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2013年 マスターズ
期間:04/11〜04/14 場所:オーガスタナショナルGC(ジョージア州)

オーガスタにくすぶる タイガー・ルールの余波

グリーンジャケットを争う戦いが激しくなるはずだったムービングデーは、早朝から異様な雰囲気に包まれていた。オーガスタナショナルGCで開催中の「マスターズ」3日目。タイガー・ウッズがスタート前に2ペナルティを課せられる異例の事態が起こった。

前日2日目、ウッズは15番ホール(パー5)をボギーとしていたが、池に入れた直後の第5打の直前、ボールをドロップした場所がルールに抵触。「誤所からのプレー」で、同ホールはトリプルボギーとなり、「71」だったスコアは「73」に訂正されることになった。

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しかし本来、スコア提出後のペナルティ発覚は、過少申告等による失格処分の対象となる。

この日午前、マスターズ委員会は緊急会見を開き、経緯を説明した。同委員のフレッド・リドレー氏によれば、前日ウッズが15番ホールを終えた直後より、テレビ視聴者からの「ドロップする位置が間違っている」という指摘の声が噴出。しかし競技委員が映像を確認したところ、打ち直しの地点は「問題無し」という判断を下し、ウッズにはペナルティを加えられる可能性があることを、伝えなかったという。

ところがラウンド後のインタビューで「(ピンに当たった3打目は)強いと感じたので、2ヤード下がって打ち直した」とコメント。この放送後の同日夜、問題が再燃した。ウッズが“ボールをカップに近づけたい意思”を持って、本来ドロップすべき地点よりも後ろから打ち直し、誤った処置をしたことが判明したからだ。(打ち直して実際にピン横50センチにピタリとつけてしまうところは、本当にスゴイ!)

そして翌3日目の朝、ウッズは午前8時から競技委員と協議し、過ちを認めた。しかしマスターズ委員会は、競技委員が一旦「問題無し」とし、スコア提出前のウッズに「ペナルティの可能性がある」という情報を伝えなかったことで、選手に不利益をもたらしたと判断。規則33-7「委員会の自由裁量権(後述)」を適用し、失格ではなく、当該ホール2罰打をつける処分とした。失格については「議題にならなかった」という。

ウッズはラウンド後「僕はルールの下でプレーするだけ。これは“ハリントン・ルール”だと思う。これが1、2年前であればプレーする機会はなかっただろう。でもルールが変わったんだ」と話した。

この“ハリントン・ルール”こそが、2011年に新たに作られた規則33-7のこと。同年の「アブダビHSBC選手権」でパドレイグ・ハリントン(アイルランド)は、グリーン上でボールマークを取った直後、わずかにボールに手が触れていたことが、テレビ視聴者からの指摘で明らかになった。わずかディンプル数個分という世界だったが、当時のルールでは失格に。しかし、テレビに登場しやすい有力選手の方が指摘を受ける“危険性”が高まるため、公平性を欠くという観点などから、委員会の自由裁量権によって、これまでの失格処分ではなく、罰打を加えて、プレーを続行させるというルールが生まれた。

だが、AP通信は「“違反に気付かなかった”のと“ルールを分かっていなかった”のは区別される。この場合は、ウッズが“ルールを分かっていなかった”」と指摘。ハリントンのケースとは異なると表現した。ニック・ファルドデビッド・デュバルらも「失格を選ぶべき」という考えを示す。また、前日2日目には14歳のグァン・ティンラン(中国)が予選通過カットライン上での戦い続ける中、17番ホールでスロープレーの処分を受け、1罰打を加えられた。彼に対しては厳格な裁定が下されたことも受け「なぜタイガーはいいのか?」という反論が大きくなっている。

一方で選手たちの中にはウッズを擁護するコメントも。バッバ・ワトソンは「このルールは素晴らしい。僕たちを守ってくれる。今日の僕のように(ワトソンはこの日、下位でスタート)みんな僕が何をやっても気づかなかったはず」と、やはり公平性を主張。スティーブ・ストリッカーは「我々のスポーツがユニークなのは、同じ時間に何が起こっているかをすべて理解するのが難しいところ」と話し、テレビ放送の影響の大きさを指摘した。

今回の一件が、タイガー・ウッズのミスから始まった騒動であることは疑いようがない。だが、放送や通信技術が進んだ時代。悪意のない罰則に気付くのが遅れたことに対し、失格処分を下すのが適切か、というゴルフの根幹にかかわる議論を呼ぶかもしれない。

ゴルフの祭典で沸いた問題は、世界のゴルフの今後に影響するのか。それともマスターズが、独自の道を歩み続けるのだろうか。(ジョージア州オーガスタ/桂川洋一)

【ゴルフ規則】33-7 競技失格の罰;委員会の自由裁量権
委員会は、正当な措置と判断したときは、例外的な事例に限って、個々に、競技失格の罰を免除したり修正することができ、また逆に、競技失格とする規則がなくても競技失格の罰を課すこともできる。
競技失格の罰よりも軽い罰は、どのような場合も免除したり修正してはならない。
委員会はプレーヤーがエチケットの重大な違反に当たると考えた場合、規則33-7に基づいて競技失格の罰を課すことができる。

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