【WORLD】タイガー・ウッズが辿る道
Golf World(2013年1月14日号)texted by Jim Moriarty
フォーリーの考えによれば、優勝争いに加わったことこそが、今後の未来よりも重要だった。「"重要”という表現はあくまでも飾り。ただ、2012年に我々が到達しておきたかったことではある」とフォーリーは語る。ウッズのゲームにおいて失われるべきものでなかったこととは、PGAツアーでの牽引力。背中の負傷に苦しんだスティーブン・エイメスの再起を手助けしたフォーリーならではの考え方だろう。
フォーリーは言う。「私が何よりも重視したのは、タイガーが再びケガをしないこと。もしくは負傷寸前の状態にならないことだった。これは非常に重要で、身体の構造上、彼の状態は昨年よりも有能ということになる。私は短期間だけを見据えているわけではない。これは大きなプロジェクトなんだ。今後何年も先を見据えている。その為に膝、背中、首を保護することは大事」なのだと。しかし、時に変化は危険なリスクを生じさせる。1920年代にジーン・サラザンが実験の末に自分のゴルフを見失ってしまったように。
今ではフォーリーの仕事に対し批判的な意見を言う者はいなくなった。それは、ウッズがフォーリーとの契約を延長したことよりも、ゴルフチャンネルのブランデル・シャンブリーのコメントが2012年を通して柔らかくなっていったこと、そしてウッズが未だに勝ち続けている実績を見れば明らかだ。
「私はショーン・フォーリーを正当に評価している」とシャンブリー。「彼は非常に効果的で、美しいスイングフォームを指導している。誰にでも出来ることはないがね。私が何よりも驚いているのは、タイガーが過去に3度もスイングを変えて、それぞれの変革期で素晴らしい実績を残している点。ゴルフ史上、過去にそんなことをやってのけた人物はいない。過去の一度もだ。彼は自分のスイングを3度も変えている。中には4度変えているという意見もあるが、そのいずれの時も彼はナンバー1に返り咲いている。ただ残念ながら、彼は2005、06、07、08、09年のような状態には戻らないだろう。ましてや2000年の時の状態を感じられるまでにもならない。以前私が言っていたように、彼は良い時の半分くらいの状態だ。それでも他の選手と比べれば倍以上と思っていたのだが、ロリーという才能の登場によって、その考えは間違っていたと気づかされた」。
シャンブリーは続ける。「ファンはいつだって完璧さを求める」、「ショーンはあらゆる知識を持っている。それは間違いないことだ。彼らはドライバーショットについて多くを語るが、現代のゴルフではドライバーショットが良いゴルフをプレーすることに繋がるわけではない。現代のゴルフでベストなドライバーショットを打つ選手は、皆スイングが美しい。グリーンに乗るボールも美しい軌道を描く。ただ、彼らの左手首は曲がった状態で、そうなるとグリーンに乗せるのは難しくなってしまう。それにショートアイアンの精度だって、ドライバーショットと比較すると悪い。ラフから球を出すのが得意ではない」と。
フォーリーとウッズを批判する筆頭格はシャンブリーだろうが、ハンク・ヘイニーも同様にウッズを批判する側にいる。「データを見ると、タイガーのプレーには穴がある。距離感のコントロールは間違いなく彼の弱みだろうし、バンカーの対応も比較的悪くなっている。一昨年よりも昨年の方がフェアウェイをキープ出来ていたが、それは飛距離を犠牲にしてティショットでアイアン、或いは3番ウッドを使う頻度が増えたから。それよりも注目すべき点は、今までのウッズなら考えられないようなショートパットを時折ミスしていること」と「選手は戦績次第」という考えの信仰者ヘイニーは語る。「過去3年のデータを振り返ってみると、タイガーは3勝を挙げている。今後12勝、その内の5勝はメジャー大会かもしれないが、その可能性は極めて低い。過去のように多くの大会で優勝し始めてこそ、メジャー優勝が近づく」。
優勝は簡単なことではないように、記録に到達するという偉業達成は更に困難を極める。ヘイニーは語る。「ジャックにとって最後となったメジャー優勝を果たすまで、彼は長期のスランプに苦しんだ。他者の通算成績に並ぶことよりも、新たな記録を樹立する方が明らかに難しい。タイガーにとって次のメジャー優勝は造作もないことだろう。しかしニクラスの記録に並び、彼の記録を更新することが最も難しい」。