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注目の5ルーキーズ/サム・ソーンダース<佐渡充高の選手名鑑 136>

■ パーマーの孫ソーンダースがPGAツアーに本格参戦

ゴルフ界のキング、アーノルド・パーマーの孫サム・ソーンダースが、今季からPGAツアーに本格参戦する。1987年7月30日、フロリダ州オーランド生まれの27歳。オーランドと言えば「アーノルド・パーマーインビテーショナル」の会場ベイヒルC&ロッジのある街で、祖父のゴルフ場で腕を磨き成長した。パーマーと前夫人ウィニー(1999年没)には、長女ペギーと次女エイミーの2人の娘がおり、次女エイミーがロイ・ソーンダースと結婚して生まれたのがサムだ。父親はフロリダ大学フットボールチームのキッカーとして活躍。そんな父の体格を受け継いだのか、サムも身長187センチ、体重85キロの筋肉質で、アスリート体格に恵まれた。

僕が初めてサンダースを見たのは2004年の「アーノルド・パーマー招待」だった。当時高校1年生、16歳の彼が、祖父パーマーのキャディを担当していた。アゴの先が少しとがったところなど、若き日のパーマーを思い起こさせた。何より驚いたのはその屈強な体格で、高校生とは思えぬ太い首、厚い胸板と上腕、まるでNFLの選手のようだった。

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■ 偉大すぎる祖父を持つ喜びと苦悩

当然ながらゴルフは祖父の影響でスタートし、両親もゴルフに親しみ、サムは子供の頃から自然にプレーをするようになっていった。環境だけではなく、運動神経や才能にも恵まれ、16歳の時にはフロリダ州の高校選手権で優勝を果たすと、最優秀選手賞にも輝いた。祖父パーマーは、孫の成長が嬉しくてたまらず、更なる成長を願い、2004年大会で孫をキャディに起用した。

“祖父+孫”のコンビはこれだけにとどまらず、4月の「マスターズ」でも、サムがバッグを担ぎ大きな話題となった。両親は「高校生が学校を休むのはダメ」と反対したが、その年の「マスターズ」はパーマー68回目、そして生涯最後の出場で祖父と孫の思いが勝り、両親は承諾したのだった。サムはその頃から才能を開花させはじめ、2006年18歳の時には、ベイヒルのクラブチャンピオンになり、同年の「パーマー招待」には選手として推薦出場を果たした。しかし76-82の大たたきで予選落ち。“祖父の七光り”などと批判を浴びて、記念すべきPGAツアーデビュー戦では厳しい洗礼を受けた。

米国でパーマーといえばゴルフの枠をこえた信頼のスーパーブランドだ。パーマーの名がつく道路、空港、病院、レストラン、衣料、玩具。マーケットに行けば飲料からシリアル、ワイン、農機具やトラクターなど幅広く、祖父は国民的セレブである。サムは偉大すぎる祖父を持つ喜びと苦悩の狭間で揺れ動きながら、プロゴルファーになることを本気で模索しはじめたのだった。

■ 名門クレムゾン大学へ

パーマーの母校ウェイクフォレスト大学には“パーマー奨学金”があり、これまで多くの才能溢れる学生アスリートを支えてきた。しかしサムは、祖父の母校ではなく、あえてクレムソン大学に進学を決めた。同校は「全米オープン」覇者のルーカス・グローバージョナサン・バードなど多くの名選手を輩出してきた強豪校だ。サム在校時の大学リーグでは、オクラホマ州立大学のリッキー・ファウラー、カリフォルニア大学のジェイミー・ラブマーク、フロリダ大学のビリー・ホーシェルらがしのぎを削っていた。試合で好成績をあげるのは至難の業で、サムは成績よりもビッグヒッターというイメージの強い選手だった。当時のコーチも「サムはただ一人350ヤード超えの飛距離を持つ、感覚派の選手だった」と振り返る。パーマーも「私の2倍は飛ばす!」と孫の超ドライブに驚いていたことを思い出す。

■ 自分の人生は自分で切り拓く!新天地コロラドへ

2009年に大学を中退してプロに転向を果たしたが、同年のQスクールに失敗し出場権獲得を逃した。それでもパーマーの孫ということで2010、11年は推薦出場などで各年8試合に出場した。プロ初戦は2010年1月の「ボブ・ホープクラシック(現ヒューマナ)」、自己ベストは2011年「AT&Tペブルビーチナショナルプロアマ」での15位だ。それでもシード権獲得までは程遠く、実力で勝ち取るしか道はなくなった。2012、13年はミニツアーを転戦。今年2014年のウェブドットコムツアーにフル参戦し、賞金ランク5位で2015年シーズンのPGAツアー出場権を獲得した。厳しい実力の世界を生き抜き、遂に念願のトップステージへ。さらに上を目指す意欲に燃え、覚悟もできた。

サムは2012年11月に結婚。同年末にはケリー夫人の5歳の息子コーエンの3人は、最小限の家財道具を積んだトラックを自ら運転し、故郷フロリダを離れ、遠くコロラドへ引っ越した。翌年12月にはサムとの間に男の子が誕生。出産予定日が下部ツアーのシード権獲得の重要な試合と重なり、欠場すべきか悩んだが、夫人の「行きなさい!!これはあなたの仕事。必ずやり遂げて!」という言葉に後押しされ出発したのだった。サムは見事にシード権を獲得し、その翌日に息子が誕生した。一気に巡ってきた2つの喜びに、サムは自身の夢や希望を込めて“Ace(エース)”と命名した。

かつて「祖父の時代と今のゴルフは違う。だからあまり助言は求めない」と話していたサムだが、荒波にもまれ、家庭を築き、最近は自分から祖父に連絡することが増えたという。パーマーは今年9月に85歳を迎えた。PGAツアー本格挑戦をワクワクしながら見守る偉大な祖父に、どのようなプレーを見せられるか、多くの人が注目している。

佐渡充高(さどみつたか)
ゴルフジャーナリスト。1957年生まれ。上智大学卒。大学時代はゴルフ部に所属しキャプテンを務める。3、4年生の時に太平洋クラブマスターズで当時4年連続賞金王に輝いたトム・ワトソンのキャディーを務める。東京中日スポーツ新聞社を経て85年に渡米、ニューヨークを拠点に世界のゴルフを取材。米国ゴルフ記者協会会員、ゴルフマガジン「世界トップ100コース」選考委員会国際評議委員。元世界ゴルフ殿堂選考委員。91年からNHK米ゴルフツアー放送ゴルフ解説者。現在は日本を拠点に世界のゴルフを取材、講演などに飛び回る。

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