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プレーヤーズラウンジ

<あのときもらったサインは家宝に・・・。ドンが遺してくれたもの>

“ドン杉原”のお別れ会が、しめやかに行われた。2月13日。式典が始まった13時頃から冷たい雨が降り始めたが、1000人を超えるファン・関係者が大阪北区のリーガロイヤルホテルに駆けつけた。

祭壇の中央に設置された大スクリーンが遺影がわり。生前に人々を魅了したドンの笑顔がスライド式に、いくつも映し出されていく。真っ白な花ですっぽりと包まれた祭壇の前に置かれた長い長いテーブルが、献花であっという間に埋もれていく。

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お別れの長い行列は、そのまま隣のホールに進めるようになっていて、ドアをくぐればそこは思わず目を見張るほどの遺品の数々。
飾りきれないほどのクラブやトロフィー、フェアプレー賞などの賞状や写真が所狭しと並べられ、在りし日をしのぶ人々の列には、たくさんのプロゴルファーの姿も。ひとつひとつに目をやりながら、「杉原さんくらい長くゴルフをやれたら本望だよな・・・」。感嘆しきりで独り言をつぶやいたのは、ベテランの鈴木亨だった。

「今でもあのときの笑顔を思い出す」と、振り返ったのは2010年の中日クラウンズ。ドンが同一大会51回の連続出場記録の偉業を達成した大会だ。

あの世界記録が打ち立てられた日に、同じ組でまわったのが鈴木だった。「あのとき僕らの組は、何か不思議な空気が漂っていた」と、鈴木はいう。
樹立の初日は、まず鈴木が16番のパー4で2打目を直接入れるイーグルを奪った。「それを見ていた杉原さんも、すごく喜んでくれてねえ・・・。記録達成の日だったから、なんかみんな余計に気持ちが盛り上がった感じだった」。そして翌2日目は、ドンだった。なんと11番のこれまたパー4で、160ヤードの2打目を6番アイアンで直接入れた。ご本人には実に8年ぶりとなる劇的イーグル奪取であった。

「あのとき杉原さんが浮かべた嬉しそうな笑顔がまるで少年のようで・・・。今でも忘れられない」と鈴木。「あれが、僕にとって杉原さんとの最後のラウンドになった。あの瞬間に立ち会えて本当に良かった」と、しみじみと言った。

また、ちょうどその前週には、こんなエピソードもあった。同年のつるやオープン。初日が大雨のために中止となり、せっかく足を運んでくれたファンサービスとして、選手たちでサイン会を開いたときのことだ。率先してサインペンを走らせていたドンの隣で、倉本昌弘がかたわらの鈴木ら後輩たちにけしかけたのだ。「お前たちも、杉原さんにサインもらっておけよ。こんな機会はめったにない、貴重だよ」。

「そうや、俺もいつ死ぬかわからんぞ」と、冗談とも本気ともつかない顔で、ドンは言ったものだ。その声を契機に周囲にいたプロまでが、ファンに混じって杉原の前に列を作った。若き“同業者”たちがおずおずと差し出した色紙に苦笑しながらも、快く応じたドンは、メッセージまでも一緒にしたためてくれた。

そのとき、鈴木が書いてもらった言葉は「大きな心」だった。「あの色紙も、今やうちの家宝です」と鈴木。お別れの会では、ドンが試合で最後に使っていたというボールが参列者全員に配られた。サインとともに、ニヤリと笑ったドンの似顔絵が描かれている。「帰ったら、ボールに小さな座布団を敷いて、色紙と一緒に大切に飾っておこうと思います」。誰の心にも、かけがえのない思い出を刻みつけて旅立った。さようなら、ドン。

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