2022/04/26進藤大典ヤーデージブック

年間王者と金メダリストがダブルス戦Vから本領発揮へ

ツアー唯一のダブルス戦「チューリッヒクラシックofニューオーリンズ」をパトリック・カントレーとザンダー・シャウフェレのペアが制しました。大会レコードの通算29アンダー(259ストローク)で初日から首位を譲らない完全優勝でした。 カリフォルニア州で生まれ育ち、カントレーが30歳、シャウフェレが28歳と年齢も近い2人。2019年「プレジデンツカップ」、昨年「ライダーカップ」と対抗戦でペアマッチが行われたときは必ずコンビを組んでいました。実力、チームワークとも申し分なし。この大会でのタッグは前年(11位)に続く2度目でしたが、“テッパン”の組み合わせだったといえるでしょう。 初日と3日目がフォアボー...
2022/04/05進藤大典ヤーデージブック

オーガスタはタイガー・ウッズが最高に映える場所

J.J.スポーンが前週「バレロテキサスオープン」で初優勝を飾り、7日(木)に開幕する「マスターズ」の最後の1枠を手中に収めました。これでフィールドが出そろった…と言いたいところですが、ことしに限っては状況が特殊です。昨年2月の自動車事故で大けがを負ったタイガー・ウッズが復帰する可能性があるのですから。 練習日とはいえ、オーガスタでボールを打つウッズの映像を見てテンションが上がったのは僕だけではないでしょう。いろいろなトーナメントで戦う様子はもちろん、アドレナリン全開で優勝する瞬間だって何度も目撃してきました。その中でもオーガスタでのウッズは別格。彼がコースにいるだけでパトロンの熱量が一気に上が...
2022/03/22進藤大典ヤーデージブック

世界11位でも物足りない? ダスティン・ジョンソンは不調なのか

サム・バーンズが「バルスパー選手権」で大会連覇を成し遂げ、自己最高に並ぶ世界ランキング10位に浮上しました。初優勝から1年も経たないうちに3勝目を挙げた25歳によってはじき出される形となったのがダスティン・ジョンソン。PGAツアー300試合出場という節目の一戦を39位で終えていた元世界ナンバーワンが、2015年3月以来7年ぶりにランクトップ10を外れることになったのです。 世界ランク1位に君臨した期間(135週)はタイガー・ウッズ(683週)、グレッグ・ノーマン(オーストラリア、331週)に次ぐ3番目。出場300試合のうちトップ10入り113試合というのも、世界最高峰のツアーにあって驚異的な記...
2022/03/29進藤大典ヤーデージブック

いま最も勢いがある男 シェフラーのロールモデルはスピース先輩

いま世界で最も勢いのある選手と言って良いでしょう。スコッティ・シェフラーが一気に世界ランキング1位まで上り詰めました。6週前の「WMフェニックスオープン」でようやく初優勝の壁を破ってからは、まさに破竹の勢い。3週前の「アーノルド・パーマー招待」で2勝目、そして「WGCデルテクノロジーズ・マッチプレー」で3勝目。本コーナーでも、この短期間で立て続けにシェフラーを取り上げることになるとは思ってもみませんでした(笑) 金谷拓実選手が世界ランクで自身より上位の選手に競り勝っていったように、番狂わせも起きやすいマッチプレー方式。世界ランク5位で大会に臨んだシェフラーも2日目にトミー・フリートウッド(イ...
2022/03/16進藤大典ヤーデージブック

強気の裏に緻密な計算? キャメロン・スミスが18番で1Wを握ったワケは

キャメロン・スミス(オーストラリア)が乗りに乗っています。2022年の初戦だった1月「セントリートーナメントofチャンピオンズ」で1950年以降のPGAツアーで最多アンダーパー記録となる通算34アンダーで優勝。そして、第5のメジャー「ザ・プレーヤーズ選手権」の頂点に立ちました。 もともと正確なアイアンショットとショートゲームに定評のあった選手。今季トップ10フィニッシュ4回は、スコッティ・シェフラーの5回に次ぐ2番目で松山英樹選手らと並ぶ数字です。自分のゴルフに対する自信も、どんどん深まってきているはず。強気でアグレッシブなプレーに磨きがかかってきた感があります。 それが顕著に出ていたのが優勝...
2022/03/01進藤大典ヤーデージブック

