世界選抜が初勝利 日本人3選手がパーマーカップを手中に
チャンスは12回 アマチュア中島啓太が追い求めるもの
◇米国選抜vs世界選抜(大学)◇アーノルド・パーマーカップ 最終日(9日)◇アローシアンC(アーカンソー州)◇パー72
初めての練習ラウンドを行った開幕前の水曜日(5日)、金谷拓実と中島啓太の2人はいつものように水平器を使って、すべてのグリーンの傾斜を丁寧にメモしていた。
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「最近の選手はやっていないですね。今週は僕たちだけです」と中島は言う。「でも、ちゃんとやっていたカーティス・ラックとか、キャメロン・デービス、ミンウ・リーとかは上位に行っている。だから、ちゃんとやる人の方が上に行けると思います」。自らのやることに迷いはない。
今年4月に日本体育大に入学した中島だが、大学進学を意識した時期は遅い。高校2年の1月にオーストラリアアマを日本人として初制覇。世界アマチュアランキングを意識するようになり、目指す道筋が変わったという。「いま日本ツアーに行っても、日本ツアーでとどまっちゃう気がした。大学で4年間、時間が作れたらいいと思った」と、活躍の場を世界に求めた。
そんな中島の野望は大きいものだ。「アマチュアの大きな試合が1年に3つある。全米アマ、全英アマ、アジアアマ。大学4年間で全部出たら12回のチャンスがある。成績次第でマスターズなどの海外メジャーに行ける可能性もある。その12回は絶対無駄にしちゃいけないと思います」
海外4大メジャーのうち「全米プロ」を除く3大会には、それぞれトップアマの出場枠が設けられている(※)。例えば、8月に行われる「全米アマ」で優勝すれば、「マスターズ」「全米オープン」「全英オープン」の3大会すべてに出場できる。もし2位でも「マスターズ」と「全米オープン」は出場可能。トップアマたちはそうした道からどんどん上の舞台へ登っていく。
中島の2学年上の金谷は昨年の「アジアアマ」優勝の権利で、すでに「マスターズ」を経験し、この夏には「全英オープン」にも出場する。その背中を追うように、中島は2週間後の「全英アマ」(アイルランド)、その翌週の「欧州アマ」(オーストリア)へ、米国アーカンソーからスコットランド合宿を経て向かっていく。
大会最終日のシングルス戦では世界アマチュアランク8位のチャンドラー・フィリップスに敗れたが、その表情は清々しかった。「レベルの高い舞台で一週間プレーできて、それでも自信になるような場面も多かった。すごく良い一週間を過ごせたと思います」
アマチュアでいることで、世界の同世代のトップ選手たちとぶつかりあえる。そこにあるのは賞金ではなく名誉や連帯、そして純粋なゴルフの楽しさだ。(アーカンソー州リトルロック/今岡涼太)
※海外メジャー大会の主なアマチュア出場枠
<マスターズ>
全米アマ1位と2位、全英アマ1位、アジアアマ1位
<全米オープン>
全米アマ1位と2位、全英アマ1位、マコーマックメダル受賞者(全米アマ終了時の世界アマチュアランク1位)
<全英オープン>
全米アマ1位、マコーマックメダル受賞者、アジアアマ1位、全英アマ1位、欧州アマ1位
今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール
1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka