アダム・スコットがオリンピックの出場辞退を表明
2013年シーズンのPGAベストシーン
米国ツアーでは毎年、記憶に残る名場面が生まれる。個人的な2013年シーズンのベストシーンを選出したので、ご紹介しよう。
ショット・オブ・ザ・イヤー:アダム・スコット「マスターズ」
「マスターズ」のプレーオフセカンドホールで12フィートのバーディパットを決めたアダム・スコットは、グリーンジャケットに袖を通した史上初のオーストラリア人選手となった。しかし、勝利を決めたバットの約2倍の距離から決めた、決着をプレーオフに持ち込んだバーディパットこそが忘れられない。スコットは大会の72ホール目で20フィートのバーディパットを沈め、スコットの後のグループでラウンドしていたアンヘル・カブレラ(アルゼンチン)と首位で並びプレーオフに持ち込んだ。スコットのメジャー大会初優勝は、この最終ホールでのバーディパットが無ければあり得なかった。これを沈めた瞬間、スコットは「カモン!オージー!」と叫んだ。プレーオフでの優勝に繋がった、プレッシャーの中で沈めた見事な一打だった。
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ベスト・ティショット:ジャスティン・ローズ「全米オープン」
難易度の高いメリオンのファイナルホールは、ゴルフの歴史における最も有名な一枚の写真と共に記憶されている。その写真とは、1950年の「全米オープン」でベン・ホーガンが放った、このホールの難易度の証ともいえるグリーンへの1番アイアンだ。511ヤードの18番ホールには今年、ペナルティラフが引かれた。「全米オープン」での最終ラウンドではフェアウェイを捉えた選手が半分に満たなかった(43.8%)中で、ジャスティン・ローズ(イングランド)は彼のキャリアにおける最も大きなティショットを、フェアウェイの真ん中、ホーガンの歴史的なアプローチをした僅か5フィートの場所に乗せた。
ベスト・アイアンショット:ジャスティン・ローズ「全米オープン」
ジャスティン・ローズがメリオンの18番ホールで放った4番アイアンは、グリーンには乗らなかった。しかし、後はシンプルなパーショットを打つだけという状況を作り、メジャー大会初制覇を大きく引き寄せた。グリーン外ラフからのショットは、ホールのすぐそばまで転がっていった。
「日が落ちる中、丘を歩いていき自分のドライブショットが完璧にフェアウェイの真ん中につけたのを見たときは、素晴らしい気分だった」とローズは振り返った。「もしベン・ホーガンが見ていたとしたら、彼も認めてくれるであろう素晴らしいショットを打つことができた」。
「全米オープン」最終日の18番でグリーンを捉えることが出来た選手は、全体のわずか20.5%だった。ローズはフェアウェイウッドでのショットをピンまであと数インチの所につけ、シンプルなチップショットを残すのみとした。最終日の18番での平均ストローク数は4.7だったが、ローズは素晴らしいアプローチショットでいとも簡単にパーとしてみせた。
ベスト・フェアウェイウッドショット:フィル・ミケルソン「全英オープン」
フィル・ミケルソンはミュアフィールドでの「全英オープン」最終日、パー5の17番で2打目を放ったあと、すぐに歩き出した。バウンドした打球はフェアウェイを抜け、ピンから20フィートのところで止まった。ミケルソンは2パットで楽々バーディを奪い、18番でも3打で沈めてバーディを奪い優勝を飾った。
「これまで打った3番ウッドの中で最高の2打だった」この大会ではドライバーを持たず、17番のティショットも3番ウッドで臨んだミケルソンは振り返った。「この2打は今週最高のショットだった。グリーンへ歩きながら、この大会は自分のものだと確信したんだ」。
ベスト・ショートゲームショット:ジョーダン・スピース「ジョンディアクラシック」
