米国男子ツアー

【WORLD】タイガー・ウッズが辿る道

2013/02/12 12:23

Golf World(2013年1月14日号)texted by Jim Moriarty

これまで積み上げてきたタイガー・ウッズのメジャー通算勝利数は14。その先は・・・

昨年のウッズに欠けていたものは名声、或いは以前よりも創造的な試合が出来なくなった能力だったとシャンブリーは主張する。もしくは加齢に伴う衰え、またはそれよりも複雑な理由があったのかもしれない。33歳の時にアメリカ独立宣言を書いたトーマス・ジェファーソンは、バージニア州知事時代の30代後半に社会から不名誉を着せられ、厳しい目で見られ苦しい時期を過ごした。英国軍に追われる始末と、結婚生活を失うはめになったことでは大きな差があるものの、名誉回復と償いという観点では、21世紀も18世紀もさほど大きな差はない。作家ジョン・ミーシェムは著書“トーマス・ジェファーソン:The Art of Power”で次の一節を記している。「ジェファーソンは自身の経験により、苦境の中に平和を見出すしかなかった。一点も汚れの無い完璧な社会イメージが崩壊したという現実を直視せねばならなかった。仮に過ちや失敗の無い人生など意味を成さないと認めていなければ、再び表舞台に返り咲くことはなかっただろう」。

競技から距離を置いていたニクラスだけに、復活に関しては自論があるという。『Golf&Life:ジャック・ニクラスwithドクター・ジョン・ティケル』の中で彼は、「私が経験したようにゴルフからしばらくの間離れ、トラウマに苦しんでいたら、もう一度自分のスタイルを心身、そして技術的にも作りなおさないといけない。ショットが上手くいかず、好成績を収められていない期間は、良いラウンドを過ごすのは難しいだろう。新たな自分に慣れていないのだから。自分がどうプレーしていたかを覚えていないわけだから」と述べている。

「精神的ではないというかもしれないが、精神的な要素は大きい。大胆で、強い気持ちを取り戻さないといけないんだ。コースに立って、ピンフラッグを睨み、ショットを決める。人によっては、以前よりも精神的に強くなる必要がある。特に再スタートを切る場合はね」。

ウッズの友人でもあるノタ・ビゲイIIIは、ニクラスの言うような進化をウッズの中に見て取れると話す。「彼が経験してきたコース外での混乱、スキャンダルをタイムラインとして図に表してから、今の彼のパフォーマンスを評価すべきだ。彼は自分の人生を再構築し、スイング改造にも取り組んでいる。こんなにバランスを取るのが難しい事柄はない。復帰初年度は酷い成績だったけれど、今では安定して世界No.1争いに絡めている。これからはプレーの質を上げていく必要はさほどないと思う。ゴルフは感情に左右されるスポーツ。肉体的に恵まれていたとしても、内面やメンタルに関する問題は克服できないから」。

ウッズがニクラスの記録を更新するのに時間がかかると見ている人は少なくない。しかし、彼が再びメジャー大会で優勝する実力がないと誰が信じ切れるのだろう?ゴルフとプライベートの両方で継ぎ接ぎだらけとなった人生を経験したものの、ウッズなら必ずや屈辱の副作用から脱するはずだ。罪滅ぼしも済み、必ずや再び表舞台で輝ける日が来るだろう。バスとの衝突事故により自身を失ったベン・ホーガンの状況とは違う苦難をウッズは体験してきた。当然のようにトラウマも経験してきた。これから迎える競技人生こそ、彼の驚くべきキャリアの中で最も魅力的な時期となるだろう。完全復活を遂げ、ニクラスのメジャー記録更新に燃える。第一の家族にとって、自分の父親アールよりも良い父親になろうと努力する度に過度なプレッシャーもかかる。自分の将来に恐れを感じていないライバル達との戦い、そしてワイルドオーツの茎のように弱くなった左膝というハンデも抱えているのだ。

ウッズ自身は、何が何でも自分の行いを許さない考えを持つ人間がいると理解している。仮にメジャー1勝、或いは5勝を達成したとしても、過去を消し去るには十分ではない。しかし勝利が苦痛を少しは和らげてくれるはずだ。アメリカは2度目のチャンスを与える国。ウッズ自身が、自分に大記録を成し遂げるだけの能力があると確信さえすれば、世界は彼のもとから離れたりはしない。

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