川村昌弘は惜敗も悔いなし 欧州ツアーファイナルQTへ弾み
2018年 三井住友VISA太平洋マスターズ
期間:11/08〜11/11 場所:太平洋クラブ 御殿場コース(静岡)
試合数の減少からたどる新たな見どころ
国内ツアーも今週の「三井住友VISA太平洋マスターズ」を入れて残り4試合となり、賞金王争いは佳境に入ってきました。
誰が賞金レースを制するのかが気になる反面で、国内ではなく海外へ散らばっていく選手が目立つようになってきました。私としては、彼らの意識が世界へ向けられていることに大きな期待感をつのらせ、楽しい気分になります。
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賞金ランキングのトップを走る今平周吾選手は、世界ゴルフ選手権(WGC)「HSBCチャンピオンズ」出場を回避して国内に専念することを決めましたが、稲森佑貴選手と池田勇太選手は国内の試合を蹴ってWGC出場を選びました。川村昌弘選手は「マイナビABCチャンピオンシップ」以降国内の試合には出ず、欧州のQスクール(予選会)を受けにスペインに入ったり、比嘉一貴選手はアジアンツアー下部・ADTツアーに専念したりと、おのおのが散らばっていく様子がクローズアップされるようになりました。
20年前には予想できなかった状況ではありますが、国内の試合数が激減しているいま、若手選手たちの意識は確実に世界を見据えたものに変わってきていると言えます。松山英樹選手、小平智選手は米ツアーに、宮里優作選手と谷原秀人選手は欧州ツアーを主戦場とし、国内でもアジアンツアーとの共催大会が増えるなかで、自然とそのあとを追う国内選手たちの視線は世界に向けられるようになりました。
特に年末までは、米ツアーは大きな試合がなく、欧州ツアーも今月中旬には終了します。逆に国内ツアーはポイントの高い試合が残っているため、少しでもワールドランキング(以下WR)を上げるチャンスの期間。目標は明確です。マスターズの出場資格が得られる、年内終了時にWR50位以内に入るためです。
昨年は年内最終戦のアジアンツアー「インドネシアマスターズ」で、宮里優作選手とキラデク・アフィバーンラト選手(タイ)が滑り込みで出場権を獲得しました。一方で、現地入りしたものの不調を理由に欠場を選んだ小平選手が落選。最後まで結末が分からないWR上での戦いに一喜一憂させてもらいました。
今週発表のWRでは、今平周吾選手が62位、「HEIWA・PGM CHAMPIONSHIP」を制したショーン・ノリス(南アフリカ)選手は76位、池田勇太選手が93位(11月5日時点)と、目標達成を狙える順位に位置しています。彼らがどの試合に出て、どの試合を欠場するのか――スケジューリングでの駆け引きも、年末までの見どころのひとつと言えるのではないでしょうか。
- 佐藤信人(さとう のぶひと)
- 1970年生まれ。ツアー通算9勝。千葉・薬園台高校卒業後、米国に渡り、陸軍士官学校を経てネバダ州立大学へ。93年に帰国してプロテストに一発合格。97年の「JCBクラシック仙台」で初優勝した。勝負強いパッティングを武器に2000年、02年と賞金王を争い、04年には欧州ツアーにも挑戦したが、その後はパッティングイップスに苦しんだ。11年の「日本オープン」では見事なカムバックで単独3位。近年はゴルフネットワークをはじめ、ゴルフ中継の解説者として活躍し、リオ五輪でも解説を務めた。16年から日本ゴルフツアー機構理事としてトーナメントセッティングにも携わる。