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2019年 プレジデンツカップ
期間:12/12〜12/15 場所:ロイヤルメルボルンGC(オーストラリア)

佐藤信人の視点 勝者と敗者

タイプの違う2人のキャプテン

今大会で13回目を数える「プレジデンツカップ」は、タイガー・ウッズ(米国)とアーニー・エルス(南アフリカ)という、両軍が新たなキャプテンを立てたことで、予想以上の盛り上がりを見せました。

2人は言わずと知れた、長年にわたるライバル同士。ウッズが優勝した通算82勝のうち、エルスが2位という大会が5回も存在します。逆にエルスが1位、ウッズ2位という大会が2回。これだけでも切磋琢磨してきた関係性がうかがえますが、「プレジデンツカップ」だけをみても、唯一引き分けた2003年大会で、最終のシングル戦で直接対決。3ホール目まで戦い、それでも決着がつかず、日没サスペンデッドで引き分け。ライバルにふさわしい戦いを何度も繰り広げてきた2人といえます。

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そんな2人が対峙したことで、単にチーム戦という意味合い以上のものが感じられました。2人を慕う選手ら(ウッズは兼選手)が、彼らを勝たせたいという気持ちを強くもち、単に強者の寄せ集めという雰囲気を脱し、チーム一丸となって団結したことで多くのファンを魅了したからだと思われます。

ジャスティン・トーマス(米国)が試合前、「夜中にあれだけショートメールを送ってくるキャプテンはいない」と笑いながらウッズとのやりとりを紹介していましたが、内容は「プレジデンツカップ」に向けて準備してほしいというもの。それだけキャプテンとしての意気込みが感じられましたし、選手らと小まめにコンタクトをとることでチーム力を上げていたことがうかがえます。

そんな彼ですが、試合に入るとプレーヤーにはそれほど干渉せず、一人ひとりに任せるタイプのキャプテン像を見せていました。自身が選手として出場している間は、副キャプテンのスティーブ・ストリッカー(米国)に任せていましたし、どちらかといえば主導性を控え、背後で見守る“兄貴”的な存在でチームを引っ張っていたように見受けられました。

一方、エルスの姿は“父親”のような存在。ロイヤルメルボルンGC(オーストラリア)を熟知していたということもあり、ティイングエリアで直接アドバイスを送り、試合中もカートであちこち移動しながら、プレーヤーに近いところで采配を振っている姿が印象的でした。

世界選抜は過去最高9カ国・地域から選出し、12人中7人が初出場。なるべく多くの国から選び、多くの国のファンに興味を持ってもらおうという姿勢を感じましたが、試合に勝つためのメンバーとしては史上もっとも若いチーム編成のため、経験値が低いのが欠点でした。そんな若手主体のチームだからこそ、指示を明確に告げたいという思いがあったのでしょう。

ふたを開けてみれば、序盤は米国選抜を圧倒し、ダブルス戦を終えた段階で2ptリードしていた世界選抜。シングル戦では地力に勝る米国選抜の前に力尽きましたが、松山英樹選手を含め、この大会に臨むモチベーションは高く、手強い集団になっていたと思われます。

ウッズVSエルス。過去にはジャック・ニクラス(米国)とゲーリー・プレーヤー(南アフリカ)が、キャプテンとして同じような戦いを繰り広げてきましたが、今後は彼らの構図で戦いが続いていくと予想できます。その幕開けが今大会だったといえます。“兄貴”と“父親”という顔もまたどのように変わっていくのか、とにかくいま言えることは、すでに次戦が楽しみで仕方ないということです。(解説・佐藤信人

佐藤信人(さとう のぶひと)
1970年生まれ。ツアー通算9勝。千葉・薬園台高校卒業後、米国に渡り、陸軍士官学校を経てネバダ州立大学へ。93年に帰国してプロテストに一発合格。97年の「JCBクラシック仙台」で初優勝した。勝負強いパッティングを武器に2000年、02年と賞金王を争い、04年には欧州ツアーにも挑戦したが、その後はパッティングイップスに苦しんだ。11年の「日本オープン」では見事なカムバックで単独3位。近年はゴルフネットワークをはじめ、ゴルフ中継の解説者として活躍し、リオ五輪でも解説を務めた。16年から日本ゴルフツアー機構理事としてトーナメントセッティングにも携わる。

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