4000キロ超の連戦 西海岸→東海岸が大変なワケ

これも“PGAツアーあるある”と言ってもいいのかもしれません。前週「ジェネシス招待」で西海岸シリーズがひと区切りを迎え、翌週「ザ・ホンダクラシック」からフロリダスイングがスタート。選手によってスケジュールもさまざまとはいえ、連戦なら4000㎞を超える距離を移動しての戦いとなります。 試合はダニエル・バーガーが最終日、5打差を守れずに逆転負け。18ホールのうち15ホールで池が絡むPGAナショナルのチャンピオンコースはフロリダ特有の強風も相まって、どんなにリードがあっても気が抜けない難関です。最終盤には猛烈な雨も降ってタイトルの行方が混沌とする中、セップ・ストラカがオーストリア勢として初優勝をつか...
2022/02/22進藤大典ヤーデージブック

37年も破られぬ記録 難関リビエラはウッズ未勝利の地

ホアキン・ニーマン(チリ)が「ジェネシス招待」でツアー2勝目を飾りました。この大会で初日から首位を守る完全優勝は、1969年のチャーリー・シフォード以来となる快挙。弱冠20歳でチリ勢初のPGAツアー優勝を成し遂げてから約2年5カ月。新たな勲章が加わりました。 目を疑ったのは予選ラウンド終了時のスコアです。立て続けに「63」をたたき出して通算16アンダー。にわかには信じられませんでした。この大会の最多アンダーパー(72ホール)は、1985年にラニー・ワドキンスがマークした20アンダー。1980年以降のツアートーナメントで最も長く残っている記録なのですから。 いまどきのゴルフ場としては珍しく池がひ...
2022/03/08進藤大典ヤーデージブック

マキロイも疲労困憊 ベイヒルのハードセッティングを紐解く

ことしの「アーノルド・パーマー招待」は、あの「全米オープン」が引き合いに出されるほどの超ハードセッティングとなりました。ただでさえ深いラフが厄介なベイヒル。グリーンは日を追うごとにどんどん硬く、速くなって選手たちを翻弄。最終日のフィールド平均スコアは2年続けて「75」を超える数値まで跳ね上がりました。 優勝したスコッティ・シェフラーも、やはりサンデーバックナインはピンチの連続。追い込まれているはずの状況でも、キャディのテッド・スコットさんと2人で醸し出す雰囲気が抜群に良く、タフな戦いを楽しんでいるかのような明るい表情が印象的でした。テキサス育ちで「硬い」「速い」に加えて強い風も吹く“三重苦”は...
2022/02/15進藤大典ヤーデージブック

個性派レフティ支えて15年 マスターズ2勝の“黒子役”がシェフラーとタッグ

やっと、と言ってもいいでしょう。スコッティ・シェフラーが「WM フェニックスオープン」でツアー初優勝を飾りました。 ジョーダン・スピースの後輩に当たる名門テキサス大出身で、身長190㎝の大型プレーヤー。高校で「全米ジュニア」制覇、大学で「全米オープン」ローアマと“王道”を歩み、プロ転向後もすさまじいスピードで出世街道をひた走ってきました。 下部コーンフェリーツアー最優秀選手として昇格を果たした2019-20年シーズン。コリン・モリカワが初出場初優勝を遂げた「全米プロ」でダスティン・ジョンソンと最終日最終組を回ったのがシェフラーでした。6試合でトップ5入りするなど、ポイントランキング5位に食い込...
2022/01/18進藤大典ヤーデージブック

PGA初タッグで予選落ちから9年 松山英樹が積み上げてきたモノ

仕事でホノルルに来ていたため、昨年10月「ZOZOチャンピオンシップ」に続いて現地で松山英樹選手の優勝を見届けることができました。喜び、興奮とともに少しの驚きもありました。 というのも、「ソニーオープンinハワイ」は過去8回出場してトップ10入りがなく、最高は2020年の12位。本人がインタビューで話していたように苦手意識もあるコースでの勝利だったのですから。選手として、またひとつ上の段階に上がった気がします。 実際にコースで見た松山選手からは、これでもかと“オーラ”が出まくっていました。“この会場にいる誰にも負けないよ”と背中で語っているかのよう。代名詞ともいえるアイアンの精度はもちろん、高...
2022/02/08進藤大典ヤーデージブック

