ルーク・ドナルド、あわや失格の騒ぎ
【WORLD】ウェブ・シンプソンの素顔(1) “WORLD WIDE WEBB”
Golf World(2011年11月7日号)texted by Tim Rosaforte
シーズンを終えた直後、ウェブ・シンプソンはオーランドからプライベートジェットに乗り込み、缶ビールの口を開けた。シーズンについての総括は無く、脳裏にあるのはお気に入りのピザを注文することだけ。同乗していた妻のダウド、そして8ヶ月の息子ジェイムスと共に、早くシャーロットにある自宅へと戻り、大好きなデリバリーをキッチンのテーブルに座り、家族と共にシンプソンにとってベストシーズンとなった1年を祝福するムードでいっぱいだった。
PGAツアー賞金王を逃し、プレーヤー・オブ・ザ・イヤーもルーク・ドナルドに奪われた。およそ1ヶ月前にはフェデックスカップでビル・ハースにも敗れた。多くのツアープロであれば、これだけの賞金を逃したことに腹を立てるかもしれないが、シンプソンにとっては、この1年でプロゴルファーとして確かな成長を実感し、獲得賞金も著しく増えたことへの喜びしかなかった。
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2010年最終戦の前のザ・ジャスティン・ティンバーレイク・シュライナーズ・ホスピタルズ・フォー・チルドレン・オープンで4位タイに入り、翌年のツアー出場権を獲得するまで、1年前の世界ランキングでは229位と低迷。しかも今年のアーノルド・パーマーインビテーショナル出場権も獲得していなかった。ところがプレジデンツカップのメンバー選考も、昨年末の時点では45位としていたが、メンバー選考締め切りとなった9月までに4位へと急浮上し、今月にロイヤルメルボルンGCで開催される同大会への初出場が決まった。
フェデックスカップについても同様で、2010年はプレーオフ2戦の後に脱落。今年は優勝をほぼ手中に収めるまでに成長したものの、ザ・ツアー選手権(イーストレークGC)では、ハースがミラクルとも言える逆転優勝を収め、フェデックスランキングで2位に順位を落とした。2010年は賞金ランキングでも94位だったが、翌年、26歳の若さでドナルドに次いで2位にまで一気に浮上。賞金王に輝いたドナルドは、レギュラーシーズン最終戦のファイナルラウンドで、バックナインから6連続バーディと勢いに乗って優勝、そして賞金ランキング1位を勝ち取った。
フロリダでの長い戦いを終えたシンプソンは、午前2時まで気持ちが高揚して寝付けなかったが、その3時間後には目を覚ましていた。目覚めて最初にしたことは、iPhoneで世界ランキングを確認。彼はキャリア最高の10位だった。それからは息子ジェイムスのベッドに向かい、C.S.ルイスの名言集が入ったアプリケーションを起動させた。
妻であり、母親であり、女優という一面を持つダウドは、「ウェブはプロゴルファーに必要な要素を持った人です。1つのホールで上手くいかなくても、次のホールに向かう時には気を取り直しているし、大会を通じて悪い結果が出ても、次の試合にまで引きずることはありませんから」と夫の性格を分析している。
たしかに、シーズン序盤には、並のゴルファーなら引きずってしまうようなミスが顕著に見られた。例えばトランジションズ選手権の最終ホールでボギーを叩き、チューリッヒ・クラシック・オブ・ニューオーリンズでは、グリーンに乗ったボールを打つ前にそのボールが動いてしまいペナルティを受け優勝を逃したことは、今にしてみれば賞金王とプレーヤー・オブ・ザ・イヤーを取り逃した大きな原因だったと言える(トランジションズ選手権はゲーリー・ウッドランド、チューリッヒ・クラシックはバッバ・ワトソンにプレーオフの末に敗退)。当然ながら、マックグラッドリークラシックでベン・クレーンにプレーオフの末に敗れたのもその一例だ。
米国ゴルフダイジェスト社提携
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