ジョーダン・スピースの「ジョンディアクラシック」最終ホールでのバンカーショットは、ワンバウンドしてピンに直撃し、そしてホールに沈んだ。もしピンに当たらなかったら、ボールは数フィート先に行っていたであろう。しかし、実際に起こった事実こそが全てだ。このバーディにより、ザック・ジョンソン、デイビッド・ハーンとのプレーオフに持ち込んだスピースは、1931年以来初めて米国ツアーの大会で優勝した10代の選手となった。
このバーディショットはスピース自身も「どうやったのか、なぜ決まったのか、説明できない」と振り返った。
次点:クリス・ストラウド「トラベラーズ選手権」
ベスト・リカバリーショット:パトリック・リード「ウィンダム選手権」
「ウィンダム選手権」プレーオフで、ジョーダン・スピースが25フィートの信じられないパーパットを沈めたことにより、パトリック・リードは予想だにしないプレーオフ第2ホールを戦うことになった。リードがティショットをコース外れから僅か数フィートの右側の森に打ち込んだとき、スピースの今シーズン2度目の優勝が確実になったかと思われた。しかしリードは、木で囲まれた中の7番アイアンで、ピンからわずか7フィートのところまで持っていき、バーディを奪った。スピースが10フィートのバーディパットを失敗し、リードの米国ツアー大会初優勝が決まった。
「打球は予想していたより遠くに飛んでしまって、まるで野球のスイングのようでした」とリードは振り返った。木が遮り池に沈めてしまう可能性もあった木陰からの7番アイアンを余儀なくされたが、打球をコースに引き戻した。「野球のように遠くに飛んでしまったところから、木の幹はすぐそこにあり、池に沈めることも出来ない状況で、打球を本当に真っすぐ打たなければいけなかったんだ」。
「間違いなく、自分の人生で最高の1打だったね」。
次点:ジョーダン・スピース「ジョンディアクラシック」プレーオフ。18番フェアウェイ右の森からの強烈な一打はグリーンを捉え、米国ツアー初タイトルを引き寄せた。
ベスト・ブレーク:ケン・デューク「トラベラーズ選手権」
米国ツアーでの勝敗は、時に幸運なショットが左右することがある。44歳のケン・デュークは「トラベラーズ選手権」で、幸運なバウンドを勝利につなげた。TPCリバーハイランドでの10番、アプローチショットはグリーンを外れ林に入るもバウンドし、ピンからわずか5フィートのところにつけた。その後バーディを奪ったデュークは、プレーオフを制し初の米国ツアー大会優勝を果たした。
「どうやって戻って来たのか、わからないよ」と話したデューク。「このようなことが起こるのを見たことはある。予期せぬことが起こり、結果的にバーディを奪えた。あの木に向かってお礼を言ったよ。時にはこういうラッキーも必要なんだ」。
ベスト・ウィンレス(優勝無し)シーズン:スティーブ・ストリッカー
出場する大会を制限したスティーブ・ストリッカーの2013年は、成功だった。わずか13大会の出場ながらフェデックスカップランキングは3位でフィニッシュ。出場した大会は全て予選通過し、11度のトップ25入り、8度のトップ10入り、そして4度の2位をマークした。出場したフェデックスカッププレーオフの3大会では、いずれも4位タイ以上につけた。
次点:ジェイソン・デイ(オーストラリア)
ベスト・デビュー:ラッセル・ヘンリー「ソニーオープンinハワイ」
ラッセル・ヘンリーはプロとして初の米国ツアーの舞台をものともせず、最後の10ホールで7つのバーディ、ラスト5ホールで立て続けにバーディを沈め、「ソニーオープン in ハワイ」で優勝を飾った。72ホールのうち33ホールが1パット、最終日のバックナインに至っては9ホール中7ホールで1パットしか要さなかった。
次点:松山英樹「全米オープン」
松山はプロ転向後アメリカでの初大会となった「全米オープン」を10位でフィニッシュした。
モスト・サプライジング・ウィン(驚くべき優勝):デレク・アーンスト「ウェルズファーゴ選手権」
