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進藤大典 PGAツアー・ヤーデージブック読解

「オレが優勝させてやる」 谷原秀人とつかんだ初Vの記憶

これまでPGAツアーから話題をピックアップしてきた本コーナーですが、今回は特別編です。「三井住友VISA太平洋マスターズ」で谷原秀人選手が5年ぶりの優勝。僕にとっては、プロキャディ人生で初めて優勝をサポートさせてもらった大恩人。黙っていられず(笑)、スペシャル版として筆を執ることになりました。

「オレがお前を優勝させてやる」。専属キャディとしてともに戦うことになった2006年、最初にそう言われたことをはっきりと覚えています。

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そして、6月の「JCBクラシック仙台」で優勝。すでに夢見心地だった僕は、表彰式でスピーチする谷原選手に突然名前を呼ばれて驚きました。「きょう勝てたのは君のおかげです、進藤くん!」。促されるまま18番グリーンに上がり、なぜか僕もマイクを握ることに。表彰式で優勝者と一緒にインタビューされるキャディなんて、かなり珍しかったと思います。

後になって、本人から当初僕にスピーチまでさせるつもりはなかったことを聞きました。「でも、面白いから、このまましゃべらせようと思った」。みんなを楽しませることが好きな谷原選手らしい演出ですね。

翌07年には初めて「マスターズ」にも連れて行ってもらいました。常にポジティブな谷原選手。18、19年と挑戦した欧州ツアーで毎週のように違う国でプレーしているときもそうでしたが、慣れない環境でのゴルフも、初めてトライするような食べ物も、世界中どこに行っても楽しめる性格の持ち主です。

初のオーガスタで初日「85」と崩れた夜、あんなに落ち込んでいる谷原選手を見たことは後にも先にもありません。だからこそ、17年の「マスターズ」に再び出場したとき、松山英樹選手のキャディだった僕も感慨深い気持ちでした。

かつて一度跳ね返された大舞台へカムバックできたのも、フェード一本からのドローボール習得をはじめ、間違いなく練習の賜物。キャディだったときは谷原選手の家に泊まらせてもらう機会も多かったのですが、試合を終えた翌日、オープンウィークの月曜日は必ず午前6時に目覚ましをかけ、トレーニングを始めるのです。

日本ツアー屈指の名手と呼ばれるパッティングも、家の庭にグリーンを作って練習できるようにしたり、膨大な時間を費やして磨かれたもの。よく話していたのは、「パターは絶対にタッチだ」ということ。これは僕もプライベートのラウンドで胸に刻んでいる金言です(笑)。体が壊れるんじゃないかと心配になるくらいの練習量、スイングやクラブへの探求心…本当に頭が下がります。

谷原選手は東北福祉大の2学年先輩、今回キャディを務めていた谷口拓也さんも1学年先輩に当たります。谷口さんも四国ジュニアに出場した中学時代から知っている憧れの先輩。ツアー2勝のプロがコーチ、キャディとして選手のサポートに徹することは簡単ではなかったはずです。

献身的な支えはプレーヤーにとっても心強かったと思いますし、そういう強い絆で結ばれたチームを作れたのも、後輩みんなから慕われる“兄貴分”谷原選手の人柄があってこそではないでしょうか。最終18番でウィニングパットを沈めた2人のシンクロするガッツポーズを見て、僕も目頭が熱くなりました。

敗れた金谷拓実選手も悔しいけど、どこか清々しいような表情をしていたのが印象的。スポーツマンシップにあふれる気持ちのいい戦いを見せてくれた2人に拍手を送りたいです。(解説・進藤大典)

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進藤大典(しんどう・だいすけ)
1980年、京都府生まれ。高知・明徳義塾を卒業後、東北福祉大ゴルフ部時代に同級生の宮里優作のキャディを務めたことから、ツアーの世界に飛び込む。谷原秀人、片山晋呉ら男子プロと長くコンビを組んだ。2012年秋から18年まで松山英樹と専属契約を結び、PGAツアー5勝をアシストした。

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