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2021年 AT&Tペブルビーチプロアマ
期間:02/11〜02/14 場所:ペブルビーチGL ほか(カリフォルニア州)

進藤大典 PGAツアー・ヤーデージブック読解

“一匹狼”ダニエル・バーガーを変えたケガ

朝からすごいショットを見ました。「AT&Tペブルビーチプロアマ」を制したダニエル・バーガー。最終18番(パー5)は前日OBでダブルボギーをたたいたホールでした。加えて最終組の1組前をプレーし、マーベリック・マクネリと並ぶトップタイというシチュエーション。想像を絶するプレッシャーがかかっていたはずです。

左サイドに広がる海を避けようにも、狭いフェアウェイの右サイドにそびえる1本の木が厄介なポイント。実際、最終組のトム・ホジーも、この木の枝に引っ掛かったボールを見つけられずに紛失球で打ち直していましたね。美しい景色が広がるペブルビーチですが、ティイングエリアに立つと、映像からはわからない威圧感に襲われるのです。

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前日の悪夢、そして優勝争いの重圧をねじ伏せてフェアウェイを捉え、左ピンに対しても右へ逃げることなく2オン。イーグルパットまで決めきる、圧巻のフィニッシュでした。

PGAツアーの新人王に輝き、2016、17年と「フェデックスセントジュードクラシック」を連覇。同学年のスタープレーヤー、ジョーダン・スピースジャスティン・トーマスほどの派手さはなくても、順調にキャリアを積み重ねてきました。

当時の印象は“一匹狼”。コースを離れても仲がいいスピースとトーマスのように誰かと群れることもありませんでしたし、神経質な性格ゆえにほかの選手と衝突することもありました。いまだから白状しますが、僕もどちらかといえば苦手なタイプでした(バーガー選手、ごめんなさい!)。

左手首のケガに悩まされ、ポイントランキング131位に沈んだ18―19年シーズンを境にプレー面で明らかな進化が見えます。

本人の言葉を借りれば、「以前の自分は調子に乗ってゴルフをなめていた部分があった」「ゴルフが好きだと思ったことは一度もなかった。(故障で)休まざるを得なくなったら、ゴルフができる幸せを実感した」

19年の途中からスピースと同じキャメロン・マコーミックさんに師事。「彼がいなければ、今ここにいない。ショートゲームやパッティング、ゴルフ全般の見方が変わった」とコーチへの感謝を口にしていましたが、同じくらいバーガー自身の意識改革も大きかったのではないでしょうか。

昨季はスコアへの貢献度を示す「ストロークゲインド」でショット、アプローチ、パットとすべての項目で35位以内に入り、トータルでは6位とオールラウンダーぶりを発揮。昨シーズンは32ラウンド、今季も26ラウンド連続オーバーパーなしとツアートップの記録を継続中。見違えるレベルの安定感です。

新型コロナによる中断から再開後のPGAツアーで複数回優勝を達成したのはダスティン・ジョンソンジョン・ラーム(スペイン)、コリン・モリカワブライソン・デシャンボー、そしてバーガーの5人しかいません。この間トップ10入りが7試合、予選落ちもわずか2試合。取り組みの変化は、あらゆる数字に成果として表れています。

苦しい時期を乗り越え、メンタル的にも充実の感が漂う27歳。“とがっていた”若手が少しずつ成熟したゴルファーへの階段を上っていく。その過程を楽しみに、これからもバーガーのプレーを追っていきたいと思います。(解説・進藤大典)

進藤大典(しんどう・だいすけ)
1980年、京都府生まれ。高知・明徳義塾を卒業後、東北福祉大ゴルフ部時代に同級生の宮里優作のキャディを務めたことから、ツアーの世界に飛び込む。谷原秀人、片山晋呉ら男子プロと長くコンビを組んだ。2012年秋から18年まで松山英樹と専属契約を結び、PGAツアー5勝をアシストした。

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