2021/10/05進藤大典ヤーデージブック

サム・バーンズの“キレキレ”ショットで思い出す伝説の「61」

サム・バーンズが余力すら感じさせるプレーで「サンダーソンファームズ選手権」を制しました。 最終日に優勝争いを演じた多くの選手が下部コーンフェリーツアーからの昇格組。1打差2位でフィニッシュしたニック・ワトニーもツアー5勝の実力者ですが、けがを境に低迷して今シーズンは一度しか使えない生涯獲得賞金50位以内という資格を行使しての参戦と後がない立場です。 一方のバーンズは出場選手中トップの世界ランキング25位。下部ツアーから上がって3シーズン目の昨季、5月「バルスパー選手権」で初優勝、最終戦「ツアー選手権」にも初めて進出して飛躍を遂げました。 松山英樹選手が惜敗した8月「WGCフェデックス セントジ...
2021/09/08進藤大典ヤーデージブック

【進藤キャディ解説】強靭メンタルでつかんだ16億円 カントレーが乗り越えてきたモノ

メジャー6試合を含め50試合が開催されたPGAツアーの“スーパーシーズン”は、パトリック・カントレーが年間王者に輝き、ビッグボーナス1500万ドル(約16億4000万円)を獲得して幕を閉じました。 初日10アンダー首位スタートというポイントランキング1位のアドバンテージは、裏を返せばプレッシャーでもあります。その重圧をものともせず、トップを守り切る見事な完全優勝でした。 プレーオフシリーズ第2戦「BMW選手権」からの2連勝の要因は、さえわたっていたパッティングと強靭なメンタルでしょう。 ブライソン・デシャンボーと激闘を演じた前週に続き、最終戦は世界ランク1位ジョン・ラーム(スペイン)との一騎打...
2021/09/21進藤大典ヤーデージブック

“中1週”でリスタート 長丁場を戦い抜くPGAツアーの猛者たち

PGAツアーの2021-22年シーズンが開幕しました。前シーズンの最終戦はわずか2週前のこと。世界最高峰のツアーでしのぎを削る選手たちに求められるのは、技術だけではありません。ロングシーズンを戦い抜く体力と精神力、パフォーマンスを維持もしくは向上させていくための継続的なトレーニング、4大メジャーをはじめとするビッグトーナメントにピークを合わせるためのスケジューリングなど多岐にわたります。 数カ月のオフを挟むカレンダーであれば、体を休めつつシーズンの戦いを整理し、新たな目標を立て、腰を据えて取り組む時間があります。PGAツアーで生き残っていくためには目の前の試合を全力で戦いながら常に先を見据え、...
2021/10/26進藤大典ヤーデージブック

コロナ禍を吹き飛ばす“鳥肌イーグル” 松山英樹は役者が違った

まさに役者が違いました。松山英樹選手が「ZOZOチャンピオンシップ」でPGAツアー通算7勝目を飾りました。2019年大会で優勝争いを演じたタイガー・ウッズの足跡をたどるように、同一年の「マスターズ」と「ZOZO」を制覇。2017年「WGC ブリヂストン招待」最終日にウッズのコースレコードに並ぶ「61」をマークして逆転勝ちを収めたときもそうでしたが、同じ日本人として誇らしい気持ちになります。 今回は仕事で会場に足を運んでいたため、久しぶりに生で松山選手の優勝を見届けることができました。本人がインタビューで繰り返していたように、練習場を見る限り少しボールが散らばっている感じはありましたし、状態その...
2021/11/02進藤大典ヤーデージブック

公傷クリアへ残り2戦 うれしいダニー・リーの復活

ルーカス・ハーバート(オーストラリア)の初優勝で幕を閉じた「バミューダ選手権」。僕は久しぶりに上位で戦うダニー・リー(ニュージーランド)を見てうれしくなりました。 最終日の後半11番までは首位だっただけに、本人の中では2015年「ザ・グリーンブライアークラシック」以来のツアー2勝目に届かなかった悔しさも大きいかもしれません。 しかし、昨季は出場24試合でトップ10入りゼロ。予選落ちが12試合を数え、棄権も4試合ありました。肩のケガで「マイナー・メディカルエクステンション(メジャー・メディカルエクステンションより出場優先順位の低い公傷制度)」の適用を受け、まさに瀬戸際にいるのです。 雨と風が吹き...
2021/11/16進藤大典ヤーデージブック