203試合目の歓喜 トム・ホジーが貫いた堅実マネジメント

「AT&Tペブルビーチプロアマ」で初優勝を飾ったトム・ホジーがPGAツアーに初めて出場したのは2011年「RBCカナディアンオープン」でした。直前、3部ツアーにあたるPGAツアーカナダ「プレーヤーズカップ」を制してつかんだ切符でしたが、あえなく予選落ち。2部ツアーを経て2014-15年シーズンから最高峰の舞台へ本格参戦を果たしたものの、3季連続でシード確保に失敗。PGAツアー203試合目での初タイトルは、長い下積みが報われた瞬間でした。 通算200試合目までの最高成績は1度きりの2位(2019年「ア・ミリタリー・トリビュート at ザ・グリーンブライアー」)。それが2週前の「ザ・アメリカンエキ...
2022/01/25進藤大典ヤーデージブック

異なるコーチで2シーズン連続V スワッフォードの歩み

ハドソン・スワッフォードが「コラレスプンタカナリゾート&クラブ選手権」で3年ぶりの優勝を飾ったのが2020年9月末のこと。「メジャー・メディカル・エクステンション」(公傷制度)の適用を受け、残り2試合とリミットが迫る中での大きな1勝でした。 そして、初Vの舞台でもある「ザ・アメリカンエキスプレス」での大会2勝目で2シーズン連続優勝。肋骨、足の裏と度重なるけがから復活して以降は充実した歩みに映りますが、実際はかなり苦しんでいたようです。 29試合に出場した昨季は予選落ちが17試合。昨年のこの大会から5試合連続で予選落ちを喫すると、ディフェンディングチャンピオンとして臨んだ「コラレス-」で6位。し...
2022/02/01進藤大典ヤーデージブック

最終日最終組でもう一度 ジェイソン・デイの復活が見たい

「ファーマーズインシュランスオープン」はルーク・リストが初優勝を飾りました。ルーキーだった2013年にドライビングディスタンスで1位(306.3yd)に輝くなど、早くから注目された長距離砲。37歳となった今季も全体7位(316.7yd)につける飛距離を武器にツアー屈指のロングコースで知られるトリーパインズを攻略しました。 最終組から8組前と比較的プレッシャーもかからない位置で伸び伸びと「66」をマーク。昨季の新人王ウィル・ザラトリスをプレーオフで破るドラマは、遅咲きのキャリアを彩る感動的なシーンとなりました。 17年にこの大会でツアー初タイトルを掲げ、昨年6月に当地で開催された「全米オープン」...
2020/08/05進藤大典ヤーデージブック

5年前はパー5 今大会は最長500yd超え折り返しのパー4に

TPCハーディングパーク 9番パー4(515yd) 今回の「全米プロゴルフ選手権」がメジャー初開催となるTPCハーディングパークは、2015年に「WGCキャデラックマッチプレー」の舞台となったコースです。09年には「プレジデンツカップ」も行われており、松山英樹選手とともにWGCに挑んだ際は、その「プレジデンツカップ」のホールロケーションなどを参考データとして持ち込みました。 しかし、実際には2つの大会で異なるピン位置を採用したホールもあり、肝を冷やしたことを覚えています。世界ランキング1位のジャスティン・トーマスは先週、このコースについて事前情報を持ち合わせていないとコメントしていましたが、プ...
2020/08/04進藤大典ヤーデージブック

仕事は膨大、勝つ喜びは無限大 世界一決定戦メジャーの舞台裏

いよいよ「全米プロゴルフ選手権」が始まります。来月には「全米オープン」、11月には「マスターズ」が開催されますが、この2試合は2020-21年シーズンの試合にカテゴライズされていますから、今季唯一のメジャーということになります。 会場はカリフォルニア州のTPCハーディングパーク。早速ピックアップホールの解説…に移りたいところですが、せっかくの今シーズン1試合限りのメジャートーナメント。まずは僕自身が松山英樹選手のキャディとして目の当たりにしてきた、世界一を決める舞台の裏側を振り返ってみたいと思います。 特にことしは各ツアーが何カ月ものシーズン中断を強いられ、世界中のトッププロが、ここに照準を合...
2020/08/06進藤大典ヤーデージブック

