復調でも原点回帰でもない 渋野日向子は進化の真っただ中
涙あり、笑いあり…渋野日向子の2020年を写真と言葉で振り返る
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、多くの試合が中止や延期に追い込まれた2020年。渋野日向子は国内ツアー6試合、米ツアー7試合に出場した。
予選落ちあり、優勝争いあり…。涙あり、笑いありのシーズンを写真と言葉で振り返った。
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1月 「サントリー所属の渋野日向子です」
サントリーホールディングスとの所属契約を正式発表。「サントリー所属の渋野日向子です」とあいさつした。複数の大手企業から所属契約の高額オファーが相次いだが、同社には縁を感じていたという。
10歳だった2010年「サントリーレディス」期間中、会場の六甲国際GCで行われたジュニア向けのスナッグゴルフで優勝。「すごく思い出に残っている。私もゴルフを通して、たくさんの子どもに笑顔と夢を届けていきたい」と話した。
大会アンバサダーを務める宮里藍さんについても「私たちの“黄金世代”はみんな藍さんを見てきた。引退後もみんなの憧れ。藍さんと同じサントリー所属になれて、うれしいです」と笑顔を見せた。
1月 「税理士さんの力を借りる」
地元・岡山市の岡山東税務署でスマートフォンでの確定申告書作成も体験するなど、一日税務署長を務めた。2019年は海外メジャー「全英女子オープン」優勝で67万5000ドル(約7200万円)、4勝を挙げた国内ツアーでは約1億5300万円を獲得した。
賞金だけでも計2億円以上を稼いだが、自身の確定申告については「かなり大変で、自分一人じゃできない。税理士さんの力を借りてやっています」と話した。
6月 「死ぬほど練習しないといけない」
国内ツアー開幕戦となった「アース・モンダミンカップ」では、2日目を終えて通算2オーバー。カットラインに1打届かず、予選落ちとなった。
「個人的にはパー5で4つ落としたというのがメンタルに来た。練習をたくさんしていても試合でできないと意味がないよな、と痛感した。死ぬほど練習しないといけないんだな、と思いました」
初日前半5番では動かしたボールマーカーを戻し忘れたままパットを放ち、ゴルフ規則14.7aの「誤所からのプレー」で2罰打。ダブルボギーをたたき、「怒りを通り越してわらけてきた。情けないですね」と反省した。
8月 「ただ悔しすぎる」
連覇がかかっていた海外メジャー「AIG女子オープン」(全英女子オープン)は通算12オーバー105位で予選落ちに終わった。硬いグリーン、吹き荒れる風、コース内にある96個のバンカーに苦しんだ。
ティショットのフェアウェイキープ率は2日間で75%に対し、パーオン率は2日合計で50%。強風への対策として低弾道を求め、右足寄りにボールを置いたが、結果にはつながらなかった。
「足りないことばっかり。もっと万全な状態で迎えたかったと思ったけど、みんな試合がない中で平等なので、そんな弱音を吐いてはいられないんですけど。ただ悔しすぎるなと思います」
9月 「すべて台無し」
海外メジャー「ANAインスピレーション」では決勝ラウンドに進出したものの、通算2オーバーの51位。最終日、前半2番(パー5)でバーディを先行したものの、直後の3番でボギー。前半はその後、パーを並べたが、後半に6つスコアを落とした。
「3日間をすべて台無しにするような最終日。情けない終わり方だったが、まだ伸びしろはある。米国で初めての試合で予選を通過できたのは本当に良かった。4日間この難しいコースでできたのは、これからにつながると思う」と話した。
10月 「メジャー覇者は捨てていい」
海外メジャー「KPMG全米女子プロゴルフ選手権」は予選通過したものの、通算11オーバー58位。2カ月間6試合に及ぶ海外転戦は予選落ち2試合など、トップ20はゼロ。
2019年「全英」覇者として思うような結果につながらなかったが、「日本ではやっぱり42年ぶりだったので、何かを背負っていかなければいけないのかもしれなかったですけど、こっち(米ツアー)で戦うとしたら、メジャーチャンピオンというその言葉を捨てていいと思いました」と吹っ切れた表情を見せた。
10月 「持っている」と思ったんですけど
「樋口久子 三菱電機レディス」で4カ月ぶりに国内ツアーに復帰。渋野日向子は初日、前半8番(パー3)でホールインワンを決めた。実測151ydを8Iで打ち、ピン手前2mに着弾したボールがカップに吸い込まれた。
それでも後半は3つ落とし、イーブンパー「72」の32位発進。「うまいこといってくれて良かった。ホールインワンは(カップに落ちた)音で分かりました。『持っている』と思ったんですけど、後半のスコアを見てこれが実力だなと思い知らされました」と振り返った。
11月 「ウッズでさえ全てうまくいくことは」
国内ツアー「TOTOジャパンクラシック」2日目に4バーディ、1ボギーの「69」をマークした。初日の「71」と比べて渋野日向子は「悔しい部分はあるけど、これで前に進めていないとなれば、欲深いし、自分に厳しいと思うので。1ミリ進めたと思えたらいい」と納得の表情を浮かべた。
初日バンカーに入れてダブルボギーをたたいた4番でもバーディ、ボギーをたたいた8番(パー3)でもバーディを返した。
「(ゴルフの内容に関しては)今まで以上に考えているが、完成してしまえば、ゴルフに対して楽しみもなくなってしまう。全てうまくいくことは絶対にない。タイガー・ウッズでさえない。そのなかでも100%に近いゴルフをこれからもやっていけるように地道にやっていくしかない」と話した。
12月 「悔しいけど悔いはない」
海外メジャー「全米女子オープン」では2日目、3日目と首位に立ったが、優勝には2打及ばず通算1アンダー4位でフィニッシュ。日本人初のメジャー2勝目とはならなかった。
雷雨のため、最終ラウンドは予定されていた日曜(13日)ではなく、月曜(14日)へ持ち越しされた。気温は10度以上低下して6度を記録し、寒さにも悩まされた。
「これが自分の実力というのがすごく分かりました。悔しいけど悔いはない。結局、この悔しい気持ちはアメリカツアーでしかはらせないので、絶対ここでまた戦いたい」と涙をこらえた。