「アイリーン」で54Hに短縮、D.ジョンソンが今季初勝利!
2011年 ザ・バークレイズ
期間:08/25〜08/28 場所:プレインフィールドCC(ニュージャージー州)
佐渡充高が簡単解説!初めてのPGAツアー【第十回】
スポーツ大国アメリカでは、ゴルフはどのくらい国民に浸透しているのですか?
ここ最近、アメリカ国民はゴルフというスポーツをよく見るようになりましたね。20年くらい前は、ゴルフの賞金もそれほど高くなかったですし、例えば子供たちがスポーツを始めると言っても、ゴルフという選択肢はほとんどなく、フットボールや、野球、バスケットボール、アイスホッケーが中心でした。この四つがアメリカにおけるメジャースポーツでもありますからね。ただ、グレッグ・ノーマンとか、ニック・プライスなどのアグレッシブな選手が出始めて、“アメリカ”対“インターナショナル”の構図ができあがると、ゴルフ人口が少しずつ増え、アメリカ国民は熱狂し始めました。さらにその最中、フレッド・カプルス、デービス・ラブが出現し、(いわゆるカプルス・ラブ時代とも言われていますが)この2人の出現によって、アメリカでのゴルフファン層の厚さが増したように思います。そしてアメリカのゴルフは強い!というイメージが出来上がると、国民は強い者に惹かれる傾向にあるので、その頃から一層ゴルフ人口が増え始め、1996年のタイガー・ウッズがプロ転向したのを境に大きく変わってきましたね。
タイガー・ウッズは、これまでのいろいろな記録を塗り替えました。それまでプロゴルファーには白人系アメリカ人が多かったけれど、そうではないマイノリティーの人たちがゴルフを始めるようになったことにも大きく影響しています。そのマイノリティーの人たちがゴルフを始めたことによってゴルフ人口は劇的に増えた。ゴルフの浸透度という面でもタイガー・ウッズの存在は、記録や技術にとどまらず本当に大きかったように思います。
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またタイガー・ウッズはゴルフ自体も変えました。それまでは能力があり、好成績を収めている選手たちは、トレーニングもせずに結構太っている人が多かったことは前回もお話しましたね。しかしタイガー・ウッズが出てきたことにより、みんなが筋力トレーニングをはじめて、今ではアスリート体形のゴルファーが多くなりました。ほかのスポーツと同様に体を鍛えて、体を絞って、体力や筋力をつけて、(球を)飛ばして、というアスレチックなゴルフに変わってきている。それまではまだ、プロゴルファーはスポーツマンではあるけれどアスリートではないような…そんなイメージがありましたが、本当にプロフェッショナルのアスリートというイメージに変わりましたね。選手たちがそうなってくると、プロゴルファーはかっこいい!そのイメージの大きな変化により、ゴルフをやりたいと思う子供たちもたくさん増え、憧れのスポーツ、憧れのプロゴルファーになってきたように思います。
私がニューヨークにいた頃、マイノリティーの居住地区ではストリートバスケットボールが流行していました。でもある広告で、そのバスケットボールを、ゴルフクラブに持ち替えてボールを打っている、表現するならいわば“ストリートゴルフ”をやっているようなイメージのポスターがあったのを覚えています。タイガー・ウッズが出てきたころから、そういった子供たちが小さな頃からゴルフを始めてうまくなっていくという地盤ができてきたのかなとも思います。少し前に活躍していたノタ・ビゲイなんかはネイティブアメリカンですね。彼もスタンフォード大学出身で、タイガー・ウッズと同じチームメイトで、PGAツアーでは4勝を挙げている選手です。いわゆるラテン系のアメリカ人や、アフリカ系アメリカ人が子供のころからゴルフというスポーツに興味を持ち、ゴルフを始めたりして、これからもマイノリティーであるアメリカ人のゴルフ人口は増えてくると思いますし、ますます人気は高まっていくのではないでしょうか。
- 佐渡充高(さどみつたか)
- ゴルフジャーナリスト。1957年生まれ。上智大学卒。大学時代はゴルフ部に所属しキャプテンを務める。3、4年生の時に太平洋クラブマスターズで当時4年連続賞金王に輝いたトム・ワトソンのキャディーを務める。東京中日スポーツ新聞社を経て85年に渡米、ニューヨークを拠点に世界のゴルフを取材。米国ゴルフ記者協会会員、ゴルフマガジン「世界トップ100コース」選考委員会国際評議委員。元世界ゴルフ殿堂選考委員。91年からNHK米ゴルフツアー放送ゴルフ解説者。現在は日本を拠点に世界のゴルフを取材、講演などに飛び回る。