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素顔のツアープレーヤーたち <伊沢利光選手>

伊沢夫人の和子さんが、苦笑しながら言った。
「たまのオフなんかにね伊沢と一緒に買い物に行ったりすると必ず、近所の人に言われるんです。『和子さんの旦那さんてなんだかすごいプロゴルファーって聞いていたんだけれど・・・』って」

コースでは、ビシっと勝負服に身を包み華麗なスウィングで他を圧倒する伊沢も、家では「まったくといっていいほど、構わない人なんですよ」(和子さん)
いつもTシャツに短パン姿。髪もぼさぼさで、ゾウリをズリズリ言わせながら、長女・優美子ちゃん、次女・今日子ちゃんの幼稚園の送り迎えをしたり、フラリと趣味のパチンコに出かけていったり・・・。

「コースとのギャップが激しすぎて、みなさん実物を見たときには『ほんとうにあの“伊沢利光”なのか?』って一瞬、目を疑うみたいで・・・」と言って和子さんは笑った。

師匠のジャンボが、「あんなチャランポランにしか見えないやつが、どうして何度も勝てるんだ?」と、呆れかえったこともあるほど、どこか掴みどころがなく、超人的な雰囲気さえ漂わせる伊沢。

どことなく浮き世ばなれしたその性格は、3人の子供たちそれぞれの名前を決めるときにも、顕著にあらわれたそうだ。

生まれる前から「オレの子供の名は“丈一郎”しかありえない」と決めていた伊沢は、第一子は絶対に男の子だと信じて疑わず、女の子だった場合の候補はまったく考えていなかった。

それでいて実際に女の子が生まれるとそんなこともすっかり忘れて大喜びで、「名前はどうするの?」と和子さんが聞いたら、特に悩む素振りもみせずに「う~ん、なんとなくゆみこって感じだから優美子」と、直感で命名してしまった。

さらに2人目が出来たときもやはり最後まで「丈一郎」の一点張りだった。
結局、今回も女の子だったと聞くなり、「う~ん、じゃあ今日生まれた子だから、今日子だ!」と、「なんだか良くわからない理由で決めてしまった(苦笑)」(和子さん)

そんな経緯があったから、とうとう念願かなって昨年9月、“丈一郎”君が誕生したときには「そりゃあもう、大喜びでしたね」と和子さんは目を細めた。

それほどに待ち望まれて誕生した丈一郎君の将来は、当然、自分のあとを継がせてプロゴルファーかと思いきや、「子供にはできれば、別の道を歩んで欲しい」というのが父の願いだ。「子供たちには、こんなに大変な思いはさせたくないというのが口癖」(和子さん)
常にトップを走りつづけることの難しさ、苦しみが身にしみているからこそなのだろう。

先週出場のメジャー最終戦・全米プロに引き続き、今週は『世界ゴルフ選手権NECインビテーショナル』に挑戦する。先月の日本ゴルフツアー選手権宍戸ヒルズカップでの1年8ヶ月ぶりの優勝で権利を手にしたこの世界舞台でも“天然”ぶりを発揮して、強豪相手にひょうひょうと、戦い抜いてきてほしいものだ。

※日本ゴルフツアー機構が発刊しているメールマガジン(プレーヤーズラウンジ)より転載しています。

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