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ロイヤルリザム&セントアンズ劇場

英国ゴルフを哲学的に語る者に言わせると、ゴルフはただのスポーツ競技ではない。人生最高のドラマが描けるものだ。4、5時間にも及ぶシェークスピアの傑作、ハムレットやマクベスに匹敵する。
2001年の全英オープンを3部構成で説明しよう。

第一幕
初めてメジャータイトルを手にした素晴らしいゴルファー、デビッド・デュバルは、新たなヒーローだ。そして、ゴルフよりはるかに深いものをもっている。
ゴルフクラブを彼に握らせたら世界一。しかし、マイクを握らせたら別問題だ。彼は普段、非常にシャイな男である。
全英オープン直後の表彰式は最高だった。デュバルのスピーチも素晴らしかった。通常、注目を浴びるのを嫌がる彼は、マイクを奪い取り、謙虚に、かつ感情を込めて語り、ファンを魅了した。

今までメジャータイトルを何度も逃してきたのがデュバルらしくないと思う人は、このパフォーマンスを見逃してはいけなかった。これまでの優勝者の中で一番の小心者が、意味深い言葉を発する男に変身したのだ。ゴルフマシンから発言マシンへと。
誰も18番グリーンを去らなかった。ファンは、さくから身を乗り出しながら「デイビッド、デイビッド!」とチャンピオンに声援を送っていた。
彼もその声援に充分に答えた。1995年、全英オープンに初出場したことを語った。その後7回出場し、2回目と7回目に今回のロイヤル・リザム&セント・アンズ・ゴルフクラブに足を運んでいる。
知識深い英国のゴルフファンについても触れた。彼は1995年を振り返りながらこう言う。
「スコティッシュオープンでのある一打を覚えています。ラフから170ヤード打ち、グリーンに乗ったか乗らないか、ホールからは大分離れていました。そのとき、ファンの一人がよくやった、と声をかけてくれ、とても心強く感じたことを覚えています。イギリスのファンはよくゴルフを理解している、といつも思っていました。ゴルフは、国民的スポーツなのですね。」
デュバルは、感慨深い人間だ。口下手でもあるため、発言するときには自分の考えをまとめるのに少し時間がかかる。今回、全英オープンを制し、クラレット・ジャグと、少しの時間を与えられた。そして、皆狂喜でひっくり返ってしまった。
1995年以来全英オープン優勝者、ジョン・デーリーの「俺に何を言えっていうんだ!」という受賞スピーチから、長い道のりだった。
1996年のトム・レーマン、そして1997年にジャスティン・レナードがそれぞれ素晴らしいスピーチをし、デーリーの失言を帳消しにしている。公平に言えば、今日のジョン・デーリーなら前より明瞭な発言をするであろう。一方デュバルは、傲慢で近寄りがたい雰囲気を持っているが、それが今回のスピーチで消え去った。仮面はとりはずされ、デイビッドの素顔が垣間見えた。全英オープンが満足するご馳走であったなら、彼のスピーチはそれに次ぐデザートのようであった。

第2幕
キャディーはお仕置きだ!キャディーの不注意にも関わらず、イアン・ウーズナムは堂々とメジャーチャンピオンシップで3位タイの成績を残した。
ウーズナムは最終日、4ホールを終えた時点で3オーバーだったが、イーブンパーの71で締めくくった。簡単に81にもなりえる状況だったが、ウーズナムは見事に乗り越えた。
中には、バッグに15本のクラブが入っていたことは、キャディーであるマイルズ・バイルンの責任ではないと言う者もいる。とんでもない!キャディーはバッグを責任もって預かる人。それが彼らの仕事だ。バッグに入るもの、バッグから出てくるもの全てはキャディーの責任であって、キャディー以外誰の責任でもないはずだ。

1番のティーオフに向かっていたウーズナムとキャディーは、サインを求めるファンに取り囲まれ、到着したのは予定時刻のたった30秒前だった。それが、バイルンのルーティーンを狂わせたのかもしれない。
「ということは、プレイヤーもキャディーも、審判とまともな会話を行っていないということ」とチャンピオンシップ協会の会長であるヒュー・キャンベルは言う。「他の人が間違ってバッグの中に1本多くクラブを入れてしまうこともあるため、本人に確かめてもらいますが、いちいちそんなことさせるな、と言わんばかりの目で見られるものです。」
このような間違いは全米オープンではまずないだろう。昔なじみの全米オープンのスターター、ロン・リードは、必ずプレイヤーやキャディーにクラブの数を数えることを薦めた。よく苦笑されたが、それでも言い続けた。
全英オープンのスタッフは少々姿勢が違う。全米ゴルフ協会副会長及び全米オープンのルール審判である、リード・マッケンジーはこう言う。「問題は指摘されていたが、プロのゴルファーなのだから何本クラブを持つべきかわかっているはず、それをわざわざ注意するのもわずらわしいだろう、というのが(非公式な)協議の結果です」
ウーズナムはわずらわしい思いはしないで済んだが、罰則は課された。

第3幕
またもや優勝したのはアメリカ人だったが、今回の全米オープンから将来の優勝者も見据えることができた。上位12位までのプレイヤーの出身国は、8カ国。ゴルフはどんどんグローバルなスポーツになっている。将来のゴルフチャンピオンシップでは、様々な言語が飛び交うであろう。アイアンをこぶしに握り締めたアメリカ人プレイヤーが常にトーナメントを制する、と考えるのは、未来を正確に見据えていない証拠である。18番ホールで見上げると、全米オープン出場プレイヤーの出身国、42カ国の国旗がはためいていた。ゴルフチャンピオンシップの中で最も民主的な全米オープン、上位20位までのプレイヤーの出身国は12カ国だ。そのうち、アメリカ合衆国出身のプレイヤーはたったの5人だった。そんなゴルファーら全員が、デュバル同様、壮大な人間ドラマの一部を構成している。シェークスピアでさえ、そんなドラマは書けますまい。
By Jeff Babineau(GW)

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