「オレが優勝させてやる」 谷原秀人とつかんだ初Vの記憶

これまでPGAツアーから話題をピックアップしてきた本コーナーですが、今回は特別編です。「三井住友VISA太平洋マスターズ」で谷原秀人選手が5年ぶりの優勝。僕にとっては、プロキャディ人生で初めて優勝をサポートさせてもらった大恩人。黙っていられず(笑)、スペシャル版として筆を執ることになりました。 「オレがお前を優勝させてやる」。専属キャディとしてともに戦うことになった2006年、最初にそう言われたことをはっきりと覚えています。 そして、6月の「JCBクラシック仙台」で優勝。すでに夢見心地だった僕は、表彰式でスピーチする谷原選手に突然名前を呼ばれて驚きました。「きょう勝てたのは君のおかげです、進藤...
2021/11/24進藤大典ヤーデージブック

【進藤大典キャディ解説】松山英樹の快挙に感涙した2021年 “あの選手”の完全復活にも期待の22年

テーラー・ゴーチの初優勝で幕を閉じた「ザ・RSMクラシック」。この大会で2021年のPGAツアートーナメントは全日程を消化しました。 12月はタイガー・ウッズが主催する「ヒーローワールドチャレンジ」、ダブルス戦の「QBEシュートアウト」といったツアー外競技を残すのみ。2021-22年シーズンは来年1月にハワイで開催される「セントリートーナメントofチャンピオンズ」から再開となります。 振り返ってみれば、これまでにないほど濃密な一年でした。松山英樹選手の「マスターズ」初制覇、日本開催「ZOZOチャンピオンシップ」凱旋Vの感動と興奮が、まるで昨日のことのようによみがえります。 ジョーダン・スピース...
2021/08/31進藤大典ヤーデージブック

「ツアー選手権」8年連続進出の偉業 イーストレイクは一年の頑張りが報われる場所

松山英樹選手が最終戦「ツアー選手権」に8年連続で進出する快挙を達成しました。これは本当にすごい記録です。真っ先にそのすごさをお伝えしたいところですが、プレーオフシリーズ第2戦「BMW選手権」もプレーオフ6ホール目までもつれる激闘でした。まずは、そちらから振り返ります。 最終日は2サム最終組を回ったパトリック・カントレーとブライソン・デシャンボーの一騎打ち。4日間を通してパッティングのタッチが抜群だったカントレー。正規ラウンドの上がり3ホールは、外せばデシャンボーの勝利が決まりかねないクラッチパットの連続でした。 2019年「シュライナーズホスピタルforチルドレンオープン」ではグリーン上で神が...
2021/08/25進藤大典ヤーデージブック

【進藤キャディ解説】1975日ぶり2勝目のディナーは寿司 トニー・フィナウは日本食が大好物

6月に仕事の関係で米国を訪れたとき、トニー・フィナウと2度ほど夕食のテーブルを囲む機会がありました。頼んだメニューといえば、焼きそば、ラーメン、うどん、焼きおにぎり(炭水化物ばっかりですね、笑)、揚げ出し豆腐×3皿…とにかく日本食が大好きなんです。身長193㎝の長身選手で、学生時代にプレーしていたバスケットボールでも大学からスカウトされたほどのアスリート。食べる量もすさまじくて驚きました。 そのフィナウが「ザ・ノーザントラスト」で優勝しました。ツアーデビュー翌年の2016年「プエルトリコオープン」で初優勝してから実に1975日。長い長い2勝目までの道のりでした。ちなみに祝勝ディナーは「寿司だね...
2021/10/19進藤大典ヤーデージブック

マキロイの“横綱相撲”とファウラー復活の予感

ロリー・マキロイ(北アイルランド)が「ザ・CJカップ」で永久シード獲得の条件となるツアー通算20勝の節目を飾りました。 最近のマキロイは1日の爆発力は健在の一方、要所で攻めすぎてしまう場面があったり、安定感に欠ける部分がありました。8歳のときから地元の北アイルランド・ベルファストでマイケル・バノンさんに師事してきましたが、コロナ禍で直接チェックしてもらうことも難しくなり、今年3月からは新たにピート・コーウェンさんをコーチに迎えました。 5月「ウェルズファーゴ選手権」で2019年以来の優勝。20歳だった2010年にPGAツアー初優勝を飾った舞台で完全復活を印象づけたと思いきや、その後は波に乗り切...
2021/08/03進藤大典ヤーデージブック

