばさないやつがあがってくるでしょう。ショートゲームがより重要だからなのです」
今年は出場しないがロレン・ロバーツも「飛ばし不可欠論」にそぐわない例だろう。
ロバーツもPGAツアー屈指のベスト・パターでありつつ、去年もディスタンスで193位、つまりどん尻から2番目というショートヒッターの代表選手だ。しかし、44歳にして2000年のマスターズでは優勝争いに絡み、最終的には4打差の3位タイに着けた。飛距離にものを言わせてパー5を稼ぎどころとしているタイガー・ウッズも言っている。
「距離が出る出ないはオーガスタでは本当に関係ないのです。いいプレイをすれば上位に来るし、ショートゲームがいまや、さらにものを言うようになった。ビジェイが勝ったとき、ロレン・ロバーツが上位に来たでしょう。いいプレイをすれば戦えることをまさに表しているのです」
「いくら飛ばしたって、やはり切れ味のいいアイアンショットを打ってパットを決めなければならないのです」
去年はドライビング・ディスタンス部門164位だったが、過去4回のマスターズでは14位以内に入っているジム・フューリックが言う。アンドレードとスルーマンはロングヒッターも3番ウッドをドライバーに持ち替えなければならないホールが増えたわけだから、ショートヒッターと同じ条件なのではないか、たとえば1番、8番、そして18番ではバンカーが利いてくることになると言っている。
「コースが長くなって数字からするとショートヒッターは苦しむだろうと考えるでしょうけど、まあどうなるかを見てみましょうよ。たぶん2年は必要でしょう、誰が苦しんで、誰が有利なのかを判断するにはね」
去年のPGAツアーのドライビング・ディスタンス部門で133位以下のプレイヤー16人が今回のマスターズに出場する。彼らの平均飛距離は265ヤードから276ヤード。そのなかに5人の歴代優勝者が入っていることが興味深い。2度勝っているベン・クレンショウ、ランガー、オラサバル、そしてラリー・マイズとオメーラ。(ただし、オラサバルは今年、飛距離を伸ばしていて296ヤードでディスタンス部門10位、ビュイック・インビテーショナル に優勝しているが。)
その他、ディスタンス部門133位以下のプレイヤーとしてはスコット・ホーク、ジャスティン・レナード、リー・ジャンセン、ホセ・カセラス、スコット・バープランク、カーク・トリプレット、マーク・ブルックス、ニック・プライス、ジム・フューリック、ブラッド・ファクソン、そしてビリー・メイフェア。
プライスは興味深い存在となる。1994年には平均277.5ヤードでドライビング・ディスタンス6位、そして去年は順位を149位まで落としたが、平均飛距離は274.5だった。年齢のせいでショートヒッターになったわけではないのである。いまや誰もがソリッドコアのボールに替えているが、いち早く1993年に替えて飛距離を伸ばしていたのがプライスだった。
ツアー全体の平均は93年から2001年までに19ヤード伸びて279.4ヤード。おもにボール、シャフトの長さ、そしてスティールからグラファイトへというシャフト素材の変化、パースィモンからタイタニウムへというヘッド素材の変化によるものだろう。そうした道具の進歩があってなお、この4月にどうなるかは予断を許さない。いったい、ドライビング・ディスタンスで最下位に近い4人は依然としてオーガスタで勝つ見込みがあるといえるのか?
問えば答えはイエスが多いだろう。しかし、である。ランガーは言った。
「勝てる見込みはまだある。しかし、さらに厳しいものになるだろう。もし私が8番アイアンで打つときにあなたが4番アイアンだとしたら、私をうち負かせると思いますか? パッティングとチッピングでなんとかしなくてはならないでしょう」
「15人か20人は予選落ち状態」とはカルカベッキアの弁。
飛ばないプレイヤーでも、パッティングがこのときとばかりに絶好調なら勝てるというオメーラ。98年の勝者は今年のコースでは2打か3打はスコアが落ちると予想する。
「飛ばすべきコースにはなった。だけど依然としてパットをうまくやらなければならない。タイガー・ウッズでさえパットが良くなくてはマスターズに勝つことはできないのです」By JEFF RUDE (GW)