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佐藤信人の視点 勝者と敗者

ハン・ジュンゴンが日本で成長した軌跡

「マイナビABCチャンピオンシップ」は、ハン・ジュンゴン選手(韓国)と今平周吾選手による接戦のすえ、72ホール目で決着という劇的な幕切れとなりました。

最終18番(パー5)で勝負を決めたのは、ハン選手の2mのイーグルパットでした。2位の今平選手が先にイーグルを決め、1打差首位のハン選手が決めれば優勝、外せばプレーオフ。プレッシャーのかかる大事な場面で、彼の前に立ちはだかったのは、この日何度も外してきたスライスラインでした。

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ハン選手が日本ツアーに参戦したのは2011年。当時からショットは目を見張るものがあり、国内選手の中でも、ほかの韓国人選手の中でもその精度はトップクラス。いまでこそ日本語は達者ですが、当時なかなか覚えなかった経緯があり、彼は日本を通過点として捉え、早い段階で米ツアーに行くものと勝手に察していました。

ただ、彼にも唯一の欠点がありました。デビュー当時からポーカーフェイスで有名でしたが、メンタルの部分ではややムラがあり、ミスに対して少しイライラしたり、引きずってプレーが少し雑になってしまうケースを多く見かけていたのです。

11年の「ミズノオープン」、12年の「カシオワールドオープン」と立て続けに優勝したハン選手ですが、その後はトントン拍子とは行かず、15年「カシオワールドオープン」で3勝目を飾ったものの、その実力を思えば、もっと勝利数を積み重ねて良い才能だと思って見ていました。

そんな彼も月日が経ち、現在27歳。精神面でもかなり成長を見せ、プレー内容にも安定感が増し、実力をフルに発揮できるようになっていました。今季に入り、ベスト10は5回。何度も優勝争いに加わり、石川遼選手が優勝した「日本プロゴルフ選手権」ではプレーオフまでもつれるという惜敗を喫しました。

来年から兵役に向かう彼にとって、「日本プロゴルフ選手権」は優勝すれば5年シードという大きなボーナスがもらえるため、喉から手が出るほど欲しい勝利だったと思われます。17番(パー3)までトップを走っていたにもかかわらず、ティショットで池に入れ、まさかの事態に。石川選手に追いつかれ、最後はプレーオフで力尽きました。この敗戦のショックは大きかったと思いますが、その後の「セガサミーカップ」では6位、「ライザップ KBCオーガスタ」でも3位と、くじけることなく上位フィニッシュしている結果を振り返ると、メンタル面の成長の軌跡を感じることができます。

今大会では今平周吾選手と優勝争いを演じ、15番(パー5)までは追いかける立場でしたが、今平選手が終盤で失速したことでチャンスが巡ってきます。「日本プロゴルフ選手権」とは逆の立場。追いかける側から追われる側に回り、迎えた18番。決めれば優勝、外せばプレーオフ――。

勝負どころで崩れてしまった過去の自分。敗戦にも屈せず真摯に向き合ってきた今シーズン。そして兵役というブランクが待ち受ける未来への不安。すべてを一掃するかのようなウィニングパット。スライスラインを読みきり、カップにボールが消えた瞬間、彼は何とも言えない力強い表情になっていました。そこにはメンタルの弱さなど微塵も感じられない誇らしげなものでした。

「日本でも応援してくださる方がとても多く、いつも感謝しています。もう一度、日本でプレーしたいと思います」。表彰式のインタビューで、彼が語ったのは9年間で自身を成長させてくれた日本への感謝の気持ちでした。そして、その日本語はデビュー当時では考えられないほど、とても流暢なものになっていました。(解説・佐藤信人

佐藤信人(さとう のぶひと)
1970年生まれ。ツアー通算9勝。千葉・薬園台高校卒業後、米国に渡り、陸軍士官学校を経てネバダ州立大学へ。93年に帰国してプロテストに一発合格。97年の「JCBクラシック仙台」で初優勝した。勝負強いパッティングを武器に2000年、02年と賞金王を争い、04年には欧州ツアーにも挑戦したが、その後はパッティングイップスに苦しんだ。11年の「日本オープン」では見事なカムバックで単独3位。近年はゴルフネットワークをはじめ、ゴルフ中継の解説者として活躍し、リオ五輪でも解説を務めた。16年から日本ゴルフツアー機構理事としてトーナメントセッティングにも携わる。

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