<中嶋常幸の復活のきっかけは靴と、あの選手と・・・>
私だって「みなみちゃん」 中嶋常幸アカデミーの秘蔵っ子がアマ日本一に
アマチュアプレーヤーの活躍が、枚挙にいとまがない2014年の女子ゴルフシーン。そのナンバーワンを決める今年の「日本女子アマチュア選手権」には、4月に史上最年少でプロツアー制覇を成し遂げた勝みなみが参戦するとあって、会場となった茨城県・大洗ゴルフ倶楽部は大会初日から大盛況。しかし準々決勝で敗退した勝ら、昨今のプロトーナメントで輝かしい成績を残している選手たちを退け、頂点に立ったのは蛭田みな美(福島・学法石川2年)だった。
36ホールマッチプレーで争われる決勝戦では、佐藤耀穂(さとう・あきほ=埼玉栄高3年)を相手に23ホールを終えた時点で3ダウンと劣勢を強いられながら、終盤に試合をひっくり返した蛭田。土壇場での粘り腰は、予選2日間のストロークプレーから健在だった。初日のラウンドはノーバーディ、3ボギーと振るわず3オーバーの67位。それが翌日にはベストスコアとなる「65」をマークし、通算4アンダーの10位でマッチプレーの決勝ラウンド進出を決めていた。
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2日目の挽回を後押ししたのは、偉大な“恩師”のひと声。兄と姉の影響を受け、3歳でおもちゃ代わりにゴルフクラブを握った彼女の成長過程には、中嶋常幸が2012年から主宰するジュニア育成プログラム「トミーアカデミー」への参加がある。今大会には5人前後の門下生が一緒に出場。初日に現地に足を運んでいた中嶋からかけられた「蛭田のノーバーディはツラいなあ…」という嘆き節が発奮材料になった。
幼いころに憧れたのは、知ってか知らずか、かつて中嶋が1986年の「全英オープン」で最終日最終組をともに回るなど、同世代のスターだったグレッグ・ノーマン(オーストラリア)。「メジャーで2位が多いと聞いて、それでもスゴイなあと思って」。過去の話を紐解いていくうちに、胸を打たれたのが「勢いがある時は怖がらずに乗っていけ、流れに逆らわないように」という言葉。“ホワイトシャーク”の生き様を表したフレーズに従い、わずかなチャンスを逃さず、見事に波を乗りこなした。
「KKTバンテリンレディスオープン」で勝が優勝し、今春から続く“みなみちゃんブーム”。名前が同じとあって「よく言われます…刺激にはなりました。まあ、いい気分はしません」と思うところもあったが、ビッグタイトルの獲得で「海外で活躍できる選手になりたい」と夢を馳せた16歳。勝負を決めた大洗GCの16番グリーンの向こうには、嵐の後の太平洋が雄大に見渡せた。(茨城県大洗町/桂川洋一)
桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール
1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw