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佐藤信人の視点 勝者と敗者

1年延期の「東京五輪」 男子代表争いはどう変わる?

新型コロナウイルス感染拡大の影響で「東京オリンピック」が1年延期された。開幕は2021年7月23日。ゴルフ競技の各国・地域の代表選考の時期もそれぞれ1年伸び、同年6月の世界ランキング(男子は21日、女子は28日)をもとにした五輪ランクで決まる。選考期間の延長は、代表およびメダル争いをどう変化させるのか。男子選手について、解説者としてもおなじみのプロゴルファー佐藤信人が解説する。

日本勢の構図は“松山英樹+1”のままか

選考期間が伸びたことで、より多くの選手に五輪出場の可能性が再び出てきました。日本男子の出場枠は現段階で2つ。それでも米ツアーを主戦場にする松山英樹選手(ランク22位)が争いをリードし、“もうひとりが誰になるか”という点が注目される展開が続きそうです。

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初日首位スタートを切った3月の「ザ・プレーヤーズ選手権」を含め、3季ぶりの優勝に手が届きそうな試合が続きました。2年ほど前からスイングが変わり、ショットの安定感がいっそう増しました。つま先寄りに体重をかけ、深い前傾を保つポジションになったことで懐にスペースができ、インパクト時の手元がより低い位置を通るようになりました。2年前ほどはフェードヒッターと評されることもありましたが、彼が本来理想とするドローヒッターの動きに戻りつつあります。両方の弾道を自在に打てるようなスイング改造を進めながら成績が落ち込まないのは、実力のベースが高い証拠でしょう。

もう一枠の最有力候補は現在2番手の今平周吾選手(同41位)で、軸足を置く日本ツアーでの安定感は飛びぬけています。昨年までのプレーぶりではランクが一気に後退することを想像しにくく、他選手が彼を逆転するためには3番手にいる石川遼選手の昨年のような活躍が欠かせません。石川選手は19年6月末時点でランキングは300位。そこから半年で3勝を挙げ、年末に80位まで引き上げました(現在97位)。そう考えれば、夏場以降にシーズンが再開された場合、200位前後にいる選手にも来年の今ごろ100位以内に入るチャンスがあるのです。

上記3人のほかに200位以内にいるのは星野陸也選手(117位)、堀川未来夢選手(151位)、時松隆光選手(186位)、比嘉一貴選手(192位)、池田勇太選手(198位)。さらに欧州でプレーする川村昌弘選手(201位)、アマチュアの金谷拓実選手(227位)が続きます。昨年「三井住友VISA太平洋マスターズ」で優勝した金谷選手は仮にプロに転向し、すぐにシーズン複数回勝利を挙げても驚きのない実力者。彼の場合はランキングの減算ポイントが極めて少ないことを考えても、可能性は膨らんだと言えるでしょう。

45歳になるウッズは試練の秋に

今後のゴルフ界にとって、タイガー・ウッズが五輪に出場するか否かはスポーツ界全体の注目度という点で大きなポイントになります。ただし、12月の誕生日にひとつ年を取って45歳で迎える東京への道はより険しくなったと言わざるを得ません。シーズンが再開した後の過密日程が心配されます。メジャー3大会が延期となり、秋以降に立て続けにビッグトーナメントが実施される可能性があります。

ダスティン・ジョンソンのように五輪出場の回避を表明する選手もいるなか、ウッズはこれまでオリンピアンになることへの強い意欲を語ってきました。ただし、今年に入ってから続いている試合欠場は前年の蓄積疲労の影響という見方がされています。再開後のメジャー開催のスケジュール、健康状態が重要なファクターになりそうです。

米国はジョンソンを除いて世界ランキング30位以内に13人がひしめき、最も厳しい代表争いを繰り広げます。ランク3位で同国トップのブルックス・ケプカもひざの故障後はいまひとつ調子が出ません。トミー・フリートウッドが最上位(10位)のイギリスも熾烈で、この2つの国は代表争いに敗れても、メダルが取れそうな実力者がたくさんいます。

伏兵多数 若手有望株の成熟にも期待

前回の「リオデジャネイロ五輪」は、ジカ熱などの影響で複数の主力選手が参戦を辞退したことから出場権が繰り下がり、フィールドでもっとも低い世界ランキングは392位でした。それが東京では現在252位(ミゲル・タブエナ/フィリピン)が最低となっています。上位選手が多く、それだけメダル争いは過熱するはずです。

PGAツアーで今季初優勝を挙げたホアキン・ニーマン(チリ)やビクトル・ホブラン(ノルウェー)はそれぞれ21歳と22歳にして、国の争いを引っ張っています。来夏まで出場権争いへのストレスも少なく、実力をさらに付けることができるでしょう。前述の通り、この秋からの過密日程を考えれば若い力は魅力的。リオで4位に入ったトーマス・ピータース(ベルギー)のような伏兵になりうる存在が多くいます。

22歳のイム・ソンジェ(韓国)にも注目しています。中断前の2月末「ザ・ホンダクラシック」で初勝利を挙げ、フェデックスカップポイントランキングでは1位をキープ。代表争いは韓国勢で堂々のトップを走ります。本人は口にはしないでしょうが、五輪メダル獲得は同国の成人男子の義務である兵役を免除される可能性があります。ベ・サンムンを見ても、兵役後は多くのトップ選手が完全復活までに長い時間を要しています。イム選手は10代のころに日本でもプレーした経験があります。東京五輪の意味、メダルの意味は人知れず大きいものになるのではないでしょうか。

佐藤信人(さとう のぶひと)
1970年生まれ。ツアー通算9勝。千葉・薬園台高校卒業後、米国に渡り、陸軍士官学校を経てネバダ州立大学へ。93年に帰国してプロテストに一発合格。97年の「JCBクラシック仙台」で初優勝した。勝負強いパッティングを武器に2000年、02年と賞金王を争い、04年には欧州ツアーにも挑戦したが、その後はパッティングイップスに苦しんだ。11年の「日本オープン」では見事なカムバックで単独3位。近年はゴルフネットワークをはじめ、ゴルフ中継の解説者として活躍し、リオ五輪でも解説を務めた。16年から日本ゴルフツアー機構理事としてトーナメントセッティングにも携わる。

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