【進藤キャディ解説】シャウフェレ、松山英樹、マキロイ…大物のメダル争いが高める五輪ゴルフの価値

松山英樹選手は「東京五輪」のメダル獲得まであと一歩でした。僕がキャディをしていたときから東京でオリンピックが開催されることは決まっていましたから、彼がどれだけこの舞台にかけていたか、多少なりとも分かっているつもりです。本当に惜しかったですし、僕も悔しい気持ちでいっぱいになりました。 今週には早くもWGCがあり、さらにはプレーオフシリーズと大きな戦いは続いていきます。新型コロナ陽性となってからの復帰戦でもありましたし、必ずこの経験を糧として、秋の陣で爆発してくれると信じています。 金メダルに輝いたザンダー・シャウフェレは素晴らしかったですね。松山選手と最終日最終組を回った「マスターズ」が記憶に...
2021/08/17進藤大典ヤーデージブック

ファウラー、ローズが125位に入れない PGAツアーの過酷なサバイバル

ケビン・キズナーが「ウィンダム選手権」を制しました。 ノースカロライナ州グリーンズボロにあるセッジフィールドCCは7131yd(パー70)と距離が短く、タイガー・ウッズが初めて大会に出場して大いに盛り上がった2015年は51歳のデービス・ラブIIIが優勝したことでも話題になりました。ショットの正確性とアンジュレーションのきついグリーン攻略がキーとなります。 ドライビングディスタンス289.2ydはツアー169位のキズナーですが、パットのスコア貢献度を示す「ストロークゲインド・パッティング」では上位常連のパター巧者。同スタッツで2016年に最高3位を記録すると、その後も30位→12位→20位→1...
2021/08/10進藤大典ヤーデージブック

東京五輪から147ホール目 松山英樹がプレーオフで見せたショットはすごかった

松山英樹選手が2週連続で見せ場を作ってくれました。週末に「64」「63」をそろえての大まくり。最終日9打差スタートからプレーオフまで持ち込む爆発力は圧巻でした。 ハードなセッティングに風も吹いた最終ラウンドのフィールド平均スコアは「70.923」と4日間で初めてオーバーパーを記録。ノーボギーが松山選手とコリン・モリカワ、今シーズンメジャーを勝った2人しかいなかったことも、難度の高さを物語っているでしょう。 特にパッティングが冴えていた最終日ですが、注目したいのはプレーオフ2ホール目のセカンドショットです。左サイドに広がる池のプレッシャーをより感じる左ピン。ティショットで右ラフに入れたボールは見...
2021/07/28進藤大典ヤーデージブック

【進藤キャディ解説】フェードボールが“栄光への架け橋” カスミの難関18番で金メダルをつかめ

29日(木)に男子から開幕を迎える5年ぶりのオリンピックゴルフ競技。埼玉県の霞ヶ関CCを舞台に世界中から集まった選手たちが栄光のメダルをかけて熱い戦いを繰り広げます。1番を中心にアウトコースをチェックした前回に続き、勝負の行方を左右するインコースを見ていきましょう。 13番(男子398yd、女子381yd)、15番(男子403yd、女子350yd)は短いミドルホールですから、積極的にバーディを狙っていきたいところ。17番(男子343yd、女子311yd)もパワーのある男子選手ならワンオンが期待できます。 バックナインで唯一のロングホールとなる14番(男子625yd、女子544yd)ですが、ここ...
2021/07/27進藤大典ヤーデージブック

伸ばし合い必至? 東京五輪会場・霞ヶ関CCに行ってみた

5年ぶりのオリンピックが、29日(木)にいよいよ始まります。まず男子の松山英樹選手と星野陸也選手、翌週女子の畑岡奈紗選手と稲見萌寧選手にはぜひとも金メダル獲得を目指して頑張ってもらいたいですね。僕もいても立ってもいられず、つい先日、舞台となる埼玉県の霞ヶ関CCを下見する機会をいただきました。 大改修を行ったコースは、最後の仕上げにも細心の注意を払っていたと聞きます。開催に向けて3月から週末にメンバーのみのプレーに限定、さらに5月からはクローズしてメンテナンスを徹底。下見の際もターフが一つもなく、グリーンに至っては足を踏み入れるのも恐れ多いキレイさで驚きました。 梅雨が明けたら一気に猛暑日が増え...
2021/07/13進藤大典ヤーデージブック

