【WORLD】7000ヤードを切るメリオンの難易度
Golf World(2013年6月10日号)texted by David Barrett
「全米オープン」が33年ぶりに米国を代表するメリオン・イーストで開催されるのは喜ばしい限りだ。しかし今大会開幕を前にして聞かれる声は、メリオンでのトーナメント開催への興奮よりも、疑問を投げかけるそれの方が多いようだ。
何よりも懸念される点は、昨今の選手権を実施するのに、コース自体が小さいメリオンが適しているのかどうかということだ。この疑問に対する明確な答えは、正直なところ6月16日の開幕初日まではわからないと言う他にない。しかしながらコース全体を通して見たところ、過度に不安がる、或いは眉間にしわを寄せる必要は無いのではないだろうか。1981年の全米オープンが成功したように、今回もメリオンで大会が成功すると信じる要因は数多く存在しているからだ。
まずもって当時の6544ヤードという距離の短いコースという問題は解消。メリオンはコースを6996ヤードにまで伸ばした。それでも現代では距離が短いと見なされるが、メリオンは常にショートコースと言われてきた。プレーヤーには32年前のオープンで求められたようなアプローチショットの技術が必要になる。
実際にはコースを70ヤード拡張した3ホールでのアプローチショットに用いるクラブの種類は増えるはずだ。そして短いパー4でグリーンに乗せる際に選択するクラブは、メリオンでは共通事となっているが、フェアウェイのポイントを狙うクラブと同じとなるだろう。
「ボビー・ジョーンズが全米アマチュア選手権で優勝した1930年、もしくはベン・ホーガンが全米オープンを制した1950年を振り返ってみよう。おそらくショートホールでのセカンドショットにおける重要性は変わらないはず」と語るのは、USGAエグゼクティブディレクター兼コースセットアップ責任者であるマイク・デービスである。
長年に渡り、全米オープン開催にこぎつけられなかったメリオン。フィラデルフィアのメインラインにある同コースでの選手権開催は、やはりこの小ささが障壁となっていた。2003年の全米オープン開催地候補に名乗り出た際には、コース距離が短いという議論が起こり、最終的に同年はオリンピア・フィールズでの開催が決定。しかしバンカーを修復し、木々の伐採などを経て、メリオンは300ヤード以上の拡張に成功し、2005年の全米アマチュア選手権開催コースに選出されたのだった。
「(05年当時)『全米オープンのつもりでアマチュア選手権』を見てみようと提案しました」とデービス。「全米アマチュア選手権出場者は、全米オープンに出場する選手達よりもプレースピードが速いわけではないですが、見た目には全員が同じようなプレーをしていました。概ね、皆同じくらいの飛距離のショットでね」と続ける。
予選での平均ストロークは78.158。オークモントで開催された全米アマチュア選手権を除き、近年の選手権での数字よりも高い難易度を記録。数字が物語る通り、コースに問題が無いことは明らかだった。
メリオンで2013年の全米オープン開催が決定したのは2006年。その後2009年にはアメリカ、英国、アイルランドのトップアマチュア選手が対戦するウォーカーカップ開催地にもなった。再びコースを過小評価する声も聞かれたが、同大会でアメリカチームキャプテンを務め、1991年からメリオンのメンバーでもあったバディー・マルッチは「若く、能力のある選手達が、過去何年もの間プレーヤーを苦しめてきた試練と向き合う姿を見られて良かった」と語った。
最新技術が駆使されたのはパー4の2ホールで、ホールとホールの境界線が拡張の障害になっていた403ヤードの12番ホール、そして430ヤードの16番ホールである。特に後者は、以前ミドルアイアンでグリーンを超えることで知られていたが、今では3番ウッドでティショットを打ったとしても、ウェッジかショートアイアンでセカンドを打たなければならない。556ヤードの2番パー5、そして303ヤードの10番パー4では、1981年の大会時よりも簡単に2オン、後者は1オンが可能だろうが、これらのホールが大会を盛り上げる要因となるかもしれない。
「メリオンは公園用地にある他のコースと比べて、クオリティーを維持する工事を成功させたと言えます」と語るのは元USGAエグゼクティブディレクターのデイヴィッド・フェイ。フェイはメリオンが全米オープン開催地に決まった際、同職に就いていた。「それに彼らはしっかりとした仕事をしていますから」と話している。