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2019年 全英オープン
期間:07/18〜07/21 場所:ロイヤルポートラッシュGC(北アイルランド)

アンパンマンの躍動とビーフの苦悩/実況アナ点描

シーズンのメジャー最終戦となった「全英オープン」は今年、北アイルランドのロイヤルポートラッシュGCで開催。普段は米ゴルフチャンネルで欧州ツアーをメーンに実況する小松直行氏は今週、ゴルフネットワークで連日ゲスト解説を務める。米国に拠点を置くゴルフアナリストが日々の熱戦の風景を切り取る。

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「思わず笑顔になっちゃうよ」とシェーン・ローリー(アイルランド)は振り返っていた。ローリーのセカンドラウンドは1番から3連続バーディ。10ホールで6アンダーとし、アイルランド島の観客の大声援はまるで最終日のようだった。

そのローリーも週初めにはメンタル面で不安定で、チームが集まって長時間話し合う中でようやく落ち着いたと言っていた。10年前のデビュー戦でアマチュアとして自国のナショナルオープンであるアイリッシュオープンに勝ったときから「アンパンマン」と呼んでいるローリーのプレーを見ながら、私が考えていたのは「ビーフ」のことだった。

先週のスコティッシュオープンで、ビーフことアンドリュー・ジョンストン(イングランド)はきらめく「62」というロースコアで最終日を締めくくり、上がった直後のインタビューで涙をこらえられなかった。私は胸に迫るものがあって、うまく通訳できなかった。昨年から鬱(うつ)の症状に悩まされていた、とブログで告白していたのを読んでいたからだ。

下部ツアー賞金王からスペインオープンで初優勝を遂げたビーフは、独特の風貌と朗らかなキャラクターもあってどこへ行ってもファンから声をかけられ、それに丁寧に応じる人気者。幼いファンからも慕われている。しかし「みんなを喜ばせたいという気持ちが重圧だった」と書いていた。

昨年11月のネッドバンク・チャレンジでは27位とまずまずの成績だったが、最終ラウンドの後、ロッカーに自分の荷物を取りに行く気力もなく、ホテルに戻って部屋で泣いたという。3週間後のオーストラリアPGA選手権では、ラウンドの途中にもうプレーを続けられないと思うところまで至ったらしい。みんなの期待に応えたいという気持ちが強いのに、ミスショットが出る。それに耐えられなくて泣いたという。結果は9位タイだったのに…

カウンセリングを受け、状態は改善してきたと書いていた。年の瀬には婚約も発表し、もうすぐ子どもも生まれるという。試合に出続け、全英オープンという最大のイベントは1打足りずに予選落ちとなったが、ジョンストンがトンネルを抜け出すことを祈ろう。

小松直行(こまつ・なおゆき)
1960年横浜市生まれ。筑波大体育専門学群卒、東京大大学院教育学研究科博士課程中退。教職、マスコミを経て、スポーツ科学全般を学んだ背景からゴルフに入れ込み、90年代からトーナメント中継に関わる。2002年に渡米し、現在は米ゴルフチャンネルで欧州ツアーを中心に年間約40試合の実況をしている。フロリダ州オーランド在住。

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