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<佐渡充高の選手名鑑 84>ブライアン・デービス

■ オネスト(正直)・ブライアン

ブライアン・デービス(イングランド)の名が、一躍知られるようになったのは2010年「ベライゾンヘリテージ」だった。デービスは最終日トップのジム・フューリックに1打差2位でスタートし、最終18番で4メートルのバーディパットを沈めて通算13アンダーに並ぶと、勝負はプレーオフへと持ち越された。優勝を目指して、2005年から米ツアーに挑戦し続けている彼にとって、初タイトルの懸かった絶好のチャンス到来だった。しかしプレーオフ1ホール目、第2打をグリーン左のウォーターハザードへ入れてしまうが、幸運にも、引き潮で海水がなくなんとか脱出。対してフューリックの2打目はグリーンオーバーし、簡単にパーを獲れる状況ではなかった。デービスのハザードからの3打目はグリーン右側へややオーバーしたが、勝負の行方はまだわからない。次の瞬間、デービスは「バックスイング時に、ヘッドが何かに当たった感じがある」と自己申告。ビデオ判定の結果、枯れ枝に触れていたことが判明し2打罰とした。それは、デービスが申告しなければ誰も気がつかなかったことだった。

この2打罰により、初優勝の夢は幻と消えたが、デービスは「あたり前のことをしただけ」と潔かった。優勝という悲願のタイトル、約1億円近いビッグマネーを逃したが、彼の言動は多くの人の心の中に清々しい記憶を残し、結果がすべてではない生き方があることを示したのだった。

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■ 高校の道徳の教材に

この出来事の反響は大きかった。しばらく後に、テキサス州にあるサム・ヒューストン高校のエリザベス・ホッジス教諭からデービスの元に手紙が届いた。自己申告のエピソードを道徳の授業の教材にしたい、そして5月に同校の地元テキサス州ダラスで開催される「クラウンプラザインビテーショナル」に生徒と一緒に応援に行きたいという申し出だった。もちろんデービスは快諾。先生は授業で取り上げ、期末試験中にも関わらず、クラスの生徒全員を連れ、大会3日目にコースを訪れた。その応援の力は絶大で、デービスは3日目を終え、通算16アンダーでブライス・モルダーと首位に並んだ。しかしザック・ジョンソンに逆転され最終結果はまたもや2位、優勝はおあずけとなった。

■ 高校へ進学せず15歳でプロの道へ

デービスは1974年8月2日、英国ロンドンで生まれた。プロを目指したのは15歳の時、高校へは進学せずに練習に打ち込む日々を送った。17歳で渡米し、フロリダ州を中心にしたミニツアーで腕を磨いた。その後、ホームとなるヨーロピアンツアーに参加し、2003年「プジョー・オープン」で初優勝を飾ると、翌2004年の「ANZ選手権」で2勝目を挙げた。同年12月には、米PGAツアーのクオリファイングスクールを受験、トップ合格を果たし、2005年から米PGAツアーへの挑戦が始まった。

身長180センチとツアーでは平均的な体格だが、今季は平均飛距離277ヤード、フェアウェイキープ率は67%を超え、16位にランクインした。ここまで2度のトップ10入りフィニッシュで、今季ベストフィニッシュは「シェル・ヒューストンオープン」の6位。爆発力はないが正確性でじっくり勝負するタイプだ。

かつてトム・カイト(63)も、自己申告で勝機を逃し“オネスト・トム”と呼ばれた。しかし42歳で遂に、メジャーの「全米オープン」で、ジェフ・スルーマンニック・ファルドニック・プライスら強豪との接戦を制し、劇的優勝を飾った。彼が行ってきた数々が、恩恵としてこの勝利に現れたと、このとき誰もが感じたものだ。この事実をデービスに重ね、いつか記録にも残る活躍をと、応援せずにはいられない。

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佐渡充高(さどみつたか)
ゴルフジャーナリスト。1957年生まれ。上智大学卒。大学時代はゴルフ部に所属しキャプテンを務める。3、4年生の時に太平洋クラブマスターズで当時4年連続賞金王に輝いたトム・ワトソンのキャディーを務める。東京中日スポーツ新聞社を経て85年に渡米、ニューヨークを拠点に世界のゴルフを取材。米国ゴルフ記者協会会員、ゴルフマガジン「世界トップ100コース」選考委員会国際評議委員。元世界ゴルフ殿堂選考委員。91年からNHK米ゴルフツアー放送ゴルフ解説者。現在は日本を拠点に世界のゴルフを取材、講演などに飛び回る。

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