栄光への最終関門 優勝争いならリスク覚悟の大勝負も

TPCハーディングパーク 18番パー4(480yd) 今季唯一のメジャー「全米プロゴルフ選手権」が、いよいよ6日(木)に開幕します。前半の難所となる9番に続いて見ていくのは、フィニッシングホールの18番。2015年に「WGCキャデラックマッチプレー」が開催されたときは14番だったミドルホールが、夢舞台のフィナーレを飾ります。 左ドッグレッグの左サイドはグリーンまで湖が広がっています。ティショットは、正面のフェアウェイバンカーに向かってレイアップするのが基本的なプラン。とはいえ、左のペナルティエリアを避けて右に逃げれば逃げるほど、2打目に残る距離は長くなります。勝負どころではリスクを承知の上で...
2020/08/19進藤大典ヤーデージブック

女子メジャー初開催 “全英一短い”難関ポステージスタンプ

ロイヤルトゥルーンGC 8番パー3(114yd) 2001年に「全英女子オープン」(現AIG女子オープン)がメジャーに昇格して以降、昨年までに13回が過去男子の「全英オープン」を開催したコースで行われてきました。ターンベリー、ロイヤルリザム&セントアンズ、ロイヤルバークデール、セントアンドリュース オールドコース、カーヌスティ、ロイヤルリバプール…ことしはロイヤルトゥルーンがそのリストに加わります。 松山英樹選手のキャディとして挑んだロイヤルトゥルーン開催の2016年は壮絶な大会でした。目まぐるしく変わる天候は、「1日の中に四季がある」と言われるスコットランドならでは。時に海風が突風のように吹...
2020/08/20進藤大典ヤーデージブック

16億円争奪サバイバルがスタート デシャンボーならバンカーは関係なし?

TPCボストン 18番パー5(530yd) PGAツアーのシーズンを締めくくるプレーオフが始まります。1500万ドル(約16億円)という夢の超ビッグボーナスをかけたシリーズは昨季から全3試合に変更され、1年ごとにニューヨークエリアと入れ替えることになった初戦「ザ・ノーザントラスト」の舞台も今季はTPCボストンの番。4試合制だったときは第2戦を開催していました。 ボストンから南へ60㎞ほどの場所にあり、この時期は空気もカラッとしていて過ごしやすい気候です。ショットメーカー向きのコースは、フェアウェイキープ、そして何よりアイアンの精度がキーとなります。グリーン自体は小さくないですが、硬い上にアンジ...
2020/08/13進藤大典ヤーデージブック

暑い! 長い! パー3 ティショットは5Wも

セッジフィールドCC 12番パー3(235yd) PGAツアーのレギュラーシーズンも、いよいよ最終戦です。舞台はとにかく暑いノースカロライナ州グリーンズボロ。カリフォルニア州での「全米プロゴルフ選手権」は連日気温15度前後の中でのプレーでしたから、3時間の時差も重なり、連戦の選手はタフさが求められます。飛距離が伸びてショットの番手も、ひと番手は変わるため、対応力が試されます。 2013年に松山英樹選手が主催者推薦で出場してノンメンバーからシード獲得を決めた、僕にとっても印象深い試合です。例年プレーオフ直前の試合ということでスキップするトップ選手も少なくない中、世界トップクラスの仲間入りを果たし...
2021/03/30進藤大典ヤーデージブック

色あせない2013年「全米オープン」 ビリー・ホーシェルは“超ポジティブ”

松山英樹選手のプロ入り後初の海外遠征となった、2013年「全米オープン」予選ラウンドのことです。舞台はメリオンGC。ビリー・ホーシェル、ジョーダン・スピースとの若手注目株3人のペアリングでした。 ホーシェルはその年の「チューリッヒクラシック」で初優勝を飾ったばかり。フロリダ大でもトップアマチュアとして鳴らした素晴らしい選手とは聞いていましたが、実際のプレーは想像以上。アイアンショットの衝撃は、いまも脳裏に焼き付いています。 ターゲットに向かって、めくれ上がるようなスピンの利いたショットを繰り出すボールストライカー。アスファルトのような硬いグリーンにだってボールを止めてしまうのではないかと思うほ...