【WORLD】同情なんかいらない/L.ウェストウッド ストーリー
Golf World(2012年7月16日号) texted by John Huggan
「リーは笑うことが大好きだ。だから、チームに楽しみと良い雰囲気をもたらしてくれる」とウェストウッドが8度目の選出をされた「ライダーカップ」欧州選抜チームをで率いるホセ・マリア・オラサバルは言う。「状況が良くなくても、彼が仲間を盛り上げてくれる。素晴らしいこと、正しいことを言うんだ。彼が口を開く時は、みんなが耳を傾ける」。
その資質は、リーが父ジョンから譲り受けたものだ。ジョンは優しい話し方をする元高校の数学教師だった。長年の教員生活でおよそ5500人の生徒に数学を教え(そのうちのひとりは、自分の一人息子)、多くの人々から愛着と感謝の念を受けている。かつては炭鉱で栄え、今は経済的に落ち込んでいる故郷、イギリスのワークソップでは今でも、かつての教え子たちが“サー”と呼んで敬意を表している。かつて冷ややかな目で見られたタバコをジョンが急いでサッと隠す仕草。生徒たちが大人となった昨今では意味のないことだが、そんなシーンはいまも珍しくはない。
「人生には、他人にあげられるものが2つある。それが時間と愛だ」と幼少期のポリオが原因で足を引きずることになったウェストウッド・シニアは言う。「私と妻(トリッシュ)は、リーがこの哲学を受け継いでくれる人間になったことを誇りに思っている」。
そして、もちろんウェストウッドも自分が育てられたそんな方針に感謝している。ここ10年、リーと妻ローラ、11歳のサムと8歳のポピーは、ワークソップにあるジム、スイミングプール、練習場を備えた50エーカーの敷地内に住んでいる。父の話をする時、ウェストウッドはインタビューでもおなじみの、本心を隠す唐突なユーモアを見せた。「教師の息子であることは、プラスもあればマイナスもある。自分と同じクラスでなかった生徒は、僕のことを教師のペットだと思っていただろう。でも、同じクラスにいた連中は、父が優しさを見せないように一生懸命で、自分もまた誰よりも一生懸命だったことを知っている。それにしても父は本当に正直な人間でね。夜にゴルフの大会があると、父は宿題を出さなかった。だから、みんな教室にやってきて、僕にその日に試合があるかどうか聞きにくるんだ。試合があったときは、みんな大喜びだったよ」。
一方で、ウェストウッドは両親から受け継いだものに正直であろうとしている。「自分たちは莫大な賞金をかけてプレーしている。自分がいかに恵まれているかということを、いつも心得ている」と続ける。「警察や教師、看護師といった仕事に比べると、僕らは大金をもらいすぎていると思う。だから、誰かが自分を哀れに思い、“かわいそうなリー・ウェストウッド。何度もメジャー優勝にあと一歩まで迫っているのに”と感じたら、その人は現実を直視するべきだ。自分は毎朝起きて、世界最高のコースでプレーして、それで金をもらっている。だから、自分に同情する人へのアドバイスを1つ。僕に同情なんかするな」。
これこそが、ウェストウッドだ。