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【WORLD】カウベルの高らかな響き K.ブラッドリーの大躍進

Golf World(2011年12月19日号)texted by Jim Moriarty

無名な存在から世界ランク30位へ大躍進。このニューイングランド生まれの新人は、2011年、パット叔母さん直伝のタフネスを見せ、功名を成した。

人気番組「サタデー・ナイト・ライブ」のコントで、俳優クリストファー・ウォーケンが「ああ、熱がある。この治療薬は、もっとカウベルを打ち鳴らすことだけだ!」と叫び、ウィル・フェレルがカウベルを乱れ打ちして以来、2011年のキーガン・ブラッドリーが大躍進するまで、この手のひらサイズの楽器が、ここまで注目を浴びたことはなかっただろう。

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ひょろっと背が高く、ダークな髪と青い目を持つ、どういう訳か過小評価され、祖母が打ち鳴らすカウベルの大ファンだったブラッドリーは、ニューイングランドで名声を誇るブラッドリー家の血脈に、素晴らしいオマージュを捧げた。ドラムスティックの代わりにベリー・パターを持ち、アトランタアスレチッククラブで開催された全米プロゴルフ選手権で、「星条旗よ、永遠なれ」を高らかに響き渡らせた。もしパット叔母さんの件、裏庭の件、殿堂の件、その他諸々を知らないようだったら、グーグルで検索してみよう。

さらに興味をそそられるのは、カウベルがキーガンのために鳴らされ続けるかどうかだ。ルーキーでPGAツアー勝利を挙げるのは、素晴らしい功績だ。アトランタでジェイソン・ダフナーを下した全米プロを含め、2度のプレーオフで2度の勝利を飾った(GDO編集部注:ブラッドリーは同年5月のHPバイロンネルソン選手権でプレーオフを制してツアー初勝利をマーク)のだから、これで終焉を飾ってもいいくらいだ。だが、初めて参戦したメジャー大会で優勝とは…。

さて、ベルの一件に関しては、「ノートルダムの鐘」に登場する鐘撞き男カジモドに任せておこう。今こそ、ブラッドリーはゴルフを辞めるべきなのだ。何しろ、これからメジャー大会への出場を重ねる限り、勝率は下がる一方なのだから。MLBボストン・レッドソックスの本拠地フェンウェイパークで始球式をした人で(縫い目をしっかり握ってファストボールを投げた)、打率10割を誇る人が何人いるだろうか?

年間最優秀選手ではなかったが、12カ月前には、投票に名前が挙がる可能性がどれほどあっただろう?「去年の今ごろは、自分のキャリアの中でも気が狂いそうな時期だったんだ。ソニー(オープンinハワイ)に出掛ける前の日は、もう最悪だったね。すごく神経過敏になっていた。十分に準備が出来ていないんじゃないかって心配だったんだ」とブラッドリーは言う。初めに出場した10試合のうち、トップ10入りしたのは1度だけ。そして、バレロ・テキサス・オープンで、もう1つの世界ではスティーブ・ヘイルと名乗るキャディのペプシに出会った。「あの大会でトップ10入りしたんだ。以来、結果として表れるようになったんだ」。そう語るブラッドリーは、ニューイングランド名物チャウダーのように仕込んだ自らのゴルフの欠かせない要素として、ボブ・ロテラ博士とジム・マクリーン先生の名前も挙げた。

ブラッドリーは、プレジデンツカップのメンバーには選ばれなかったかもしれないが、アメリカ代表として参加したプレーヤーの誰かと、2011年シーズンの成績を交換したいかと聞かれれば、キーガンは丁重にこう答えるだろう。「いや、誰とも交換しようとは思わない。だけど、選ばれたプレーヤー全員が代表にふさわしい人物だと思う」。

ブラッドリーがPGAツアーで勝利したことは、ルーキーであること、ロング・パターの使い手であること以上の意味を持つ。25歳のブラッドリーにとって師匠のような存在であるフィル・ミケルソンが、2010年マスターズで感動の優勝を果たして以来、アメリカ人プレーヤーがメジャー王座から遠ざかっていた事実に終止符を打ったからだ。

お子様ランチのおまけのように、チャール・シュワルツェルはオーガスタ・ナショナルでバーディを連発し、ロリー・マキロイは全米オープンで数々の記録を打ち立てた。だが、2011年にゴルフコースで起きた目を見張る出来事として、メジャー大会の69番ホールで、トリプルボギーを叩きながらもそれを凌ぎ、優勝するという偉業以上のものはないだろう。こんな大失敗は、ジャコウ牛を無意味に殴りつけるほど、常軌を逸したものだ。

「2位タイになるため、ただグリーンに乗せたかったんだ。もうダメだと思ったよ」と、ブラッドリーはパー3の15番ホールで叩いたトリプルボギーを振り返る。「その前週のWGCブリヂストン招待の最終日バックナインで調子を落としてしまい、すごく傷ついた。本当に(心に)痛かったんだ。だから、怖かった。同じ事をまた繰り返したくなかったし、自分の代名詞にしたくなかった。だから、16番ホールでバーディを決めた後、トーナメントで優勝することなんか忘れていて、トリプルボギーの後でバーディを決められた事実がすごく誇らしくて、信じられない気持ちだったんだ」。

両親が離婚した後、ティーンエイジャーだったブラッドリーは、プロゴルファーだった父マークと一緒に、ティン・カップIIと呼ぶトレイラーで6カ月ほど暮らした。「家には、自分の部屋にテレビとテーブルがあった。その上にワナメイカー・トロフィーを、隣には父のツアーバッグとトレイラーの写真を飾っていたんだ」とブラッドリーは話す。

カウベルはもちろん、ゴルフ界でアンコールを飾ることは、至難の業だ。特に、カウベルの逸話を持つブラッドリーは尚更だろう。「みんな同じようなことを言うんだ。自分にプレッシャーを掛けすぎずに、プレーすることを楽しみ続けるようにって。『言うは易く、行うは難し』だけどね」。だが、大災難のドタバタ劇を演じながらも優勝すること以上に難しいものはないだろう。もしかしたら、楽しんでいたのかもしれないが。ともかく、4月まで、あるいはそれ以上、ブラッドリーはゴルフ界で“打率10割”を誇る唯一の男であり続ける。

米国ゴルフダイジェスト社提携
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