全英直前 当時19歳のジョーダン・スピースが見せた覚悟

ルーカス・グローバーが「ジョンディアクラシック」を制しました。直近の優勝は2011年「ウェルズファーゴ選手権」。2020-21年シーズンでは、開幕戦で11年ぶりVを飾ったスチュワート・シンクに次ぐブランクの長さとなります。 2016年にはパーオン率1位(71.63%)になったこともあるショットメーカー。けがや不調で15、18年と下部ツアーとの入れ替え戦も経験しました。40歳を超えてベテランの域に差し掛かり、「20代の頃より、いまの方が努力しているし、効率的な取り組みができている。100%、(優勝者として)戻って来られる確信があった」と言い切る自負がありました。 今年2月からは新たなコーチにも師...
2021/07/20進藤大典ヤーデージブック

コリン・モリカワが“神パット”を連発できたワケ

「全英オープン」最終日、コリン・モリカワのプレーは神がかり的でした。昨年「全米プロ」に続いて初出場での優勝。大会デビュー戦で2つのメジャータイトルを獲得したのは史上初の快挙です。 前週「スコットランドオープン」では71位と苦戦していましたが、リンクスを経験し、時差ボケ調整も済ませてメジャーへ乗り込んだ意味は大きかったと思います。 優勝を争ったジョーダン・スピースがコメントしていたように、大観衆の中で勝ち切ったことですさまじい総合力を見せつけられた思いです。全米プロは無観客の中で逆転V。今回は大観衆の中で首位のルイ・ウーストハイゼン(南アフリカ)を捉え、サンデーバックナインでスピースらの追い上げ...
2021/06/16進藤大典ヤーデージブック

【進藤大典キャディ解説】全米オープンっぽくない? 開幕直前のトーリーパインズを歩いてみた

今週、僕は仕事の関係で「全米オープン」が行われるカリフォルニア州トーリーパインズGCに来ています。せっかくなので現地から最新情報をお届けできればと思い、松山英樹選手のキャディとして戦っていたときのようにコースを歩いてチェックしてみました。 このサウスコースは「ファーマーズインシュランスオープン」の舞台として毎年のように訪れていた場所です。「全米オープン」をホストするのは2008年以来。ひざに痛みを抱えていたタイガー・ウッズがプレーオフ19ホール目でロッコ・メディエイトに競り勝った伝説の大会ですね。 「全米オープン」といえば、サディスティックなまでのセッティングが議論の的になるのが“恒例行事”。...
2021/06/08進藤大典ヤーデージブック

ラームの連覇消滅にやるせなさ カントレーは5分間の中断を味方に

「ザ・メモリアルトーナメント」の会場、ミュアフィールドビレッジGCは第3ラウンドが終わったあたりから騒然としていました。後続に6打差をつけて単独首位を走っていた前年覇者のジョン・ラーム(スペイン)が新型コロナウイルス感染を調べる検査で陽性と判定されて棄権を余儀なくされました。 ラームは4月の「マスターズ」直前に第1子が誕生したばかり。拠点を置くアリゾナ州では3月下旬にすべての成人を対象とするワクチン接種がスタートしていましたが、家族への配慮などから接種していなかったという情報があります。 陽性者との濃厚接触者に認定され、無症状ながらPGAツアーの規則に従い、場内施設利用の制限と毎日の検査を条件...
2021/06/01進藤大典ヤーデージブック

“飛んで曲がらない”コクラック 完全アウェーでスピース撃破

「チャールズ・シュワブチャレンジ」でジェイソン・コクラックが地元テキサスのジョーダン・スピースに競り勝ちました。 決勝ラウンド2日間とも2サム同組でのプレー。ギャラリー動員の“日常”が徐々に戻ってきつつあるPGAツアーでは、ホームとアウェーの空気が再びはっきり感じられるようになってきました。米ツアー屈指のスター選手であるスピースが、もっとも強烈な後押しを受ける地での優勝争い。完全アウェーの36ホールの末に勝ち切り、大きな自信になったことでしょう。 スピースにとっては、ホームの期待が重圧になった部分もあったと思います。個人的な“伏線”として挙げたいのが、前日3日目の最終18番で奪ったバーディ。コ...