海外メジャーで感じたUTの重要性 石川遼の20勝目を支えた14本
2024年 三井住友VISA太平洋マスターズ
期間:11/07〜11/10 場所:太平洋C 御殿場C(静岡)
「ごまかし」に限界を感じた20代 石川遼が“ほぼ直ドラ”で証明した進化
◇国内男子◇三井住友VISA太平洋マスターズ 最終日(10日)◇太平洋クラブ御殿場コース(静岡)◇7262yd(パー70)◇曇り(観衆8549人)
優勝争いの最終日、石川遼は朝の練習場で “直ドラ”を何球も打っていた。ティショットの落としどころがタイトな6、9番で使うショットの調整だ。「直ドラって“当て感”が良くないと難しい。ここで必要な直ドラを使えるくらいの“当て感”には、なりつつある」。明らかに難度の高い試みだが、イメージはでき上がっていた。
<< 下に続く >>
15歳だった2007年、初めて出場したプロトーナメント「マンシングウェアKSBカップ」でツアー史上最年少優勝を飾り、翌年にプロ転向。09年は4勝を挙げて18歳で史上最年少賞金王となり、33歳でツアー通算20勝に到達した。輝かしいキャリアの中で20代後半に転機があったという。
「持っている“ごまかし能力”を、全部使った気がする」。シーズン3勝を挙げた2019年、28歳で限界を感じた。「きのうと真逆のことを試合でやるのが日常茶飯事」とドライバーショットで試行錯誤を続けながら、根本的な解決法が見つからない。優勝した「日本プロ」、「セガサミーカップ」、「日本シリーズ」はどれも納得できるパフォーマンスではあったが「“これ以上”が難しいと感じた。ここから上に行くには、どうすればいいんだろう?」。父・勝美さんに教わりながら、「自分のことは全部自分で解決しようというタイプ」とゴルフを作ってきたが、2020年に田中剛氏をコーチに迎え、本格的なスイング改造に着手した。
それから4年以上が経った。「ドライバーで悩みながらコーチをお願いして、スイング的には目指していた以上になっている。まさかここまで来られると思っていなかった」と実感している。
今週、コース攻略のキーポイントともいえた6、9番では“直ドラ”に近い、低いティアップからドライバーで低いフェードを打ち続けた。FWやUTで刻むより、左右のブレが小さくなる計算はたつが、ボールをクリーンにヒットするのが難しい。スイング改造したことでヘッドが「アウトサイドからダウンブローに入っていたものが、インサイドの低めから入るようになった」と言い、なおさら打ちにくくなったショットでもあった。しかし「いいスコアで上がる確率が高い攻め方を考えた結果」として「8、9割はうまくいく」との自信を胸にあえてチャレンジした。
結果、フェアウェイを外したのは通常のティアップで打った初日の9番、低いティアップに切り替えた後の3日目の6番のみ。計8ホールを1バーディ、1ボギーのパープレー。積み上げたスキルは裏切らなかった。
「コツコツと同じことを続けてきて、コネクトし始めている感じはある。今週、それがすごく良い収穫だったなって思います」。10代で9勝、20代で8勝、30代で3勝を重ねてきた。「あと何勝っていうのは分からないけど、28、29歳くらいからが、キャリアで節目だった。もっとフィジカルを鍛えていけばキャリアも伸ばせるだろうし、チャンスがあると思って日々やっている」。プロ17年目の石川は、もう昔のように“ごまかす”つもりはない。(静岡県御殿場市/谷口愛純)