【WORLD】タイガー・ウッズが辿る道
Golf World(2013年1月14日号)texted by Jim Moriarty
タイガー・ウッズはかつてのように他を圧倒する姿を取り戻すことはないだろう。だが2013年は彼のキャリアの中で、最も魅力的な1年となるかもしれない。
昨年の不調はある種、ミステリーだった。しかし今年のタイガー・ウッズは期待に溢れている。ジャック・ニクラスの持つメジャー大会優勝記録を更新するかどうかは別として、はっきりと断言出来ることは、バックナインでウッズが見せる王者としての風格、才能は、最初から彼に備わっていたものであり、否応なしに周囲の注目を集めてしまうということだ。それらは浮き沈みが激しい前半の結果、そして3度目となるスイング改造の効果と同様に際立つと言える。
時間とは若さに味方するものだ。23歳の新鋭ロリー・マキロイをみると、過去10年から15年の間、ウッズだけが持っていた、ずば抜けた才能を持っていることがわかる。彼にとってはいかなるチャンスも重要だ。そしてゴルフ史上類を見ない才能の持ち主であるウッズにも、マイケル・ジョーダン、ベーブ・ルースがそうだったように、神から与えられたギフトに賞味期限がある。先月、自身の記録ばかりが大きな存在になっているジャック・ニクラスと面会する機会があったが、73歳の老人らしく歩き、身体も少し縮んだように見えた。フロリダのジュピターにあるベアーズクラブのグリルハウスに現れ、最近では180ヤードしか飛ばせなくなったとぼやく始末だ。
全てのゴルファーにとって、4月、6月、7月、8月に開催されるメジャー大会で優勝する確率は等しくある中、ウッズは、かつて簡単に成し遂げようとした不朽の記録達成への野心に満ちている。複雑な事情により絶対的な地位が崩れたからこそ、2013年にかける気持ちは他の誰よりも大きいのだろう。そう、新たなソウルメートであるマキロイよりもだ。キャリア終盤だからこそハイペースで事は進むもの。歴史を作ってきたウッズは、いずれ誰かに取って代わられる日が来ることを理解している。自分が勝ち取ってきたものを分け与えるということをだ。
先日ウッズに話を聞くと、「メジャー大会を勝った時の感覚ならわかる」と語ってくれた。「ずっと心の中に残っている感覚で、もう一度味わってみたい。最終的な目標はジャックが達成したメジャー通算18勝だけれど、一度に4大会で優勝するなんて不可能。次の優勝がまずは大事なんだよ」。
ウッズにとって、ニクラスは単なる目標ではなく、物差しでもある。既に膝の靭帯はボロボロの状態で、ジャックと同年のキャリアを送れるかはわからない。ジャックは現在のウッズの年齢でもある37歳以降にメジャーで4勝。最後にマスターズを優勝したのは、なんと46歳のことだった。野球で例えるならば、あと40打席あるとして10打席に1本ホームランを打つペースでなければ、偉大なニクラスには追いつけない。まず考えやすい例としては、フィル・ミケルソンの(37歳以降の)キャリアに追いついてから、ジャックという流れになるだろう。しかし、これだけは忘れるわけにはいかない。我々が問題にしているのは、誰であろうウッズなのである。まだスイングの修正に取りかかっていなかった時期、つまりプロ転向後ツアー参戦から4年以内に5勝を挙げた男についてである。
しかしながら、彼はもう昔のウッズではない。
「周りにはよく『タイガー・ウッズは復活したと思うか?』と聞かれる」とは、CBSのデイヴィッド・フィハーティのコメント。彼は全米オープンでマキロイが18番ホールでワナメーカーを抱えた姿を遠目に見ていた。「どう復活したと言うんだい?タイガーは、歴史を変えた時点の彼に戻ったわけではないし、彼と同じように歴史を塗り替えるような選手が登場するまでには1世紀はかかるかもしれない。これだけのスタンダードを常に保持すること自体が異例」。そう、その歴史を作った張本人にとっても異例のことなのだ。