「マスターズ」予選ラウンド組合せ
2013年 マスターズ
期間:04/11〜04/14 場所:オーガスタナショナルGC(ジョージア州)
藤田寛之 「原点」からマスターズへ
3月下旬、同じフロリダのデイトナビーチで2日間のミニツアーに出場した。失った試合勘を取り戻すため、車を走らせた。マスターズ出場を控えたトッププロがひとり、名もなきゴルファーたちの中に混じってプレーした。「色々いましたよ。若いのも年寄りも。全然うまそうじゃないのに、一緒に回った人が65で回って、初日トップなんですよ。『なんで、こんなのに負けんのかなあ・・・』って思ったり。年齢?自分と一緒くらいか、ちょっと上かなあ」
結果は30位タイ。賞金は獲得できなかった。ただ、スキンズマッチ代を含め310ドルを手渡しで払い、夢中で歩いた36ホールは本能を刺激してくれた。「ゴルフの本質から言うと、大きくても、小さくても試合は試合なんですよね。わずか2日間でも、世界ランキングが無い選手たちとのプレーだったとしても、緊張もしたし、お互い切磋琢磨した。やっぱりそれは“原点”だから。それを見られたことは、今後、自分にとってはプラスになる」
<< 下に続く >>
そして誇らしげに言うのだ。「そういうミニツアーに出てやっているのは、言い方は良くないけど“カッコいいな”とも思うんですよ。そこまでする自分をね。『今さら俺がこんなことするわけないだろう』なんていう、変に邪魔する自分のプライドみたいなものあったりするでしょう。でも『自分はどんなところでも、やっていけるんだ』って思えるのは、強さでもある」
実は藤田がアメリカのミニツアーに出場したのは、これが初めてではなかった。今から17年前、初めてシードに入った96年、年下の兄弟子・宮本勝昌と同じフロリダで行われた2試合を戦った。「その時は賞金を獲って帰ったんだけどね。今の方が賞金獲れないんだから!」。重なるしわの中で、そう笑う瞳は、まさに子供のような潤いにあふれていた。
2度目のマスターズ開幕を目前に控えたいまも「とにかく、やれることをやる」と、ビッグオークツリーの下で繰り返す。歩みが小さくなろうが、藤田は前進を止めなかった。そんな紛れもない強さを携えながら、等身大の自分の演技を披露する。(ジョージア州オーガスタ/桂川洋一)