“儲かる”見込みは? 放映権は?/男子ツアー再生のキーマン・NSSK津坂社長インタビュー
国内男子ツアーが大改革に踏み切る。日本ゴルフツアー機構(JGTO)が日系投資ファンドの日本産業推進機構グループ(NSSK)と連携し、株式会社ジャパン・プロゴルフツアー(J-Tour)を設立。ツアー運営と事業展開を担う新会社が、NSSKから150億~200億円規模の資金提供を受けてプロフェッショナルな経営体制構築を目指す。ピーク時の半数以下、今季22試合の開催にとどまる苦境打破の勝算はあるのか。キーマンとなるNSSKの津坂純社長がJGTO倉本昌弘副会長とともにGDOのインタビューに応じた。(聞き手/亀山泰宏)
――変化に期待が膨らみつつ、単刀直入に利益を生み出せるのか不安もあります
津坂氏 これは容易な話ではございません。改革がしっかりと進まないといけない。やっぱり、仕組みなんです。今度はコンテンツ周りがミソになってきます。PGAツアーを見ていますと、売り上げの過半がメディア絡みです。重要なコンテンツをメディア化して、その権利をいろんな方々に売っていく。すごく強いと思うんですよ、(国内男子ゴルフが手つかずの)この時代は。希少価値がある。希少価値だけでは売り上げはそこまでいきませんから、地域性を設けて観光の資源にするであったり、一つひとつを県や市にも貢献するような大きな大会に盛り上げていくことだと思います。
――コンテンツビジネスに不可欠な映像の権利は大会の主催者に帰属する割合が高く、JGTOも自由に使えない事情がありました
倉本氏 主催権も放映権も宝の山みたいに持っていても、結局(利益を生み出す方向に)使えていない。一緒になってそれを使えるようにして、マネタイズしてお互いで分けましょうという提案をしているところです。(これまで持っていた権利を一方的に)取られるんじゃないかと疑心暗鬼になっていると思いますが、我々はそんなことは考えていません。一緒にマネタイズできる仕組みを作りましょう、協力してくださいと交渉しています。
津坂氏 いままでのライブラリーも全く使えていないですよね。ジャンボさん(昨年12月に亡くなった尾崎将司さん)、石川遼選手、いろんなスターがいるのに、そこをうまく出せないっていうのはもったいない。スターになるべき、スターである人たちのメディア露出が仕組みで制約されているんです。我々がお金を払って、過去のものを買い取ってもいい。どれくらい価値があるのか、(見極めるのは)もちろん費用対効果ですが、眠っているだけでは収益としてゼロですからね。
――主戦場を海外に移す選手が増えてきている中でツアーの価値、コンテンツの価値を高めていくプランはありますか
津坂氏 (シーズンを)横の物語、ストーリーとして作っていく。単独で動いているスポンサーの皆さんにとっても、プラスの話しかないと思います。
倉本氏 ゴルフトーナメントではなく、ゴルフツアーという1年間行うひとつのイベントとして再構築します。1個1個のトーナメントはやりたい気持ちはあっても、お金がない。1年間、翌年のお金をどうするかばかり考えていて、もっと良くしたいけど何もできない現状があります。皆さんが持ち寄ってひとつの塊にして売ったら、もっと大きなものになる。価値のとり方を変えましょう、というのが大きな出発点です。
津坂氏 さらに選手一人ひとりの価値を高めること、やっぱり知名度を上げることです。個人レベルのコンテンツを作っていくつもりです。ゴルフの葛藤、人生の葛藤、喜び、悲しみ…それぞれのヒューマンストーリーを一人ひとりフォローしていく。そもそも、プロゴルファーになっている段階でスターですから。パワー、技術、攻略能力を持っているプロは、私ができないことをスーパーマンみたいにできる。そこで尊敬はあるので、あとはそれをみんなに知ってもらうことですね。
――アジアンツアーはサウジアラビア政府系ファンドPIFからツアー運営の約5年分、400億円もの出資を受けたと聞きます。想定している出資規模で施策実現の見込みは
津坂氏 400億円のお金そのものは、ツアーの価値を上げるものではないですよね。ツアーの価値を上げるのはスポンサーとのエンゲージメントの強化であったり、ファンが喜ぶものや見たいと思うものを提供することです。彼らがやっている、お金でツアーを買おうとしている部分と、実際にツアーを強くする、いいもの、いい商品にするっていうのはちょっとずれているんじゃないかなと個人的に思います。
PIFからお金をたくさんもらっても、(賞金等)いまあるものに上乗せして、お金がなくなったら終わり、中東情勢の変化で“もうやーめた”では意味がないですよね。ランキングを落としてLIVが『いらないよ』と言ったら、おしまいじゃないですか。我々は根っこからツアーの価値を作り上げていこうとしています。ひとりひとりの価値を高め、セカンドキャリアも考えてサポートしていく。プロだけじゃありません。キャディさんもトレーナーさんもコーチさんもマネジャーさんも、全員がキャリアとしていいなと思える仕組み、生き方を良くしていけるための土台作りをしていきます。時間はかかりますが、(単に)お金をポンッと投げるものではないのです。