<保存版>松山英樹のオーガスタナショナルGC18ホール解説
2021年 マスターズ
期間:04/08〜04/11 場所:オーガスタナショナルGC(ジョージア州)
吉兆!? オーガスタでスピースの“ぼやき節”は聞こえるか
ジョーダン・スピースは、やはりオーガスタナショナルGCに愛された男なのかもしれません。「バレロテキサスオープン」での1351日ぶりとなる復活優勝。8日(木)に開幕するメジャー「マスターズ」へ最高の形で臨むことができます。
4日間のフェアウェイキープ率51.79%はフィールド78位、パーオン率58.33%は同66位と優勝した選手とは思えない数字が並んでいます。それでもスクランブリング80%、サンドセーブ率100%とリカバリーはさすが。得意のパッティングもパーオンホールの平均パット数「1.524」は堂々の1位。卓越したマネジメントとショートゲームという強みをしっかり生かしての勝利でした。
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僕が松山英樹選手のキャディとしてPGAツアーに参戦していた時期は、スピースが若くして頂点に駆け上がったタイミングとも重なっています。
数々の神がかり的なプレーとともに驚かされたのが、キャディのマイケル・グレラーさんとの会話の内容。とにかく自分の感情を素直に言葉に出します。予選通過がかかる残り数ホールというような状況で、バーディパットを打つ前から「入る気がしない」と言っていたときにはビックリしました。
注目選手ですから中継カメラがついて歩くことも多く、そういった弱気な発言をマイクに拾われようがお構いなし。試合でぶつかるライバルたちに対しては、そういった部分を隠したいのが普通のプレーヤー心理。珍しいタイプの選手です。
コロナ禍で無観客が続いた昨季を経たからこそのカムバックという見方もできます。常に大ギャラリーに囲まれてきたスピースにとって、自分のプレーや課題に集中できる期間がプラスに働いた面もあったはず。“目ヂカラ”が戻ってきた最近の表情から自信をつかみつつある雰囲気も伝わってきました。そして、最後は地元テキサスのファンも後押ししてくれました。
こうなると、「マスターズ」での活躍に期待が高まります。過去7度の出場で優勝1回、2位タイが2回、3位も1回と相性の良さは誰もが認めるところでしょう。
個人的にポイントとして挙げたいのが、18番のティショット。左から林がせり出し、打ち出しを間違えたら致命傷となるホール。針の穴を通すようなショット精度が求められます。フェアウェイは左から右に傾いていて、左のバンカーを嫌がれば、右の林に入るリスクが増していく。左風のときは特に難しくなります。
実はスピースにとって、この18番は“鬼門”となっています。連覇がかかっていた2016年大会は最終日12番(パー3)での悲劇があまりにも有名ですが、単独首位で終えた3日目に18番でダブルボギーをたたいています。ピン位置は忘れもしない左奥。ティショットを右に曲げ、2打目は出すだけ。下の段に3オンしての3パットでした。結果として、これが日曜日のアーメンコーナーでのプレーに重圧をかける遠因にもなりました。
18年大会最終日でも9バーディを奪う猛チャージを見せながら、18番でティショットのミスから唯一のボギーをたたき、2打差3位でフィニッシュ。調子が良い時ほど、つまずいてきたホールなのです。
裏を返せば、4日間を通じて18番のティショットをけがなく乗り切ることができたときには再びグリーンジャケットに手が届くかもしれません。(解説・進藤大典)
- 進藤大典(しんどう・だいすけ)
- 1980年、京都府生まれ。高知・明徳義塾を卒業後、東北福祉大ゴルフ部時代に同級生の宮里優作のキャディを務めたことから、ツアーの世界に飛び込む。谷原秀人、片山晋呉ら男子プロと長くコンビを組んだ。2012年秋から18年まで松山英樹と専属契約を結び、PGAツアー5勝をアシストした。