地元大会を戦う今田竜二 復調のきっかけを
2012年 AT&Tペブルビーチナショナルプロアマ
期間:02/09〜02/12 場所:ペブルビーチGL他(カリフォルニア州)
【WORLD】BIG2の激突 40勝目を挙げたミケルソンの眼に映ったタイガー
Golf World(2012年2月20日号)texted by Jim Moriarty
「AT&Tペブルビーチナショナルプロアマ」で、映画「ツタンカーメンの秘宝」のように誰にも予測出来ない結末が、既にピークを過ぎたと思われた2人によって演出された。ペブルビーチほどの大舞台では中々みられないゴージャスな形で、タイガー・ウッズ、そしてフィル・ミケルソンによるショーが展開されたのだった。
ミケルソンは、ファストフードチェーンのIn-N-Outバーガーのドライブスルーよりも猛烈なスピードで逆転し、勝利を飾ったと形容できる。週を通して素晴らしい成績を収めていたチャーリー・ウィは、寒風が吹きすさび、曇り空の広がる最終日を、2位ケン・デュークに3打差、ウッズと4打差、そしてミケルソンとは6打差で迎えていたのだから。
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これだけの差が開き、2週続けての試合という条件では、中華料理のテイクアウト用バッグのように出場選手達も疲労が溜まっており、“だれた状態”になることが予想されたため、逆転優勝はほぼ不可能という意見が大半だった。だがペブルビーチの難易度を考えれば、ウッズとミケルソンのデュオがみせたプレーは、全てのギャラリー、そしてウィとデュークにとって素晴らしいレッスンになったのではないだろうか。(プロアマ戦が混在する大会とあって)アマチュアのパートナーが見つめる中で、それだけのことをやってのけるのは簡単なことではない。
彼らはそれだけのプレーを披露した。ウェストコースト(シーズン序盤戦)で好不調の波が激しく、アンダーパーを記録できていなかったミケルソンだったが、最終日、6番ホールまでに先手を奪い、全員の心を鷲づかみにした。最終的に「64」をマークし4度目の大会制覇を達成。同大会でミケルソンの優勝回数を上回るのはマーク・オメーラただ1人。ツアー通算40勝を達成し、キャリー・ミドルコフ、そしてこのペブルビーチで「全米オープン」を制したトム・ワトソンの記録を抜いた。首位スタートだったウィは4オーバー、デュークは1オーバーと調子を落とし、ウッズもパットに苦しみ、しかも7番から9番ホールではペブルビーチの強風に煽られ、ボギーを叩き失速した。
ミケルソンは、1つのトレンドを生み出した選手でもある。2007年以降、ウッズと最終日で同組になった大会では、ミケルソンが5勝0敗と圧倒しているのだ。ミケルソンは2人のライバル関係は既に過渡期を過ぎたと即答し、「前もって言っておかないとね」とすると、「彼のおかげで自分のベストが引き出せたと思う。わずか5年だけれど…」と答えた。更に「その前も元気いっぱいにプレーしていたことは、忘れないようにしたい」とした。
気の早いメディアはミケルソン復活を謳い、欧州ツアー「アブダビHSBC選手権」で優勝できなかったウッズとは違うと強調。それでもミケルソンは好敵手の復調を実感していると話した。「衰えはあるかもしれないが、正しい方向に進んでいる。ターゲットをフェードで攻めるなど、かつての彼に近づいていると思う。スコアは彼が望む通りにはなっていないだろうし、パットも理想とは違うだろう。それでも彼のプレーから完全復活が近いことは明らかだ。あと1週間もあれば、だいぶ違う」。
この週の主役は誰が何と言おうとミケルソン。彼は妻のエイミーを同行させていた。エイミーは「今日は彼とデートなの」とご満悦。ミケルソンはガンと闘う妻について、「難しい時期を過ごしている」と辛い治療について語った。最終日の18番ホールでは、ウッズがホールアウトした後、ミケルソンとキャディを20年務めているジム・マッケイとの間で珍しいやり取りが見られた。2人は互いの手を首に回し、タイトに組んだ。そして何やら囁き合った。「何を言ったかは言えない。でもフィルがやる気になったとだけは言える」とマッケイ。具体的な言葉は明かしてもらえなかったが、「さぁ、決めてやれ!」といったような内容だったという。「ミケルソンのモチベーションは相当高まっていたことは言うまでもない。41歳になってもトーナメント優勝、そしてメジャー制覇ということだけに集中しているんだ」。
ウッズにとって今年最初のアメリカ国内での戦いは、スパイグラスヒルからスタート。(GDO編集部注:同大会は3日間にわたって行われる予選ラウンドで全選手が異なる3コースをプレーする)。4アンダー「68」をマークした。14ホール中12ホールでフェアウェイをキープし、ドライバーでミスしていた頃からは見違えるほどだった。数年前までは、フロリダのジュピターからジャクソンビルを狙えば、真っ直ぐに州都のタラハシーめがけて引っかけるとまで言われたものだが。またプレーする様子も、数式を解いているような最近までの表情とは違い、きちんとゴルフをプレーしている姿に戻っていた。今後どのような未来が待っているかは別として、今回の最終ラウンドで失速したものの、確実に状態は戻りつつあると言える。
ちなみに、大会期間中にウッズ以外に最もギャラリーから注目されたセレブと言えば、アマチュア覇者であり映画俳優のビル・マーレイ。わけのわからないカモフラージュスーツは、全く防寒性が感じられないウェアだった。そして3日目のスターと言えば、ようやく予選を通過したレイ・ロマノだろう。スティーブ・ボウディッチが15番をイーグルとした後で拳を高く突き上げ、「まだ家には帰りたくないんだ。だって妻がいるからね」とコメント。その2秒後、CBSのカメラマンの方を向き、「これ放送されているの?」と聞くと、それから30秒後には(ロマノの妻から)携帯メールが届いていた。
話はそれたが、何にせよフィルとエイミーほど心地よい週末を過ごした出場者はいなかったに違いない。
米国ゴルフダイジェスト社提携
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