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佐藤信人の視点 勝者と敗者

気負いに勝った無心の境地

国内男子ツアー「中日クラウンズ」の勝者と敗者は、僅かな差で決着がつきました。宮本勝昌選手と今平周吾選手、2人の違いは本当に紙一重だったと思われます。

最終日の2人の表情は対照的でした。宮本選手はこれで本当に優勝争いをしているの?と疑いたくなるほどリラックスしているように見受けられました。一方の今平選手は少し勝ちを意識し、高揚している表情にうかがえたのです。

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今平選手といえば常に冷静沈着でクール。どのような状況でも表情をひとつ変えず、物怖じしないタイプです。そんな彼が初出場した「マスターズ」で予選落ちを喫し、次のメジャー第2戦「全米プロ」を前に臨む国内ツアー。普段は感情を表に出さない若武者が、この日は数回ガッツポーズを披露し、少しいつもとは違うように見てとれました。

この日、首位と5打差でスタートした今平選手は通算9アンダーまで追い上げ、最終18番(パー4)のティに立った時点で単独トップに立ちます。3組後ろの最終組で回っていた2位の宮本選手とは1打差。ティショットは完ぺきに放ち、フェアウェイ真ん中で残り約110ydほどの絶好のポジション。もうひとつバーディが獲れれば、さらに突き放すチャンスでした。

そんな追い風に乗っていた今平選手に、アクシデントが起こります。常にフォローの風が吹いていた18番で、今平選手が2打目を放った瞬間だけアゲンストに変わったのです。中継リポーターが「いま少しアゲンストに変わりました」と発したことに私は耳を疑ったほどです。「ここはフォローでしょ」と。打った直後の本人も、彼のキャディも同様の表情をしていたので、同じ気持ちだったことが推測できます。このショットをバンカーに入れた今平選手は結局ボギーで、ホールアウト時点では宮本選手、マシュー・グリフィン選手(オーストラリア)と首位を分け合った形となりました。

最終組でプレー中の宮本選手のほうへ勝機が舞い込みます。ただ、試合前から和合コースとの相性の悪さを公言しており、恐る恐る状況をうかがいながら静かにプレーしているように見受けられました。通算ツアー11勝(今大会で12勝目)のベテランも、昨季はシード権を失い、優勝争いは2年ぶり。通常なら必ずプレッシャーのかかる状況。ですがこの日の宮本選手は、それを一切感じさせない淡々としたプレーを続けました。優勝争いの状況を達観しているような、プレーに集中しているけれど集中しすぎていない状態にうかがえました。

優勝争いは、最終組で回っていた貞方章男選手が17番でバーディパットをねじ込んだことで、首位に4人が並ぶ大混戦の様相を呈しました。貞方選手にトップに並ばれた際も、同組の宮本選手は実に穏やかな笑顔を見せていました。その表情にはまったく気負いが感じられず、ともに喜んでいるようにも見えたほどです。目の前の現実をすべて素直に受け入れ、自分の姿を俯瞰しながら、冷静に周りの状況を把握する。グリーン上で見せた彼の表情は、そんな無心の境地に達しているかのようでした。

18番で約10mの複雑なスネークラインを残した宮本選手。普段ならまず入らないような難しいパットでしたが、無心で挑んだおかげで運を味方につけ、勝利をつかむことができました。広い視野でラインを読み、無心でタッチを合わせたからこそ、最後のカップ際のひと転がりが生まれたのではないでしょうか。(解説・佐藤信人

佐藤信人(さとう のぶひと)
1970年生まれ。ツアー通算9勝。千葉・薬園台高校卒業後、米国に渡り、陸軍士官学校を経てネバダ州立大学へ。93年に帰国してプロテストに一発合格。97年の「JCBクラシック仙台」で初優勝した。勝負強いパッティングを武器に2000年、02年と賞金王を争い、04年には欧州ツアーにも挑戦したが、その後はパッティングイップスに苦しんだ。11年の「日本オープン」では見事なカムバックで単独3位。近年はゴルフネットワークをはじめ、ゴルフ中継の解説者として活躍し、リオ五輪でも解説を務めた。16年から日本ゴルフツアー機構理事としてトーナメントセッティングにも携わる。

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2019年 中日クラウンズ



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