クーチャー、かつての苦闘は過去の記憶に
2013年 フェデックス セントジュード クラシック
期間:06/06〜06/09 場所:TPC Southwind
<佐渡充高の選手名鑑 80>D.A.ポインツ
■ ツアー初の「59」を記録した大会
今大会は『メンフィス招待オープン』として1958年にスタートした。そして一躍脚光を浴びたのは1977年、同大会でアル・ガイバーガーが1イーグル、11バーディ、怒涛のプレーでツアー史上初の50台“59”をマークしたことだった。当時の会場はテネシー州メンフィス郊外のコロニアルCC。1989年から現在のTPCサウスウィンドに移り、今年で25年目を迎える大会だ。この地の気候は、夏季は高温多湿。体力と体調管理も好プレーの大切なファクターとなる。コースは全体的にフラットではあるが、ウォーターハザードが多く、特にバックナインでは6ホールにハザードが絡み、ショットの絶妙なコントロールが要求される。グリーンも小さめでアンジュレーションも強く、高度なパットの技術も不可欠だ。今週は突如パットとパターが好調に転じ、2勝目を飾ったD.A.ポインツに注目しようと思う。
■ 母親の30年物ビンテージパターで2勝目!
2013年シーズン開幕から9試合に参加し、予選通過は2試合のみ。それも60位代と絶不調のポインツは、特にパットが決まらず意気消沈していた。ところが3月に行われた「シェル・ヒューストンオープン」で別人のごとく決まりだしたパッティング。大会初日は、スタートの10番から5連続バーディを決めるなど、5メートル前後のパットを次々に沈めて「64」をマークし、ツアーにおける自己ベストタイで首位に立った(その時のパット数は“23”)。前半のインコースでは7ホールで1パットと、記録づくめのプレーだった。突如、好調に転じた理由のひとつはラッキーパターにある。ガレージの奥から取り出し、会場に持参してきた彼の母親メアリー・ジョーのパターを使ったことだった。25年前、彼が12歳の時に、母親のバッグから拝借した1980年代初めのヴィンテージ級ピン社のアンサー。今までそのパターでイリノイ州アマに3回優勝、ウェブドットコムツアーでも2勝を挙げた。優勝記念にピン社からゴールドにコーティングした同モデルのパターを贈られ、現在彼は2本を所有している。不調脱出の最終アイテムとして、お守りのような思いをこめて試合へ持ってきたのだった。会場に来ていたピン社のツアーレップが、タングステンのウエイトを装着するなどチューニングを施し、母の30年物パターは2013年バージョンに見事アップグレードしたのだ。最終日までパットの好調は続き、同大会で優勝を飾ると、2年間のシード権と「マスターズ」の出場権を獲得など彼に幸運をもたらした。この事実に彼は思わず「このパターには何か魔法のようなものがあるのかも・・・」と言ったのだった。
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■ ウッズに続き第2号 ストリッカーのアドバイスで復活!?
そのパターを使う決心をしたきっかけは、思わずこぼした愚痴からだった。「シェル・ヒューストンオープン」の会場で親しい選手仲間クリス・ストラウドにパットの不調をこぼしたところ、ラマー大学のゴルフ部コーチ、ブライアン・ホワイトを紹介された。ポインツは練習グリーンで持参していた何本かのパターをあれこれ打ち、意見を求めたところホワイトは「ママのパターで打っているのが一番良い感じ」との感想。その一言に彼もピンと閃き、実戦で使うことを決めたのだった。さらに母校イリノイ大学の先輩で、パットの名手、スティーブ・ストリッカーのアドバイスも効果絶大だった。ストリッカーはタイガー・ウッズを世界ランク1位に返り咲かせた陰の立役者と言っても良いほどで、ウッズは「今後は僕のパットのコーチになってほしい」と言ったほどだ。そのストリッカーが、後輩ポインツに「パットはゴルフの80%を占めるほど重要」と、技術面だけでなく練習配分までをアドバイスした。するとウッズ同様、魔法のようにパットのストロークが変わっていったのである。
■ 優勝はいつもDramaticで Amazing!D.A.ポインツ
ポインツは1976年12月1日、イリノイ州ペキンに生まれ、現在はフロリダ州オーランドに居を構えている。本名はダレン・アンドリュー・ポインツだが、生れてすぐに両親はイニシャルのD.A.と呼び、今に至っている。親友たちは「地方検事」(DistrictAttorney)と茶化して呼ぶこともあるそうだ。イリノイ大学での専攻はスピーチ、コミュニケーションだけあって楽しく朗らかな性格だ。PGAツアーは2005年がルーキーイヤーで、初優勝は6年後2011年の「ペブルビーチ・ナショナル・プロアマ」だった。最終日14番パー5で3打目を直接決めるイーグルで単独首位、勢いに乗りそのまま逃げ切った。しかもプロアマ戦でペアを組んでいたコメディアンのビル・マーレーとのスコアでも優勝。未勝利から一転、一日にダブル優勝という快挙に「GoodPoints」とヒーローになった。エルビス・プレスリー、ジャスティン・ティンバーレイクゆかりの地、テネシー州メンフィスでまたもDramaticでAmazing なプレーを見せてくれるか楽しみにしたい。
- 佐渡充高(さどみつたか)
- ゴルフジャーナリスト。1957年生まれ。上智大学卒。大学時代はゴルフ部に所属しキャプテンを務める。3、4年生の時に太平洋クラブマスターズで当時4年連続賞金王に輝いたトム・ワトソンのキャディーを務める。東京中日スポーツ新聞社を経て85年に渡米、ニューヨークを拠点に世界のゴルフを取材。米国ゴルフ記者協会会員、ゴルフマガジン「世界トップ100コース」選考委員会国際評議委員。元世界ゴルフ殿堂選考委員。91年からNHK米ゴルフツアー放送ゴルフ解説者。現在は日本を拠点に世界のゴルフを取材、講演などに飛び回る。
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