ニューオーリンズでの「チューリッヒクラシック」出場後、Web.comツアーの大会が行われるジョージア州アテンズに向かい車を走らせていた米国ツアールーキーのデレク・アーンストは、「ウェルズファーゴ選手権」代替出場の連絡を受けた。「ウェルズファーゴ選手権」への出場が微妙だったためWeb.comツアーへの参戦を考えていたアーンストは、シャーロットにつく前にアテンズでレンタカーを返却し、月曜の夕方、予定していなかった目的地に到着した。そしてアーンストは、2012年「全米プロゴルフ選手権」2位のデビッド・リンをプレーオフで退け、米国ツアーメンバーとしての8度目の大会で優勝を果たした。最終日の16番と17番でボギーを叩いたフィル・ミケルソンにも1打差をつけた。そしてこの優勝は、彼のルーキーシーズンで唯一のトップ25入りであり、21の出場大会中、予選通過は7度だった。
次点:ウッディ・オースティン「サンダーソンファームズ選手権」
ビッゲスト・ターンアラウンド(シーズン後半の復調):ザック・ジョンソン
今シーズン後半に最も波に乗っていた選手がヘンリック・ステンソンであったことに疑いはない。しかし、前半と比べて後半に最も見違えるような復調を見せたのは、ザック・ジョンソンだ。ジョンソンはフェデックスカップ争いにおいて、7月を迎えるまで18位以上となったのが1度だけだったが、その後は2つのメジャー大会でトップ10入り(「全英オープン」で6位タイ、「全米プロゴルフ選手権」で8位タイ)。「WGCブリヂストンインビテーショナル」でも4位タイ、「ジョンディアクラシック」では3ウェイプレーオフで惜しくもジョーダン・スピースに破れた。
次点:ジェイソン・ダフナー
彼は2012年には2大会を制したが、今シーズンは8月を迎えるまでトップ10入りはわずか一度(「全米オープン」の4位タイ)であった。しかしそこから4つの大会で3度のトップ10入りを果たした(「WGCブリヂストンインビテーショナル」で4位、「全米プロゴルフ選手権」で初のメジャー大会優勝、「ドイツバンク選手権」での9位)。
ベスト・ホット・ストリーク(好調な期間):ヘンリック・ステンソン
出場したシーズン最後の7大会で5度のトップ3入りは、ステンソンにフェデックスカップのタイトルをもたらし、通算4度の優勝のうち2度をこの期間中に収めた。フェデックスカッププレーオフ大会の「ドイツバンク選手権」、そして「ザ・ツアー選手権 presented by コカ・コーラ」を制し、また「WGCブリヂストンインビテーショナル」でも2位、「全米プロゴルフ選手権」でも3位となった。
ベスト・アンダー・ザ・レーダー・ラウンド(予想だにしなかったラウンド運び):デビッド・トムズ「ウィンダム選手権」最終日(「62」)
デビッド・トムズは、賞金リストのトップ125に入るために、またツアー出場権を確保する為に、シーズン最後のラウンドで一気にスコアを上げる必要があることを理解していた。そしてセッジフィールドCCでの最終日、2つのイーグルを含む「62」でホールアウトしたトムズは、見事にそれをやってのけた。
通算1オーバーの「211」で最終日をスタートしたが、リーダーボードで一気に44人を抜き、16位タイに浮上した。賞金ランクも最終週にして129位から123位に上昇した。最後の9ホールはノーボギーの「29」で回り、71ヤードのショットを沈めたパー4の6番ではイーグルを奪った。「必要なときに良いプレーができて良かったです」とトムズは語った。
ベスト・サブ70スコア・バイ・ティーンエージャー(10代選手による「70」を切るスコア):グァン・ティンラン「チューリッヒクラッシック」2日目(「69」)
「チューリッヒクラッシック」は14歳のグァン・ティンランにとって、予選通過を果たし58位で終えた「ザ・マスターズ」以来初の米国ツアー出場となった。TPCルイジアナでティンランは、2日目に「69」でラウンドし予選通過、底知れぬ才能を見せつけた。
