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全米シニアOPに臨むチャンピオンたちの想い:H.アーウィン

by小松直行

6月3日に57歳になったヘール・アーウィンはもはや古い世代なのだろうか。ジャック・ニクラスアーノルド・パーマーという二人の偉大なる先導者が去ろうとしている今、誰がゴルフ界を代表しうるのか。自分はニクラスやパーマーの継承者ではないとアーウィンは言うが、ビッグネームのひとりとしての役割意識を口にする。

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「ニクラス、トレビノ、パーマー、チチ(ロドリゲス)の存在感はいつまでも続くわけではありません。ニクラスやパーマーは、かつて彼らがそうだったようなプレーを、もう見せてはくれません。これでゴルフはもう終わりなのか?----私はそうは思いません。私は自分が次代を担う人材だとは思っていませんが、ゴルフを支え、何が正しいことなのかを擁護する人間であると思っています。ゴルフは楽しいもので、我々は見に来る人たちが不快に思うものにするつもりはありません」

今季は2月にACEグループクラシックで勝ち、3月の東芝シニアクラシックで優勝。2位が3回、3位1回。12戦してトップテンが11回。賞金ランキングは首位だ。一方で、23オーバーで予選落ちをするという惨憺(さんたん)たる試合もあった。ベスページでの全米オープン、その記憶を振り払おうということもあって、アーウィンは全米シニアオープンの会場であるCaves Valley に早くから入っている。日曜日、月曜日に早くも練習ラウンドをこなし、火曜と水曜で2ラウンド。

「メジャーの場合、最良の練習場所はそのコース。私はここへ来て気持ちを集中させたかった」というアーウィンだが、今回の舞台Caves Valley も全長は7,005-yard でパー71という設定。パー5が3つ。最長は580ヤードで、455ヤード以上のパー4が3つある。

「ベスページはひどい長さでしたが、ここの上がり2つのパー4は、ベスページ的なホールと言えなくもないですね」

「私がベスページでプレーした理由の一つは、ここが少しでも短く思えるようになるため。ここは長いと感じるヤツは多いでしょう、実際その通りでね・・・」

米国男子ツアー20勝、シニア34勝というアーウィンのキャリアは、まさにナショナル・チャンピオンシップに彩られている。全米オープンでは3勝(1974年 Winged Foot, 1979年Inverness, 1990年 Medinah) し、全米シニアオープンでも2勝している。1998年のRivieraでは、首位に立って先に上がったビセンテ・フェルナンデスの目の前で、見事なアプローチからバーディをものにして勝ち、2000年 Saucon Valleyでも最終日を65で回って3日目まで首位のブルース・フライシャーを逆転して優勝した。勝つときの鮮やかさにかけてはアーウィンの右に出る者はいないだろう。

USGA仕様の「長くて、狭くて、速くて、深い」Caves Valley でナショナル・チャンピオンシップ6勝目を狙うことになるが、ベスページでの苦い経験もあってか「バーディ狙いのゴルフから脱却しなければならない」というアーウィン。

「我々は一人ひとりがゴルフというゲームの一部なのであって、ゴルフに関して起きることに対してもっと認識力を持たなければなりません。みんなが自分なりにできることをすれば、素晴らしいショットメイキングを見るために人々はここへ来るのです。バーディにこだわるプレーヤーもいるでしょうが、パーでも十分納得できるスコアになるはずです」

35年間におよぶプロとしてのキャリアからくるゴルフ観に敬意を払いたい。そしてひとりのゴルファーとしてのチャレンジを今年も見たい。シニアになるとゴルフがどう変わっていくのか、年齢とともにどんなふうにゴルフが変わっていくのか、これからアーウィンが示してくれると思う。

<参考文献>
* http://www.ussenioropen.com/press/NEWS/monday_notebook.html

著者プロフィール
小松直行(こまつ・なおゆき)

1960年横浜生まれ。GDO(ゴルフダイジェスト・オンライン)スタッフライター。CS放送におけるゴルフ中継アナウンサーとしても活躍中。筑波大学卒。東京大学大学院修士課程修了、同博士課程中退。専門はスポーツ社会学。資生堂研究員、日本女子体育大学専任講師を経て今春よりフリーランスに。同大学非常勤講師として教壇に立つかたわら、スポーツの伝え手たらんと鋭意修行中。テレビ朝日『ニュースステーション』リポーターをきっかけに、CNN『東京プライム』のキャスターを10年間つとめた。著書・訳書多数。ホームコースはカレドニアンGC。HD14。

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