2019年「全英オープン」組み合わせ&スタート時刻
2019年 全英オープン
期間:07/18〜07/21 場所:ロイヤルポートラッシュGC(北アイルランド)
リンクスに挑むタイ選手たち/塚田好宣の現地レポ(その2)
◇メジャー第4戦◇全英オープン 事前情報(16日)◇ロイヤルポートラッシュ(北アイルランド)◇7344yd(パー71)
今年の「全英オープン」には、親交のあるタイの選手たちが出場する。タイでは今、世代交代が進んでいて、女子も男子も若い選手たちが世界中で勝利を挙げ始めている。その中にあって、タイのゴルフ界を引っ張るキラデク・アフィバーンラト、プロム・ミーサワット、そしてガン・チャルングンの3人に話を聞いてみた。ゴルフ好きなら、この3人のことを知っていると思う。日本ツアーにもゆかりのある選手たちだ。
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◆キラデク・アフィバーンラト
2009年から日本ツアーに参戦し、すぐにシードを獲得。僕の個人的な思い出としては、12年の「サンクロレラクラシック」(小樽)、08年の「シンハマスターズ」(現オールタイランドツアー最終戦)で、最後まで優勝争いをした記憶が新しい。今は主戦場を米ツアーに置き、世界ランクは52位、来季もアメリカで戦うと言っている。先輩であるプラヤド・マークセンやトンチャイ・ジェイディーがシニアとなり、実質的にタイゴルフ界のリーダーとなった29歳(ちなみに来週23日が彼の誕生日)は、日本でプレーしていた時よりもずっと逞しい。
数年ほど欧州ツアーを主戦場に戦っていて、今年で6度目の全英だが、昨年の75位が唯一の予選通過。「リンクスコースはタイにもないし、アジアにもない。だから、経験が足りない」と感じているようだ。
今週、キラデクとプロムは家族やマネジャーを含めた大所帯でコース近くの家を借りて生活している。みんなで毎日タイ料理を作って楽しく過ごしているようだ。こういうところはタイ人だなと思う。どんな環境でも、仲間と楽しく過ごすことができる。もしチャンスがあれば、僕も彼らのタイ家庭料理をご馳走になりたい。ちなみにキラデクは会うたびに「キットゥン焼肉!」(焼肉が恋しい)と言う。日本ツアーで過ごした時、毎日のように焼肉屋へ連れて行ったのが懐かしい。「豚丼も好き、コンビニ弁当も食べたい!」と、日本の食事も忘れられないようだった。
◆プロム・ミーサワット
10数年前、タイツアーに出始めた頃に、鳴り物入りでタイのプロゴルフ界に乗り込んできた“元祖”次世代選手だ。アマチュア時代には世界ジュニアに勝ち、「シンハマスターズ」ではプロを抑えて優勝もした。そんな彼も、日本ツアー時代にイップスとなり、一度は姿を消しかけた。しかし、苦難を乗り越えてまた世界の舞台に戻ってきた。「全英オープン」は2011年以来2度目の出場。30代半ばの彼の目には、また世界のツアーが見えているようだ。
タイの若い世代の台頭について聞いてみた。「自分もトンチャイやマークセンを見て追いかけてきた。今の若い選手たちも、自分やキラデクが世界で戦えるのを見て自信をつけていると思う」と言う。これはキラデクも同じことを言っていた。時間があれば、いまだにキラデクやトンチャイやマークセンは、オールタイランドツアーでプレーをする。同じフィールドで競える若手たちは、自分もできるという自信を持てるようになるのだと思う。
キラデクとプロムの2人に、タイでウェッジショットがうまい選手を3人挙げてくれと質問したら、「マークセン、ウィラチャン、プロム」と2人の答えは同じだった。自分の名前を出せるくらい自信がある。
このフィールドでは、プロムは決して飛ぶほうではないが、ショット精度とショートゲームでロイヤルポートラッシュを戦っていく。350ヤードを超えるロングドライブが当たり前の時代に、彼のプロフェッショナリズムを感じた。
◆ガン・チャルングン
彼との出会いは数年前、言い方は悪いが、ゴルフのうまいお金持ちのお坊ちゃんという印象だった。当時はまだコーチもいなくて、Youtubeを見ながら自分でスイングを研究していると言っていた。物腰は柔らかく話し口調も穏やかで、おっとりした感じに見えるが、芯は強い。アジアでの試合が減ると、戦いの場を求めてPGAツアーチャイナヘ行き2度の優勝。その勢いのままに日本ツアーへやってきた。2シーズン目となる今年は、ほぼシードを確実にして、あとは初勝利を待つばかりである。
今週は、奥さんとアメリカで知り合ったホストファミリーのお母さんと一緒に過ごしている。お母さんは元調理師でもあるらしく、食事のことは任せているそう。タイ料理を食べているのかと思いきや、オランダ料理やインドネシア料理が得意だと言っていた。なかなかオモシロイ。
今大会が自身初の海外メジャー。リンクスコースも初めてとのこと。経験のないリンクスに戸惑いながらも、ラウンドと打ち込みを交互にしながら攻略法を探しているようだった。きょうも、いつもと同じように最後に直ドラを練習していた。調子のバロメーターなのだろう。もしかしたら今週、彼の直ドラがコースで威力を発揮することになるかもしれない。初めのメジャーとリンクスに挑むガンに期待してみたい。
あすの第3回は、練習場周辺で選手たちのメジャー前日の調整をレポートしようと思う。(文/塚田好宣)