次点:ジョーダン・スピース「ジョンディアクラシック」最終日(「65」)
ベスト・ファーストラウンド(初日):フィル・ミケルソン「ウェイストマネジメント フェニックスオープン」初日(「60」)
「ウェイストマネジメント フェニックスオープン」初日、フィル・ミケルソンはわずかに「59」には届かなかった。ミケルソンはこの日の最終ホールとなったTPCスコッツデールの9番で25フィートのバーディパットを沈めていたら、米国ツアー史上6人目の「60」を切るスコアを出した選手となるはずだった。彼のパッティングは惜しくもホールの周りをかすめ、沈めることは出来なかった。
「ボールがホールに近付くに従い、あと6フィート、あと3フィート、あと1フィート…と思っていた。ピンのどちら側に逸れるか読めなかくて、結果的にはカップをかすめてしまった。あのスピードだと、カップに沈めるのは難しいね」とミケルソンは振り返った。
「「60」でラウンド出来たことには興奮しているけど、最後のショットが上手く行かず、沈めることが出来なかったのは残念だね。そうそうない「59」でラウンドするチャンスを逃してしまったのだから」。
この大会でミケルソンは通算28アンダー、通算スコア「256」で、2位に4打差をつけ優勝した。
ベスト・セカンドラウンド(2日目):ジム・フューリック「BMW選手権」(「59」)
コンウェイファームズで行われた「BMW選手権」2日目、ジム・フューリックはパー71のコースで13ホールを終え、11アンダーとしていた。「60」を切るスコアが現実味を帯びてきたが、パー4の5番、続く6番でボギーを叩いた。「60」を切るには最後の3ホールで2つのバーディが必要だったが、見事それをやってのけた。7番での11フィートのバーディパットを沈めると、9番でもウェッジから3フィートのところにつけるショットを打ち、パーディパットを沈めた。
フューリックは、パー4の15番で115ヤードからホールアウトするなど、最初の9ホールを8アンダー「28」でラウンドした。この日の彼に続くロースコアは「65」、平均スコアは「71」だった。
次点:ジェイソン・ダフナー「全米プロゴルフ選手権」(「63」)
ベスト・サードラウンド(3日目):ケビン・チャッペル「ザ・バークレイズ」
ケビン・チャッペルは、2位に4打差をつけるこの日の最高スコア「62」を出し、平均スコアを10打上回った。ノーボギーでラウンドした2人のうちの1人で、そしてリバティナショナルのコースレコードを破った。最初の9ホールで3つのバーディを奪い、後半9ホールでも6アンダー「30」とした。この日を終えて1打差をつけ首位に立ったが、最終日に「76」と崩れ15位に転落した。
「いいラウンド運びが出来ましたし。これまでのプレーの中でも最高の一つでした。この風の中で、誰かが「62」でラウンドしたなんて言われたら、僕だったら笑っていたと思うよ」とチャッペルは語った。
ベスト・ファイナルラウンド(最終日):フィル・ミケルソン「全英オープン」(「66」)
フィル・ミケルソンは「全英オープン」最終日を、首位から5打差を追いかける状況でスタートした。そこから生涯最高と言えるラウンド運びを見せ5度目のメジャー大会優勝、そして最も伝統のある大会での優勝を果たした。ミケルソンは最後の11組の中で「70」を切った唯一の選手となり、わずか26のパットで最終6ホール中4つのバーディを奪い、バックナインを「32」でラウンドした。
パー5の17番では、2つのフェアウェイウッドショットでグリーンに達した後にバーディ、そして18番では12フィートにつけるアプローチからバーディを奪った。通算3アンダー、通算スコア「281」となり、2位に3打差をつけ優勝を果たした。
「このトロフィーをどうやって手にしたかは気にしない。勝ったことが全てだ」とミケルソン。「これまでのキャリアでもなかったような、生涯最高のラウンドになった。誰かに手渡されるのではなく、自ら掴みたかった。今日はそれが叶ったんだ」。