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【WORLD】 L.トンプソン 天才少女の素顔〈1〉
Golf World(2012年1月30日号)
オレンジカウンティ・ナショナル・ゴルフ・センターでのデモデーに参加するアレクシス・トンプソンが、父親の運転するフォード・エクスペディションから降りると、そこにはVIP用の送迎車が待機していた。
先月、オーランドで開催されたPGAマーチャンダイズショーに出席する為、フロリダ州コーラルスプリングスから約3時間のドライブの最中、LPGAツアーのスター候補は、後部座席で眠るか、ヘッドフォンでヒップホップを聴いていた。そこには、普通の16歳の少女が家族とのドライブを楽しむかのような姿しかなかった。
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しかし、ショーのメインイベントには普通の16歳では味わえないような興奮が盛り込まれていた。今シーズンは彼女にとって初めてのLPGAツアー開幕というだけではなく、2月10日に17歳の誕生日を迎えたトンプソンの初のツアーフル参戦は、ゴルフ市場にとっても有益だった。昨年9月、「ナビスターLPGAクラシック」で史上最年少優勝での快挙を達成したトンプソンは、その後12月にはL開催された欧州ツアー「オメガ・ドバイ・レディースマスターズ」でも優勝。そしてプロとして挑むルーキーシーズン、彼女はアメリカ出身選手としては、1994年にベス・ダニエルが受賞して以来初となるLPGAプレーヤー・オブ・ザ・イヤー受賞を目標に掲げている。そして、彼女にとってアイドル的存在であるナンシー・ロペスのようにセンターステージに立ちたいと思っているのだ。
注目度の高さを証明するかのように、3日間に及ぶショーの中心にいたのは、間違いなくトンプソンだった。父親のスコットさんは言う。「娘は人に囲まれるのが大好きなんです。駐車場に停まる車の台数を見た瞬間、目を輝かせていましたよ。
コブラプーマの展示場は円形の練習場から500ヤード離れた場所にあった。“レクシー”は歩きながらサインや写真撮影に応じたが、両親やエージェント、そして関係者達は群がるファンを押さえ、時間ばかりを気にしている。身長180cmを超えるトンプソンは身を屈め、待っていたカートに乗り込む。ピンクのシューズが髪止めの色とマッチしていて可愛らしい印象を与えた。
「人と交流するのが大好きなの。ファンに囲まれて、サインに応じたりするのも大好き。ファンがいなければ、私達が表舞台に立つ必要はないでしょ」。
トンプソンが到着すると、レッドブルMXTイベントトラックからDJがかける小気味良いダンスミュージックが聴こえ始め、アメリカとヨーロッパからかけつけたというレッドブルの重役2人がトンプソンと挨拶を交わす(彼女はコブラプーマ、レッドブル以外にも、ロレックスとスポンサー契約を結んでいる)。するとレキシーは突然、今度は観客席に紛れ込んだのだ。「娘にとっては人と接する場」と母親のジュディーさん。
その姿は、むしろ至って自然に見えた。昨年度の最終戦「CMEグループタイトルホルダーズ」でのレセプションの席上でも、レキシーはプロアマの中で誰よりも最後まで会場に残り、LPGAチーフコミュニケーションズオフィサーのクレイグ・カンを感心させた。ドバイで優勝した後も、2時間もファンからのサインに応じていたのだ。
それこそ今の彼女が実行していることで、常に笑顔を振りまき、サインに応じる。「娘は決してファンのリクエストに応じるのを嫌がりませんよ。絶対にね。仮にトーナメント最終日にどういう順位で終わろうと、必ずコースにはいるでしょう。サインを求めるファンが1人もいなくなった時こそ、コースを出るタイミングですよ」とスコットさんは話す。
今回のファン交流の場にトンプソンが参加した理由は、ゴルフスイングとボールの軌道を分析する機械であるトラックマンの分析を受ける為だった。ウォームアップを済ませると、彼女が叩きだす数値にアナリストたちも驚くばかりだった。クラブヘッドスピードは毎時105-107マイル(約47m/s)、ボールスピードに至っては毎時153-155マイル(約68m/s)を計測。そして一時はドライバーを使って5球連続して300ヤードオーバーを記録し、平均キャリーは270ヤードだった(2011年の9大会のアベレージでは270ヤードを記録。この数字は規定に達していればツアートップに相当する)。
トンプソンは注目されることを好み、熱狂的な観客の前でボールを打った後の快感に酔いしれるという。デモスペシャリストのマイケル・ハーンの分析によれば、彼女の打ち出し角とスピン量だと、軌道が“ナックルボール”のように変化することもあるという。これを聞いた本人は、「パパを心配しちゃう」と答えた。そして「真っ直ぐ綺麗な軌道で飛んでいけば良いの。それが何よりも大事なことだから」と続けた。
トンプソンはその後、14社ものメディアとの1対1インタビューに応じ、そしてNBCの特別番組の為、更にボールを打ち込んだ。イギリスで放送されているGolfing Worldの司会者を務めるカラ・ロビンソンは、「本当に信じられない。まだ16歳でしょ?到着するなり会場中の注目に対応する姿はファンタスティック。人目に付くのに慣れている。この業界ではどれだけ早く注目される環境に順応するかがとても重要だけれど、彼女は非常に有能なブレーンに囲まれている。16歳の少女とは思えない」と、その対応に驚いていた。
父スコットさんによれば「16歳にして25歳のような振る舞い」だそうだが、マネージャーのボビー・クロースラー(Blue Giraffe Sports)からすれば、時には16歳になってもらいたいとのこと。それ故に、トンプソンはメディアトレーニングを止めた。つまり、メディアからの質問にも用意された答えをするのではなく、「より本人の感情や性格が表れる」ようになったのだという。
その日のイベントが終了する午後になって、ようやくトンプソンの素の部分が出た。トンプソンが15歳でのプロ転向後にスポンサー契約を結んだレッドブルのライアン・レイモスは、ボール遊びで彼女に挑戦した。レイモスに勝ち目は無く、レキシーは4連続で30フィート離れた穴にボールを入れてみせ、得意気に振る舞った。この対抗意識こそ、2人の年上の兄達との遊びで彼女が学んだこと。29歳の兄ニコラスは2006年からPGAツアー、ネイションワイドツアーに出場しており、19歳の兄カーティスはルイジアナ州立大に進学した。
この光景を見ていたコブラプーマゴルフ代表のボブ・フィリオンは、「以前彼女に、子供の頃に兄達とバックティーからゴルフを始めた時のことを聞いた時があった。それを聞いたら、彼女が何故あれだけ遠くにボールを飛ばせるか理解出来た。兄達と競い合うためには、遠くに飛ばせるようになるしかなかったんだ。しかしながら、まだ16歳とは思えない振る舞いや対応の仕方をすると思う。人に注目される業界の中でも異例中の異例だと思う」とコメント。また、「女子ゴルフ界の超新星は、まさしく彼女のことだ。どこに行っても、人々は彼女がボールを飛ばす姿を見たがるだろうからね」と続けた。
米国ゴルフダイジェスト社提携
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