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ツアープレーヤーたちの訴え<藤田寛之>

ツアー通算7勝目をあげた7月の「セガサミーカップ」で、師匠に笑われた。ゲームはもつれにもつれ、大混戦のまま迎えた18番で、バーディを決めたシーンだ。その瞬間、思わず出たのは「ガッツポーズというより、お前それは“パンチ”じゃないかと芹澤(信雄)さんに言われて……」。確かに、写真で見てもこのとおり。顔の前に突きだした拳は、まるでボクサーか、または「エイエイ、オ~!」とでも言っているみたい!?

「なんでかなあ…。いつも僕、こうなっちゃうんですよ。普通にガッツポーズが出来ない。それでいっつも師匠に笑われるんです」と頭を掻いていたものだが、その2週後に挑戦した「全米プロ」で少しその謎が解けた。ナイスショットには、空にまで轟かんばかりの拍手と歓声を送ってくれる本場の大ギャラリーの前では、素直(?)に下から突き上げる形のガッツポーズで答えられたのだ。「乗せられるっていうか、自然とそうなれたんですよ。日を追うごとに、アドレナリンが沸いてきて、気持ちもどんどん前向きになっていきました」。

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インタビューを受けるたびに、強気なコメントもどんどん出てきた。初日は一時トップに立つ活躍もあって、「日本の代表として、どうにか結果を出したい」という思いとともに、「僕らだって、もっとやれるはずなんだ」と自分に暗示をかけて、4日間を戦い抜くことが出来たという。先の“パンチ”のガッツポーズも「雰囲気によるところが大きいんでしょうね。僕ら選手はやっぱりギャラリーのみなさんの反応で気持ちの盛り上がりもかなり違ってくる。日本では、なかなかそこまで強気になれないのはきっと、日本のギャラリーのみなさんがアメリカに比べて控えめだからでしょう。それで、僕もどこか遠慮をしてしまうんでしょうね」と、自己分析した。

この経験を糧に「次からは正しくガッツポーズをしたいと思います」と、帰国早々の「関西オープン」初日に話していた藤田が、その最終日にさっそくツアー通算8勝目を挙げた。さあ、いよいよ、今度こそ「パンチ」ではなく、本場仕込みのガッツポーズが見られるかと期待していたのだが、見ていたこちらは拍子抜け。なんと、ノーリアクションだったのだ。翌週にその理由を聞いたら、「そりゃあ、2打差あったからですよ」との答え。「僕は、そういう気持ちじゃないのに、無理に(ガッツポーズを)作れないタイプなんです」と、藤田は言う。

「セガサミーカップ」のときは、井戸木鴻樹らと大接戦の末に勝ったが、「関西オープン」は18番を迎えた時点で2位と2打差ついていた。最終ホールの第2打を奧5メートルに寄せて、すでに勝利を確信していた藤田には、ウィニングパットでわざわざガッツポーズを作って見せる気には、とてもなれなかったようだ。「僕の場合はあくまでも自然に出るもの。そんな状況でもないのに、わざわざ用意して、というのは僕はあまり好きではない」という。

そういえば石川遼が、「サン・クロレラ クラシック」で首位タイで並んで迎えた最終18番、劇的なバーディパットで競り勝った際に、右上を天に突き上げグリーン上でくるくると体を反転させて、喜びを爆発させたシーンが物議を醸し出したことがあった。確かに、まずは相手の心情を慮る米国では、敗者の前でガッツポーズや派手なアクションは控えるという暗黙の了解がある。それを理解した上で、藤田は言う。「アメリカでも競り合いになれば、ガッツポーズをしたり、喜びをあらわにする選手がまったくいないわけじゃない。石川くんの場合も、非常にスリリングなゲーム展開の中で、自然と出たもの。逆にあの状況で何のリアクションもなければつまらないと言い出す人もいるでしょうし、それこそ石川くんが、ファンを引きつける秘訣でもある」。

相手のブレンダン・ジョーンズがバーディパットを外した際に、拍手をしたギャラリーを非難するムキもあった。これについても藤田は、「確かに、スポーツ精神に反するけれど」と前置きした上で、「これは何も日本だけに限ったことではなくて、自国の選手を応援する傾向はアメリカのほうがもっと強いと思う」という。

「全米プロ」は、日本ツアーで4勝の経験がある韓国のY.E.ヤンが優勝したが、最終日はヤンがチャンスを外すたびに、ウッズびいきのギャラリーがあからさまに拍手するシーンを藤田も何度も見た。「でもきっと、ヤンさんもブレンダンもそんなことは覚悟の上で戦っていると思うし、2人ともそんな屈辱をはねのけるくらい強い精神力の持ち主です。だから強い。だからアウェイでもあれだけの活躍が出来るんだと思う」。勝者も敗者も、一心不乱に戦っているものたちはみな、そこに計算などいっさいなくて、筋書きのないドラマだからこそ、スポーツは面白い。

本場の厳しさを垣間見てきた男が最後に訴えた。「礼儀やルールを重んじるのはもちろん大事だけれど、そのことで萎縮しすぎて力が発揮できなくなることのほうが、僕は怖い。もう少し大らかな発想で見守っていただけると嬉しいですし、ギャラリーのみなさんの心からの拍手や声援があれば、僕らももっと良いプレーを見せようという気持ちになれます。後半戦も、ぜひ、ジャパンゴルフツアーをよろしくお願いします!」(藤田)。

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