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ミケルソンの問題

フィル・ミケルソンにとって大きな一年になるはずだった。オーガスタでは緑のブレザーに袖を通し、サザンヒルズでは母国のナショナルオープンの栄冠をつかみ、そしてロイヤルリザムでは18番ホールに集まった英国の厳かなる観衆を前に、勝者の威厳をたたえつつバイザーをとって見せる。締めくくりはかのボビー・ジョーンズの愛したアトランタ・アスレティック・クラブ。83回目を迎えたPGAチャンピオンシップの優勝。
ミケルソン自身もそうでありたかったろう。いまとなってはただ空想にふけるばかりだ。思い起こせば、ある一つのメジャーに端を発したことだったのかもしれない。やはり同じような結末だった。2年前の夏、パインハーストでの全米オープン。72ホール目のグリーン上に立つミケルソンの目の前で、勝利を決めるパットがよろよろと転がりながらカップの底へ沈んでいったとき。すさまじい歓声のなかで、何かが切れてしまったのかもしれない。今回、彼のものではないウイニングパットが決まった瞬間、ミケルソンにとって2001年はプシュウと音を立ててしぼんでいった。それは悲鳴にも似た、彼自身のため息でもあっただろう。4月から8月までの4つのメジャーの分だけふくらんでいた希望が潰えたのだ。マスターズ3位、全米オープン7位、そしてPGAが2位。多くのプレイヤーにとってはすばらしい成績に聞こえても、ミケルソンにとっては不本意そのものなのだ。

「今年はいままでの自分をうち破る一年になるだろうと信じていました」

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最終日、アトランタ・アスレティック・クラブのハイランズ・コースを68で回りトータル266としたミケルソンは、首位に一打差で今年のPGAチャンピオンシップを終えてそう語った。このレフティーにとって、アリゾナ州立大学の授業を休んでツーソンで開催されたPGAのトーナメントに出場し、優勝して見せたのはつい昨日のことのように思い出される。ミケルソンは次のニクラスだった。パワーと繊細な小技を併せ持った稀代の逸材として、メジャーを獲るだろうなどいうう言い方ではなくて、いくつものメジャーで勝つだろうと言われていた。いまや、10年を経てツアー19勝、獲得賞金は1800万ドルに迫っている。しかし、依然として聖杯を探し求めている。もはや4つのうちのどれでもいいという状況だ。仲間でもありライバルでもあるデイヴィッド・デュヴァルが全英オープンで、輝かしきクラレットジャグを手に入れたいまとなっては、ミケルソンの背中に乗っているのは体重400キロのゴリラだ。小さなチンパンジーじゃない。軽くなっていくことはないのである。

「さぞ、がっかりしていることでしょう。たいへんな努力だった。あれだけ何度も優勝争いをするところまで自分をもっていけるプレイヤーがほかにいるでしょうか」

ミケルソンのコーチ、リック・スミスは、そう声を落として言った。
次のチャンスがやってくるのは8か月後、オーガスタに再びアザレアの咲く頃だ。つらくてもミケルソンには熱くまぶしいライトが当てられることになるだろう。落胆して嘆いている彼にとって、このシーズンオフは長いものなる。

「デイヴィッド(デュヴァル)は勝つと思っていました。フィルも勝ちます。時間の問題です。もういい歳だという訳ではないのだし、50代じゃないのだから。優勝争いの中で、いくつかのツキに恵まれたときにはメジャーに勝つでしょうし、あるいは他を大きく引き離す圧倒的な勝利となるでしょう」

タイガー・ウッズがPGAの前にそう言っていた。ミケルソンとしては今回のPGAでは後者のやり方で行きたかった。そうなりそうな展開ではあった。ただ、最終ホールでルイジアナ出身のデイヴィッド・トムズという扱いにくいプレイヤーが、まるでホームコースでプレイする百戦錬磨の地元プレイヤーのように立ちはだかったのだった。
プロとしてこれまで33戦のメジャーに出場してきたミケルソンとしては、今回のPGAにはこれまでと違ったやり方で臨んでいた。勝つことだけに狙いを定めるのではなく、自分をほかのプレイヤーと切り離して、あるスコアの数字を目指し、その結果として勝つというプランを立てていた。そのプランについては、あからさまにしてしてさえいたのに、う~む。ここに理由があるのだろうか。水をひとくちだけ飲めればいいと思っていながら、バケツ一杯の水を要求していると言えなくもない。ちょっと欲張りなのかもしれない。

彼の戦歴に「メジャー」の文字が無い理由は、その都度、いろいろと指摘されてきた。コース・マネジメントのまずさ。攻めすぎ。プレッシャーがかかったときにゆるむスイング。入らない短いパット。それではメジャーには勝てないが、でも今回は、全て上手くやってのけているように見えた。誤解の無いように言っておくが、ミケルソンは大事な場面で1.5mのパットを何度も入れて優勝争いを演じたのであって、今回に関してはハートの問題では決してなかった。最後の11ホールはショットが乱れていたのに、精神力の強さを見せていたのだった。もし何か足りなかったとすれば、それは幸運とかツキといった領域のことなのではないか。4日間のトーナメントのなかではそういう要素が大きくものを言うはずだ。すぐに一打、追い抜かれたわけだが、266というスコアはその時点での最小スコア記録だったのだ。ポール・エイジンガーは次のように語る。

フィル・ミケルソンのハートを問題にしてメジャーがとれるかどうかを言うなんて私には驚きですね。7年か10年かのうちに19勝もしている男のハートに問題があるかどうかなんて。彼のハートが問題だなんて言うヤツは、全くゴルフをやったことがないか、ゴルフができないので放送席にいるようなヤツらなんですよ」
フィル・ミケルソンの能力を問うなんてできるわけもない。彼はまったく驚くべきプレイヤーだ。彼自身、自分がやれるということをわかっていると私は思う。今回、出場していたプレイヤーだって、全員、これまで何度も打ちのめしてきてるじゃないですか。問題は、特定の試合でそれをやってのけなくてはならないということで、それは運があるかないかの問題です。自分の調子のベストをその試合にもってくるようにしなければならないし、ほかの誰かが自分よりついてるなんてことがないように祈らなくてはいけない。そんな単純なことなんです」

31歳になるミケルソンは、メジャーに勝つ日を待っている。それがいつになることかと待ち望んでいる。エイジンガーとしては待つのがどんなものなのかは知っているはずだ。エイジンガーが1993年にPGAチャンピオンシップに勝ったときには33歳だった。ニック・ファルドもメジャー6勝の最初の一つを勝ったときは30をすぎていた。グレッグ・ノーマンニック・プライス、そしてカーティス・ストレンジも複数回のメジャーを勝ったが、最初の1勝は30歳を過ぎてからだった。マーク・オメーラは41歳でメジャーを年間2勝したのだ。みんな待ったのである。ミケルソンはPGAでは149人のうち148人を破った。ついていなかったのは、それではトロフィーに届かなかったことだ。

「まだ時間はたっぷりあるし、彼はたいへんなプレイヤーだ。信じられないほどすばらしいプレイヤーだ。ことによるとメジャーを10勝はするんじゃないだろうか」
エイジンガーはそう言うが、もちろん10勝するにしても最初に1勝しなければならない。ミケルソンにとってはそのハードルが高くて、まだクリアできないでいるわけだ。彼にとって今年のメジャーは残念な結果を残してすべて終了した。どうしてなのかは誰もが、そして彼自身が心から知りたいと願っていることだろう。
BY JEFF BABINEAU Duluth, Ga.(GW)

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