ウッズ「69」でカムバック
2013年 全英オープン
期間:07/18〜07/21 場所:ミュアフィールド(スコットランド)
マーク・オメーラ、「ミュアフィールドで時計の針が戻って32歳になった気分だ」
マーク・オメーラは、バッグに荷物を詰め、クラブをトランクに入れ、大会へとプレーしに向かう時、必ずすることがある。それは、ヒューストンの自宅にある、「マスターズ」のトロフィーと「全英オープン」のクラレット・ジャグを、保管ケースから取り出し、しっかりと隠しておくことだ。
銀やクリスタルで出来た記念品はどうでもいい。“金物”なら米国ツアーで16勝、欧州ツアーで4勝、その他チャンピオンズツアーで2勝を挙げ、十分にある。しかし、あの2つのトロフィーは別格だ。「マスターズ」も「全英オープン」も、勢いづいていた98年シーズンに獲得したもので、オメーラにとっては何にも代えがたい品物なのだ。
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「クラレット・ジャグをあの日手にした時…私はしみじみと感じた。残りの人生でどんなことがあろうと、自分の名前が一度はこのトロフィーに刻まれたと噛みしめようとね」とオメーラは語る。「これで、今回再び優勝がもたらされようと、そうでなくとも、夢はかなうときはかなうものだ」。
「全英オープン」の初日、56歳のオメーラがトップ争いに食い込んだ。第1ラウンドを「67」で回り、首位のザック・ジョンソンとは1打差。勝てば、歴史的勝利になる。好位置をキープすれば、二日目や決勝ラウンドの週末に向けて、プレッシャーが未知数のレベルにまで跳ね上がるのは、オメーラもわかっている。恐らくオメーラの妻メレディスを除けば、誰もオメーラが優勝できるとは思っていないのだ。
「まあでも、何が起きても、どんな声を聞こうとも、今日ここにいられることは喜びだ。老いぼれにも夢をもう一度」とオメーラはにんまり笑う。
ターンベリーでは、59歳のトム・ワトソンがプレーオフの末、自身6度目となるクラレット・ジャグを獲りそこねた。グレッグ・ノーマンも53歳にして、ロイヤルバークデールの最終日に「77」を叩くまで、トップ争いで善戦した。オメーラは、あり得ないことはないと知っている。
「今日のようなプレーをすれば、可能性はあると思う」とオメーラ。「ここでは自分が56歳だなんて思わない。32歳になった気持ちでいるよ。たかが1ラウンドでトーナメントを決めたなんて言いはしないさ。そんなはずはないからね。今までに何度も経験している。ここでもね。でも、良いプレーができて嬉しいよ」と語る。「ラウンドを回り、ボールを打つ感触としては、もしかしたら自分が15年前よりもいい選手なんじゃないかと思うことが何度もあったよ。もう若くはないし、わかっているし、パッティングもチップショットも、まあ色々それ程でもないかもしれないが、精度の高いショットもいくつかあった。だから今日ここにいて、『やあ、全盛期のようにいいプレーだったろう』なんて言えるんだろうね」と明かす。
なかでも10番ホールでは、気持ちがこもっていたかもしれない。ちょうど親しい間柄のタイガー・ウッズが、ティオフするところに居合わせたのだ。9番ホールまで終えたオメーラは、5アンダーをマークしていた。オメーラがフェアウェイを下っていくと、タイガーが両親指を立てて、サムズアップをして見せたのだ。
「オメーラは10番でもいい感じだった。少し向かい風で苦戦したようだったけれども」とタイガー。「良かった。彼が良いプレーをしているのは嬉しいし、誇らしく思う」と続ける。
オメーラは面白がって言う。「タイガーはたぶんこう思ってるんだよ。『本当かよ、この年寄りが9番までで5アンダーだって!?何をしてくれてるんだよ』ってね。だからすごく気分がいいよ」とちょっと皮肉って振り返る。
リンクスコースはともあれ、誰にとってもイーブンに働く最高の舞台かもしれない。経験は最も重要だが、オメーラの「全英オープン」出場は28度目だ。ミュアフィールドは硬くて速いため、どれだけボールに遠くに飛ばせるかという能力は問題にならない。次世代のパワーヒッターである必要はないのだ。
「リンクスでのゴルフは、創造性、ショットのプロセス、どこにボールを着地させるかを考える能力にかかってくる」。好スコアを出したオマールは、シンプルに説明した。タイガーもそれに賛同する。前半を1オーバーで折り返したタイガーは、その後盛り返して、スコア「69」で終えている。
オメーラは、バークデールでブライアン・ワッツをプレーオフの末に打ち破った。2人はクラレット・ジャグを確かめに、一緒にタイガーの自宅のあるフロリダまで飛んでくるほどの仲だ。オメーラはその時、タイガーに(クラレット・ジャグを見ながら)、君の名前はもっと刻まれることになると語ったという。「それから15年後の今、タイガーの名前は3度刻まれているじゃないか」とオメーラは振り返って言う。
長年の指導者で友人でもあるオメーラより、タイガーは20歳以上も年下だ。だが、タイガーは最古のメジャー大会での経験の価値を重々理解している。
「このタイプのゴルフコースは、把握する能力や、それ相応の知識がなければならない」とタイガー。「50代の選手はかつてほどの飛距離は飛ばせない。速いコースは、彼らの味方になる。でもどういうプレーをするかにもかかってくる。どうショットを組み立てるか、どこにボールを落とすか、どんなスピンをかけてグリーンに乗せるか。そういうプレーをした者が、これまで『全英オープン』を制しているんだ」。
だからオメーラは、目を見張る速さのグリーンや、他の選手たちが文句を言うような疑わしいピンにも動じることはない。もちろん、オメーラも時に守りのパッティングをする。だがメジャーの大会だ。難しいものなのである。
「まあ信じてくれ。これまで200か212ヤードの(ショート)ホールに立って、ドライバーを打ってきた。クラブなんてほとんど握れないほど、凍えるような雨やみぞれが降っていても、傘がさせなくてもね。私にとって、ここはそうしたコンディションより悲劇的だよ。厳しくて大変なコースだけでなく、不公平だとも思った。でもそれは違った。もし不公平だというのなら、この年寄りを見てこう言えばいい『いったいどうやってあんな風にできたんだ?』ってね」。
オメーラは粘り強く、正確なショットを放った。フェアウェイキープ率は78パーセント、パーオン率は83パーセント。比較すればわかることだ。平均はそれぞれ62パーセントと64パーセントなのだから。
このままオメーラが好調をキープするかどうかはわからないが、今大会における彼の影響や彼に対するリスペクトは、疑いようもない。
「この大会に出場することができて感謝の気持ちでいっぱいだし、気力にも満ちている。いいプレーができても、できなくても構わない。これが私の求めているゴルフだし、ここでプレーするためにやってきたんだ」とオメーラは意気込みを語った。
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