デイリーラップアップ:クラウンプラザインビテーショナル最終日
2013年 クラウンプラザインビテーショナル
期間:05/23〜05/26 場所:Colonial Country Club
<佐渡充高の選手名鑑 78>ビリー・ホーシェル
■ ショットメーカーのホーシェル、“ホーガンの庭”でどんなプレーを見せる?
会場のコロニアルCCはドッグレッグが多い上、樫やクルミの木の枝がせり出した狭いホールが続き、ホールなりに正確なショットが打てるかどうかが、スコアメイクの鍵を握る。ショットの名手ベン・ホーガンが5勝したことから “ホーガンの庭”と呼ばれ、現在も「ショットメーカーのコース」として知られている。PGAツアーにはショットメーカーの選手は多いが、その中で最も波に乗っている選手を挙げるとすれば、細マッチョのビリー・ホーシェル(26)だろう。4月の「チューリッヒクラシック」で初優勝を挙げ、フェデックスカップランキングでも3位に急浮上。「シェル・ヒューストンオープン」で2位、「バレロテキサスオープン」で3位と絶好調で、いつ優勝しても不思議ではない状態が続いていた。昨年6月の「フェデックス セントジュード クラシック」から、23試合連続予選通過、「ザ・プレーヤーズ選手権」で予選落ちを喫するまでは、現在進行している最長記録だった。平均飛距離、フェアウェイキープ率、パーオン率を総合評価した「ボールストライキング」というランキングは10位。バーディ奪取率1位と大ブレークだ。ホーガンが5勝した1959年から半世紀以上の年月を経て、2013年は26歳のショットメーカー、ホーシェルがどのようなプレーを展開するのか楽しみだ。
■ 挫折、不安を乗り越え会得した「絶対にあきらめない」スピリッツ
勝てそうで勝てない状態から一気にブレークしたビリー・ホーシェル。しかし、初優勝を達成するまでの道のりは苦難の連続だった。フロリダ大学を卒業後、その年の12月にプロ転向を果たすと、年末のQスクールを経て一発合格。翌2010年のPGAツアーへ参加を決めたが、喜びも束の間、左手首の故障で4試合しかプレーできず、出場したすべての試合で予選落ちの結果に終わった。3月に手術をした後は、リハビリに専念したため参戦できず、再びQスクールを受験。その年のQスクールでは27位タイで合格し、2011年は初めてフル参戦できたものの、賞金ランク140位とシード獲得はならなかった。そして再びQスクールを経て、2012年の出場権を獲得したものの、シードは獲得できず。4回目のQスクール挑戦は4位で突破し、今季は実質的に3シーズン目となる。誰にも負けない情熱、自信がありながら跳ね返され続けたホーシェルは、プロ転向の際は「初優勝を飾るまで絶対にあきらめない」と誓っていた。ホーシェルは、ケガが完治した今季、ようやく掴んだこのチャンスに「必勝」の夢をついに実現した。
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■ あまりのひたむきさに、先輩、ライバルさえも応援したくなる男
彼は遊びを排除し、すべての時間を練習に費やしゴルフに打ち込んできた。そのひたむきな生き方に、何とか彼を支えなければと、サポーターが次々と現れた。大学の先輩でPGAツアー4勝のクリス・ディマルコは、ホーシェルが大学生の頃から、自身のツアー転戦経験を中心とした実践的なアドバイスを授けてきた。愛弟子のようなホーシェルが、初優勝の際もグリーンサイドで涙を浮かべながら見守り、ハグで喜びを分かち合った。また、大学リーグのライバルだったリッキー・ファウラーも、ホーシェルの優勝に喜びのメッセージを贈った。ホーシェルとファウラーの2人は、同じ2010年にツアーデビューを果たしたが、目を見張る活躍のファウラーに対して、ホーシェルは手術とリハビリを繰り返しての欠場・・・と明暗を分ける船出となった。ホーシェルはファウラーが試合で躍動する姿をテレビ観戦し、悔しい思いとともに再戦を誓い、ファウラーにとって、ライバルの完全復活は、より意欲をかきたてられる嬉しい出来事となった。
■ 友情のキャッチボール
ホーシェルとブラント・スネデカーは同じコーチ、トッド・アンダーソンに師事している。その関係をスネデカーは「師弟を超え家族のようなつき合い」だと言う。昨年8月、アンダーソンの息子で大学生のタッカーが交通事故で重傷を負い、右顔面の運動神経が麻痺する後遺症も残った。タッカーはウェイクフォレスト大学ゴルフ部で活躍する選手で、ホーシェル、スネデカーにとっては弟のような存在だった。退院後も懸命にリハビリに励む彼を励ますために、2人は最高のプレーをしようと誓った。そして今年3月の「ホンダクラシック」2日目、アンダーソンが、歩けるまでに回復した息子タッカーを伴い会場を訪れ、彼らのプレーを観戦した。ホーシェルの妻ブリタニーも付き添い、一緒にホーシェルを応援。ホーシェルはコースに現れたタッカーを見つけ、「こんな奇跡があるなんて!」と感激した。そして互いに「さらに頑張ろう」と誓いあったのである。その直後から、毎試合のように優勝争いというホーシェルの快進撃がはじまった。ホーシェルの初優勝は自身のために、そして大切な人のためにという原動力がもたらした。そして彼の優勝は、タッカーをはじめ、応援してくれたすべての人たちへ大きな喜びをもたらし、友情のキャッチボールとなった。タッカーは今も闘病中で、それがホーシェルの強いモチベーションとなっている。
- 佐渡充高(さどみつたか)
- ゴルフジャーナリスト。1957年生まれ。上智大学卒。大学時代はゴルフ部に所属しキャプテンを務める。3、4年生の時に太平洋クラブマスターズで当時4年連続賞金王に輝いたトム・ワトソンのキャディーを務める。東京中日スポーツ新聞社を経て85年に渡米、ニューヨークを拠点に世界のゴルフを取材。米国ゴルフ記者協会会員、ゴルフマガジン「世界トップ100コース」選考委員会国際評議委員。元世界ゴルフ殿堂選考委員。91年からNHK米ゴルフツアー放送ゴルフ解説者。現在は日本を拠点に世界のゴルフを取材、講演などに飛び回る。
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